フリーランス編集者のアシスタント論
編集アシスタントを務めてくれているうちの一人、オバラ君がこんなnoteを書いてくれました。
僕もアンサーnoteを書いてみようと思います。
オバラ君はフルコミットで業務に携わってくれているアシスタントです。
アシスタント業務の全容については上記のnoteに詳しいですが、箇条書きで列挙すると、主に以下の項目になります。
①編集業務
a) 企画出し
b) 取材アポ取り
c) 取材同行
c) 文字起こし
d) 原稿の草稿作成
e) 校閲
②プロジェクトマネジメント
a) 全体タスクの管理(スプレッドシートとTrello)
a-1) デイリーのタスクリマインダー(毎朝9時にSlackでチームメンバーが今日〜1週間で抱えているタスクを送ってもらう)
b) 汎用マニュアルのバイブル化(社内WikiとしてKibelaにまとめる)
c) 進捗MTGの設定と進行、議事録作成
こうした仕組みや体制作りは都度、二人で議論しながら、構築していきました。念頭に置いていたのは、「気合い」や「感覚」に頼らないということです。
ある一つのタスク一つをとっても、そこには細分化できるプロセスがある。まずはその全容を把握し、言語化することで、ボトルネックとなり得るポイントも抽出できます。
これは一人で悶々と悩んでいても仕方のないことなので、当初は細かくオンラインでMTGを行い、オバラ君が抱えている課題をどうすれば解決できるか、二人で話し合っていきました。「朝早く起きれない」から「原稿を書くにあたり、教養が足りていない」まで課題の粒度は大中小ありますが、一つ一つ「仕組み」を構築しながら潰していきます。人は意識では変わらないので、必ず何かしら、明示的な策を講じる必要があるのです。
労働集約に陥りがちな編集業だからこそ、オペレーションを組むことの大切さを常に伝えようと思っています。このことについては、先日寄稿した「Web生まれ、Web育ち、Web編集者の前途」に詳述しました。
課題の解決は、習慣とオペレーションで
①「朝起きれない」
②「原稿を書くあたり、教養が足りていない」
たとえば、この二つの課題がありました。粒度の異なるイシューですが、「意識して、頑張ります!」ではなく、ディスカッションから必ずアクションを伴う解決策をセットで考える。
どうやら前日の夜に遅くまで作業していることが、①の原因であるようです。そうであれば、タスクを早め早めに終わらせるための、進捗マネージメントを見直すべきでしょう。現行の進捗マネージメントの何が問題なのか、原因から原因へと、ボトルネックを特定していきます。
「目覚ましを使っても起きれない」とのことだったので、対処療法でもいいから、自分なりの解決策を考えてもらいました。その結果、習慣化するまでは人にモーニングコールをお願いするという、策を講じました。
②は一見どうしようもないことに思えるかもしれません。「千里の道も一歩から」ではありませんが、まずは読書を習慣化することが肝要でしょう。そして、ここで僕が寄与できる役割も少なくないはずです。これまで2,000冊近く本は読んでいるはずですし、そのなかからオバラ君に段階に合わせた選書を行うことで、インプットの少なからぬショートカットができる。
くわえて、自分が書く側に身を置いていると、読書のインプットが圧倒的に変わります。文体のストラクチャーから、言い回しの妙、見出しの付け方まで、内容に加えて文章そのものに目と頭が行くようになるからです。この総体の蓄積が、必ず教養として血肉化されていきます。
「#小原課題図書」として、基本的に週3冊ずつ僕が選んだ本を読んでもらいます。その上で、本から得た学びと内容のサマリーを必ずnoteに記してもらうルーティーンを組んでいます。今が第13回なので、約40冊ほど読んでもらった計算になるでしょうか。
読書にくわえ、毎月3回ほど、イベントに参加することも奨励しています。
専門的な知識をそこで蓄えることはもちろん、新しい人に出会うネットワーキング、ひいてはそこから新しい仕事を創出すること。
「自ら仕事を生み出す力」ほど、オバラ君がこれから会社員になるにせよ、フリーランスでやっていくにせよ、大事な能力はありません。
下記は、VR/AV周りの基礎知識をつけるために行ってきてもらったイベントのレポートです。
アシスタントに求められる素養
僕が常々思うのは、Web編集者に最低限必要な素養は(a) 基礎学力、(b) 教養、(c) 文章力、(d) 気合い くらいのものだということです。
さらに、アシスタントに必要な要素も書き出してみると、(a) 謙虚さ・素直さ、(b) コミット。それくらいでしょうか。
(a) は何者でもない自分を受け止め、まずは利他的に言われたことを、言われたようにできること。礼節を持った、気持ちの良いコミュニケーションを内外で行えること。(b) 締め切りを守る、投げ出さない、逃げない。レスをすぐに返す。
スキルは後からどうにでも身につくので、まずは上記がしっかりと身についていることが重要です。その意味で、オバラ君はそれをしっかりと体現していると言えます。
仕事をお願いする側からして、一番怖いのは、何も言わずに飛んでしまうこと(連絡がいきなりつかなくなる)。本人には言っていないのですが、「アシスタントになりたいです!」との連絡をいただいた際、返信をする前に、Facebookの共通の友人何名かに事前にヒヤリングをしていました。
そこで、「飛ぶことはなさそうである」ということを握った上で、実際に対面で話し、アシスタントをお願いすることにしたのです。このようにソーシャルで容易に人となりやレピュテーションがバレてしまうからこそ、(a)も(b)も大事にしたいものです。
アシスタントからチームへ、チームから組織へ
僕は今年独立したばかりですが、オバラ君がアシスタントとして仕事を手伝ってくれるようになってから、半年近くになりました。
間違いなく、彼なくして、この日々は成り立ちません。心から感謝です。
最近では「アシスタント」というより、「チームの一員」といった認識が日に日に強まっています。今では、取材からライティングまで丸っとオバラ君に署名記事でお願いすることも増えています。
最初期の頃を振り返ると、当初より記事を書く練習はしてもらっていました。赤入れが多すぎ、結局は僕がゼロベースで書き直すことにはなるのですが、しっかりと原稿料は1本1本払う。そこは完全に投資です。
これを経て、その効果が早くも上がってきており、最近では間違いなく筆力が向上してきているのを感じます。順調に学習曲線がしなっている。
月に一度はチーム全員で集まり、食事を共にしながら、悩みや課題を話し合う。お互いのモチベーション管理を行いながら、それぞれのキャリアを話し合えるようにしています。
小原君が新しいアシスタントの原君にノウハウを教え、原君が新たなアシスタントにそれを教え、とネットワークで組織が強化されていく土壌を僕が用意する。
どこかの会社でインターンをするのも良し、最初からフリーランスで勝負するのも良し、誰かの下に付いてアシスタントとしての研鑽を積むのも良し。キャリアの土壌の築き方が多様化しているのを感じますね。
アシスタントからチームへ、チームから組織へ。そんなことを意識しながら、今日も仕事に取り組んでいます。
(PHOTO CREDIT: Benedic Belen via Flickr / Creative Commons)
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ケニアで無職、ギリギリの生活をしているので、頂いたサポートで本を買わせていただきます。もっとnote書きます。