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アフターコロナ時代に人事として必要なスキルと生き残り方②

1.今回のテーマ

今回は前回から引き続き、
「アフターコロナ時代に人事として必要なスキルと生き残り方②」ということで、前回の最後に述べた「人事として必要なスキル」の詳細について、自分なりの意見をまとめてみたいと思います。

(前回の投稿はこちら)

「アフターコロナ時代に人事として必要なスキルと生き残り方①」

2.人事に必要なスキル詳細

早速順番に書いていきます。


①経営センス(社会を捉える力・構造化する力)
経営という言葉を使うと適用範囲がとても広く感じますが、組織造りのコンセプトを見出すために社会の変化を捉え、市場環境や自社のビジネスモデル、社内の状況などを構造化して理解する力だと考えています。
社会の変化やビジネスモデルをちゃんと把握できると、どういう人材ポートフォリオを組んでいくべきなのか、どういう人材マネジメントサイクルを設計していくべきなのかが見えてきます。

私が在籍していたメーカーと外資コンサルにおいても、どういう組織作りを目指しているのかは当然異なっており、それはビジネスモデルに紐づいています。

②人事の知識
これはある意味当たり前かもしれません。ただ、どのような知識を学ぶべきなのか、そしてアンテナを貼り続けるべきかは目指す生き残り方によって変わってくるかと思うので、詳しくは次回で整理してみたいと思います。

ここまでは、これまでの人事でも言われ続けてきたことですが、①はここ数年で「あったらいいね」から「ないとダメね」に変わってきた気がします。(理由は後述)


さて、ここからが今回強調したい部分で、アフターコロナ時代にこれまでと違って求められていく部分だと思っています。

③ITリテラシー
具体的なところから入りますが、今回の新型コロナへの対応として急ぎリモートワークを導入しないといけなくなった方、リモートワークと聞いて「何を準備しないといけないのか。」「何を決めておかないといけないのか」について、どこまで具体的にイメージできたでしょうか。どんなツールを使うか(zoom?slack?meet?、、、)はもちろんですが、それはあくまでコミュニケーション手段の論点で、それ以外にも社員のデバイス環境やネットワーク環境、セキュリティの問題など考慮しなければならない点が複数あります。前職にいた際に働き方改革について寄稿する機会をいただきその際にも述べましたが、新しいツールや仕組みを導入する担当者になった場合、優れた企画だけではもちろんダメで、その他のシステム・仕組みとの共存や予算確保も頭に入れておかないと、結果として導入が遅くなったり、調和のない浮いたツール・仕組みになったりすることがあります。

少し具体的に書きましたが、要するにITやテクノロジーに対して基本的な理解や知識がないと企画を実行する部分でたくさん躓いてしまうということです。

ITやテクノロジーって好きな人はすごく好きで、仕事とか関係なく普通に知識持っていて当たり前に同じ言語で話していけますが、逆に疎い人は非常に疎く、疎いままだと議論もできずに、聞いているだけという感じになってしまいます。最近はHR Techも盛り上がっており、様々なツールが登場してきていますが、新しいツールは大体直感的に操作ができるものが多く、使い込んでいくことで付加価値が上がるサービスがほとんどです。なので、今まで自分ではそんなにITに触れていないなと感じている方は、自ら積極的に触れるよう行動を変えていかないと乗り遅れると思います。とりあえず1年以上ご自身のスマホのアプリを入れ替えたり、新しいアプリを試してないなという方は、見直してみましょう。


④アウトプット力(デザインする力)
こちらもすごく大事。これはコンサルファームにいた時に実感しましたが、どんなに優れた企画や施策でも相手に伝わらないと意味がないし、使ってもらえないです。人事が作る資料って文字や表などの情報量が多く、資料集みたいで読むのに頭の体力がいるという感想をよく聞きます。ですが、これは人事に限らずですし、そんなの必要ないなんていう人はいないと思います。

ただ、今回強調したいのはもう一歩先です。最近話題のEmployee Experience(EX)や企業文化醸成・組織改革というテーマにおいて、よく協業するのがデザイナーの方です。なんでデザイナーの方と一緒に仕事することが多いのかは別で整理するとして、大事なのは上記のような大きなテーマにトライしていく上では、資料が綺麗かといったミクロなアウトプット力だけではなく、プロジェクト全体をデザインしたり、デザイナーの方と同じ視点で企画を考えていくための土台が必要ということです。

さらにさらに、強調したいのは、優れたデザイナーの方と仕事するとその方の思考のロジカルさとアウトプットの感情表現に目ん玉落ちます。まじで。

もちろん、デザインという仕事は様々なナレッジや細かいスキルの積み重ね、センスなど様々な要素があり、誰でもすぐできますなんてものでは決してないですが、デザインするってどういうことなのか?どんな頭の使い方なのかは理解しておかないと一緒に企画する際に、よい議論ができなかったりします。


⑤データを扱う力
これも昨今当たり前のように言われていますが、やはり大切だと思います。ただ、自分なりに大事だと思っていることは、統計学を用いてアナリティクスを自分でもやれるようにならないといけませんということではなく、もっと基礎的なことに対する瞬発力が重要だと思っています。何か企画する際に感覚的なものに頼るのではなく、なるべく数字を起点にする。そのためには簡単でもいいので、今ある情報をさくっと加工し、活用する。この繰り返しです。

イメージは、フランス料理のコースをしっかり学ぶのではなく、冷蔵庫に入っているものでどれだけ品数作れるかって感じ。難しいアナリティクスなんか考えなくても今ある社員情報(所属・年齢・社歴など)と給与情報や評価・報酬テーブルなどを組み合わせるだけで、なんで今こういう状況になっているのかや今後5年くらいで何が問題になりそうかという大筋が見えてきます。そういう大筋が見えていないと根本的な課題解決につながらないこともあるので、まだやったことない方はぜひトライされてみると面白いと思います。


3.スキルの学び方(自己流+入り口として)

さて、つらつらと述べてきましたが、ここからは上記①~⑤をどうやって身に着けていくか自分の意見を書いてみます。(まずは学びの入り口)

①経営センス(社会を捉える力・構造化する力)
これはひたすらいろんな会社のビジネスモデルを観察するのがいいと思います。ただ、その時に前提として必要だなと思うのは、財務諸表が読める知識です。複雑な分析までは必要ないと思いますが、PLやBS、キャッシュフローの中身(言葉)の意味は知っておかないと実になる観察にならないです。

<自分がやるときのイメージ>
この会社のビジネスの勝ちパターンは短いサイクルでプロダクトを更新し、他社へスイッチングしにくくしていることかな。もしかしたら新しいプロダクト開発が肝かもしれないので、原価や固定資産に特徴があるかも。よし、会社のIRページで決算資料(または有価証券報告書)見てみよう。ほーふむふむ。確かに財務諸表みても新しいプロダクト開発に向けての投資が見えるが、、むむ、原価の労務費より販管費の人件費が急に増えているぞ。たしかに、他社と比べて社員数も結構多いな。ってことは営業の数を増やして新規獲得にも力を入れてるのかしら?(間接部門は普通規模に沿ってそんなに人数肥大化しないしな)決算説明の資料でもたしかに新規プロダクト開発と顧客層の拡大ってなってるな。ただ、この市場って今後5年くらいずっと拡大路線なのか?いやマーケットの大きさや構造を見ると一度シェア拡大するとそこから固定で面取り合戦になるからそのうちに拡大路線で採用してきた人員数ももう少しスリム化して、アカウント管理の質の向上が重要になるんじゃないか? みたいなふわふわした妄想をひろげていく。


ここで決算資料などに出てくる言葉への理解がないとなんとなーくそんな気がするから抜け出せず、他者と意見を交わしていくには根拠が弱いものになってしまいます。
上記私がやれる程度の妄想であれば、財務諸表だけ読めれば、会社の決算資料や市場の構造をググったりするだけで、十分事足りるのでそういうところから施策の仮説を立てていく練習ができるとよいのかなと思います。


②人事の知識
これは上記に述べた通り目指す生き残り方で違うと思うので、次回へ。


③ITリテラシー
これは簡単で、とにかくいろんなツールやアプリを使う。もう一つは自分のパソコンの設定やパワポ・エクセルなど普段使うツールの設定も変更してみる。ググるといろんなサイトが出てきますので、カスタムしてみると面白いです。それ自体がすぐにスキルアップになるわけではないですが、パソコンを色々いじることで知らない言葉や方法にぶつかり、わかることが増えていきます。また、事業会社に所属している人におすすめなのがパソコンに詳しい人と仲良くなることです。人事であれば情報システム系の部門で活躍している方としっかりつながっておくといろんなパソコンの豆知識を吸収できるだけでなく、会社のシステム関連の情報をインプットできるので、おすすめです。とにかくまずはなんでも試してみて、経験量を増やしていくことが大切です。

④アウトプット力(デザインする力)
ここは2つに分けて整理します。一つはミクロな観点でのアウトプット力。ここは、基本の反復をすることが大切です。自分なりの綺麗な資料の共通点は、「基本に忠実なこと」と「徹底されていること」です。
パワポでいえば、1スライド1メッセージ、文字・オブジェクトの配置、表記のゆれ、ガイドの作り方など難しくはない基本ルールがいくつかありますが、それらをただ徹底するだけでだいぶ見栄えが変わってきます。徹底することが大切。
徹底するためには資料を作ってからとにかく確認し、気づいた部分はちゃんと直すこと。これを繰り返して完成度の高い資料はできてきますが、この確認に時間を作れず、徹底できていない資料を本当によく見かけます。その微妙な届かなさが全体に積みあがると出来上がりの差がかなり異なります。ちなみに、基本ルールを自分に積み上げていくには、「綺麗だと感じた資料を見つけて、真似する」「資料作成がうまい人にとにかくレビューしてもらう」の2つが自分には効果が高かったです。

そして、二つ目の大きな視点でのデザインする力を蓄積するためには、まずはデザインという仕事の枠組みをインプット。デザイン思考という言葉がバズりましたが、それだけではなくデザインという仕事の中身について軽くでもいいのでインプット。次にいろんなデザイナーの方が発信している情報に触れてみるといいと思います。noteの中にもたくさん情報がありますし、作品のヒストリーが語られている記事もたくさんネットに落ちているので、興味持てそうな記事を読んでみるといいと思います。そうすることでデザイナーの方との協業を疑似体験できます。そして、デザインが持つ力に興味を持つ。そうすると自然と自分が作る資料も視点が変わったり、企画する内容にも影響を与えていきます。

(デザインをちゃんと勉強していない自分がこれ以上語るのはお門違いなので、まずはいろんな方の発信を読んでみてください)

⑤データを扱う力
これはいきなり人事分析や統計に関する本などを買う必要はないと思います。むしろ、エクセルを使っていろんなグラフの作り方を真似してみるとよいと思います。散布図、バブルチャート、ウォータフォールなど。人事がよく見るグラフもたくさんあるので、まずは今ある自社のデータを使ってそれらのグラフを自分で作ってみる。ここでも実際にやってみることで躓く部分が沢山出てくるので、調べながら一つひとつクリアし、出てきた結果が何を指しているのかを少し考えてみる。これを繰り返すだけでどんどん分析に抵抗がなくなり、見えなかった世界が見えてきます。簡単な情報でいいので、まずはグラフを作ってビジュアル化。


だいぶ長くなってしまったので、今回はここまでにしたいと思います。整理するとこんな感じ。

スライド2


次回最後のまとめとして、アフターコロナ時代の人事の生き残り方を整理したいと思います。


4.最後に(おまけ)

①経営センスが確実に必要になってきたと感じる一つが人事の意思決定者が、人事のスペシャリストではなく経営企画畑の方々になってきているからです。
戦略人事という言葉ももう普通になりましたが、これがいわれた背景ってシンプルに多くの人事担当者が戦略考えられてなかったからだと思うんですが、世の中で組織づくりや人事に上流の企画機能をちゃんと持たせることができなかった企業は、逆に経営企画や財務、事業開発畑の方が人事にくるという流れが多くなった気がします(仕事していた体感)。そこから最初は人事のことをインプットするために様子見されていた方も、全体感が見えてくると人事が本質からずれやすいことに気づかれるので、人事としてスペシャリストかどうか(知識の量)より、それなんのためにやるんですか?という理屈の観点で質問をいただくことが多かったです。

5.最後に(おまけ2)

アフターコロナのスキルということで、株式会社キープレイヤーズの高野さんがおもしろい記事を書かれていたので、ご紹介します。人事としてのスキル③と④の両要素が入っているかなと思いましたので、ぜひご参考に。

ウィズコロナ時代に「求められるスキル」は何か?

オンライン表現力。これからオンラインでのコミュニケーションもたくさん増えてくるので、メッセージ発信の表現力としては非常に重要だと思います。インタビュー撮影などするとその表現力の上手い下手がすごくよくわかります。上手な方は確実にトレーニングか場数を踏まれていて、その差は圧倒的でした。リーダークラスにはこういったトレーニングが必要な時代がくるかもしれません。


さて、あと1回。

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