Employee Experienceと聞いて飛びつくことなかれ
1.今回のテーマ
気づくとあっという間に6月ですね。
GWから1ヶ月も経過したと考えるとなかなか恐ろしい。
最近Amazon Primeの「Modern Love」を見てみましたが、面白かった。とてもとても。ああいう日常を切り取った系の映画やドラマが好きで、なんか見ちゃう。つけると見ちゃう。
さて、今日はこれからしばらくトレンドになるだろう「Employee Experience」(以下EX)をテーマに、自分の意見を整理したいと思います。
と書き出しつつこのテーマ、正直自分の中でもあまりまだ言語化できていません。正確には、自分なりの解釈は言葉にできるんですが、EXという名のもとにいろんな考え方や話が増えてきており、その辺との整理がしきれていないなという感じです。なので、本テーマはいろんな方の意見や考え方があり、自分と相違していると感じる方もいるかもしれません。
そんな感じで、EXについて様々な解釈が世に広がり始めている中、ちゃんと整理せずに取り掛かるのは結構危ういかなと思っているので、今回のテーマ「Employee Experienceと聞いて飛びつくことなかれ」と題して、とっかかり注意すべきことを自分なりにつらつら書きます。
2.EXって何?
そもそもEXって何よって感じですよね。早速自分も言葉に迷いますが、「社員が企業・組織の中で体験する経験そのもの」というのが一番しっくりきています。ただ、経験そのものって捉えどころがなく、採用や育成・人事制度のように枠組みや実務が固まっているものでもない(むしろ変化し続けるので、固まらない)ので、具体的に何をすることなのかイメージつきにくいかと思います。
しかも、なんで今話題なの?って感じですよね。組織・人事の領域に触れていない方からするとより何それ?って感じかと思います。
マーケティングの中でモノ(プロダクト)ではなくコト(体験)を売るんだと言われることがあると思いますが、組織・人事においてもそれと同じことが必要になっています。
なぜかというと2回目投稿に書いたように、これまで人事が付加価値として力をいれてきた制度などの枠組み(ある種人事が持つモノ)だけでは、今後人を引き付けることができなくなるからです。
なので、様々な人から一緒に働きたいと思ってもらえる企業になるには、その企業で得られる経験(コト)に目を向け、その価値を魅力的なものにしていかなければなりません。
その経験とは「業務を通じた成長」というこれまで経験という言葉で連想しやすかったものだけではなく、「入社した時に受けた歓迎の気持ち」、「メンバーや上司とコミュニケーションする日々の楽しさ」、「この会社で働けているという誇り」、「退職などいつか訪れるかもしれない新たなチャレンジに向けた労いと応援」、またまた「日々使っているパソコンやツールの快適さ」(その他にも需要が変わりましたが、オフィスの環境)など、個人が組織と関わる日常の体験全てにフォーカスしていく。それがEmployee Experienceというテーマだと解釈しています。
3.何に"飛びつくことなかれ"なのか
さて、EXとは何?についてここまで書いてきましたが、今回のテーマに書いている「飛びつくことなかれ」の部分について、以下書いていきます。
EXがトレンドになる中で、EXのポイントはこれ!という解説もたくさん出てきていますが、その上で注意しないといけないかなと思うのは「EXのポイントは『社員の声』を聞くことです」という言葉。
まず、それは正しいと思います。ただ、危ういなと思うのは、こういった類のインプットをもとに、とりあえず「社員の声を聞くためにサーベイやヒアリングしましょう」という流れ。特に、組織や人事という役割を初めて担ったり、新しくチャンレンジする時って、よし自分は今までよりもっと社員に寄り添った組織作りをしていくぞと意気込むあまり、EXのインプットで刺激をもらい社員へサーベイしてまずは望んでいることを確認しよう!と走り出したい衝動に駆られるのではないでしょうか。落ち着いていこう。まだあわてるような時間じゃない。
(尊敬するあの人も言っていた)
上記のような動き出しで何が問題なのかというと、シンプルに「風呂敷広げすぎて収集つかなくなる」か「意外と何も出てこなくてフックにできない」結果になることが多いからです。
もちろん中には貴重な意見を発信してくれる方もいると思いますが、社員の声をオープンに聞きすぎると方向性や思考がかえって広がっていくのと答えてもらえた意見を組んでいけないと、採用されなかった・聞いてもらえなかったという気持ちを相手に持たせてしまいます。
じゃあ、どうすればいいのよ。ということですが、EXに対する考え方の順番を変えましょう。
自分が考えているEXのデザインは「プロダクトアウト」のアプローチです。つまり、発信していく何かが最初にあり、それに対して社員の声をちゃんと聞き、反応を取り入れてマーケットフィットさせていく、あるいはそこから共創していく。EXで言うならば、プロダクトの源流は「どんな会社・組織にしていきたいのか」という経営層(というかリーダーたち)の想いです。その想いに共感する人が集まることで、ロイヤリティが上がり、組織での体験価値が向上するんだと思っています。オンラインサロンなんかが、高いEXを体現しているいい例だと思います。(企業と違って自分たちでお金を払って参加するので、EXの観点でスコープとなる範囲が異なるとは思いますが)
オンラインサロンはサロンオーナーの日々の活動や言動に賛同している・興味を持っている人が集まる場所ですが、そこは何か行動を指定されているわけではなく、コミュニティの中である意味なんでもトライしていい。サロンオーナーは頻繁にメンバーとセッションをして、いろんな意見交換をする。そして、所属している人は満足度が高い。こういった組織のあり方が今後もっと進むと考えると人事という仕事も見直しておかないと時代に置いてかれちゃいますね。(脱線)
なお、「マーケットイン」っぽい発想で、今いる社員にヒアリングをして、みんなに受け入れられるものを模索するアプローチはあまりうまくいかないです。
組織を市場に置き換えればわかりやすいですが、マーケットインする時だってビジネスチャンスの仮説があって、具体的なターゲットやその行動特性、市場構造などがあり、そこに向けて調査やヒアリングをしながらプロダクトをフィットさせていく。
組織を市場に例えたとき、自社の社員ってある種、業界というカテゴリーのように市場全体ではなく共通要素をもって区分された集合(つまり、みんな近しい存在だよね)のようにイメージされがちですが、実はそんなことはなく。いろんな属性・価値志向の人が混在しており、まさにぐちゃくちゃしている経済圏そのものだとイメージしたほうがいいと思います。市場全体にいきなりサーベイしてみんなが賛同してくれるサービスを考えるなんてことはしないですよね。
もう一つ脱線、よく社員全員で検討し、キーワードや軸を言語化していくというアプローチがありますが、これが成功するためには言語化されていないがみんなが共通で大事と思えている何かが脈々と存在している必要があります。また、そのアプローチが適している企業のフェーズというものも存在すると思うので、このアプローチをとるには慎重に検討が必要です。
ここ数年、従業員満足度やNPS指標が重要視されているため、社員に向き合うことが大事とされていますし、私も大事だと思っていますが、従業員満足度の高い企業は、根底に流れるカルチャーやDNAがあり、社員の期待にただ答えているわけではありません。
社員によって言語化された時に表現が変わることはあれど、その組織が持つ見えない空気と何かしらシンパシーを感じているので、満足度が高い。その空気の発生源は上記に述べたリーダーたちです。
満足度調査やサーベイの結果から見える課題をいくら潰していったところで、本質的な満足度は上がらず、次の不満が出てくるだけってことは多い。
プライベートでも同じようなことってありますよね。
相手の細かいことで腹を立てる、または立てられる でも 本質的にはその何かはイライラのトリガーにすぎず、ほんとはそれまで積み上がったその人の姿勢だったり、向き合い方に対する不満が原因。
なので、まずはリーダーたちの組織への姿勢や向き合い方にはっきり軸・メッセージを持たせることが重要だと思います。(それがプロダクトアウトのプロダクトになる)
4.EX設計時の人事の動き方
ここまで、つらつらと書いてきました。最後にEXをデザインする上での人事担当の動き方について、自分の意見を書いて終わります。
人事の仕事の回り方って、社員の状況を何かしらで見極めて、課題設定し、経営層からそれいいねと賛同を得て、実行するというパターンが多いですが、EXのデザインはそれとは異なります。
ここまで述べてきたようにまずはリーダーたちの内なる想いを言語化するところからスタートします。加えていうならば、リーダーによっては、「いや社員の気持ちを大切にしたい」と自分の言葉で語るのが苦手な人もいるかと思いますが、そういうところにしっかり切り込んで、その人の気持ちの源泉を言語化する。その後に、どんなカルチャーにしていくのかを明確にしていきながら、EXデザインのロードマップを描いていくという流れです。
なので、人事がよくやる役割からはイメージがつきにくく、実務の分解もしにくいため、余計にEXって何やったらいいのって感じになると思います。
コーチングやリーダー育成、ビジョン・ストーリー構築から始まり、ビジネスモデル・組織設計・オペレーションを意識しながら、デザイン、ブランディング、ITの視点でアウトプットする。それを一気通貫で設計しないとEX向上に繋がりにくい。
普通に人事やってたら外注しちゃったり、そもそも意識しないような分野が多いですよね。おーむずい。でもめちゃくちゃ面白いテーマであることは間違いない。
EX。今後絶対バズるキーワードですが、表面的なアウトプットにならないよう意識してチャレンジしたいですね。
今日はここまで。ありがとうございました。
5.最後に
久々に書きますが、人事・組織について、ぜひいろいろな方と意見交換してみたいと思いますので、気軽にご連絡ください。note書き始めて、つながりのなかった方と意見交換できる機会も持てて、とても貴重な経験でした。ありがとうございます。
あ、人事・組織の課題に対する相談や人事としてのキャリアの作り方なども相談のれますので気軽にご連絡ください。
では次回。
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