重度障がい者の新人国会議員への深刻な差別煽動──政治家と大学教員の差別煽動

7月21日の参院選挙で重度の障害を抱えた舩後靖彦氏と木村英子氏の2名(れいわ)が当選した。マイノリティである障がい者の当選、しかも重度の障がいを抱える方の当選は画期的でした(ALS(筋萎縮性側索硬化症)で人工呼吸器をつける舩後氏と、幼少期の脊髄損傷による車いす生活の木村氏)。

しかし残念ながら2名の立候補以降、そして当選してからも、酷い差別がインターネット上で頻発・殺到しています。
例には枚挙にいとまがありませんが、一つだけ紹介しましょう。

「車に障害者をくくりつけて優先駐車場使いたい」?
冗談ではありません。
車に人を括りつける?殺す気ですか?
完全な差別です。しかし私が通報しても、ツイッター社はこれを未だに放置しています。

しかし障がい者差別をしているのは、庶民だけではないのです。政治家や大学教員といった公人が、今回庶民の障がい者に便乗して、差別を煽動している。しかも差別を政治利用しているのです。

事態はあまりにも深刻です。昨日相模原障がい者殺傷事件3年目だったのに、ほとんどまともな報道がなかったことは、衝撃的です。8月3日の緊急シンポの準備で追われ、あまり時間がとれませんが、記録の意味も込めて、いまおきている差別の酷さ・深刻さ・危険性について、書いておきます。

今回の国会議員当選を機に、このような障がい者差別が頻発しているのは、政治の責任なのです。

冒頭に引用した差別ツイートについて、私は次のようなツイートを投稿しました。

繰り返すと、相模原障がい者殺傷事件で日本政府は、
①障がい者差別に反対するコメントを出してない(3年も)
②それどころか相模原事件が障がい者差別事件だったという認定さえしていない
のです。だから障がい者差別が「犯罪に匹敵する重大事件だ」とか「放置すると人を殺す重大事だ」という認識が日本でいつまでも広まらないままなのです。
だから、上のような、調子に乗って、なにかあると便乗して差別する、卑怯な人物が後を絶たないのです。

相模原障がい者殺傷事件から、まだ3年しか経過していないのに、私はもう事件が「風化」しつつあるように思われ、大変危機感をいだいています。むしろ、今回の舩後・木村両名の議員当選を口実にした、もっと酷い障がい者差別が頻発・煽動される可能性が十分ある。ヘイトスピーチがヘイトクライムやジェノサイドにつながることを私は真剣に危惧しています。

だから、いまこそ事件から教訓を掴む必要があります。次のようにツイートしたのはそういう意味です。

もし国会の両院で、いま殺到している障がい者差別、特に舩後・木村両議員への攻撃に対して、ぜったいに許されない差別だと強く非難する決議をあげれば、差別への抑止力になるでしょう。
またそういう提案を政党が率先して行うべきです。個別の議員も行うべきです。

ところでじつは、障がい者差別をしているのは、庶民だけではないのです。

政治家や大学教員といった公人が、今回庶民の障がい者に便乗して、差別を煽動している。しかも差別を政治利用しているのです。

こちらのほうが深刻度はさらにうえです。なぜなら政治家や大学教員といった社会的に高い立場にいる人物の差別は、庶民の差別と比べると、その影響力が桁違いに違うからです。

じっさい、つい先日、6月末の大阪G20で安倍首相が大阪城のエレベーター設置が「不要」だったという「冗談」をいったことがニュースで流れるや否や、障がい者差別が頻発したという事実がありました。これについては下記記事をお読みください。

じつは今回の舩後・木村両名の当選に便乗した差別は、安倍首相の差別煽動の影響を受けていると思われるものも多いのです。

さて、今回の舩後・木村両名の当選に便乗した公人の差別の実例を示しましょう。たとえば次のようなツイートです。

言うまでもありませんが、そもそも国会がバリアフリー化していないことじたいが問題なのです。障がい者が議員にならない/なれないことが当然であるかのような発想じたいが差別です。
上の元ツイートは、一見「サポートは当然必要」といい差別していないようにみえるかもしれません。しかし実際にはそうではない。本来障がい者が平等に政治参加できるようにする責任は国会や日本社会にあるはず。なのにその責任を、山本太郎れいわ党首やれいわという政治団体そして結局障がい者本人に押し付けることで、障がい者の政治参加の平等を否定しているのです。

深刻なのはこんな差別ツイートを、吉田康一郎中野区議員がリツイートしてしまっている点です。それにより単なる匿名アカウントの差別ツイートが、吉田中野区議によってリツイートされたという正当性を一気に獲得し、3万7千以上のフォロワーに拡散されます。つまり庶民の差別が、公人のリツイートを経由することで、質的にも量的にも比較にならぬほどその差別性を激化させるのです。
これが差別煽動の恐ろしさです。(平たく言えば、「政治家がこう言ってるんだから、庶民が言ってはいけないはずないだろ」と言う形で差別を正当化するわけです。)

この吉田康一郎議員は元々かの在特会の差別活動に加担した経歴もある極右でした。しかし今回舩後・木村両名の当選に便乗した差別を行ったのは右翼だけではありません。左派、リベラルの公人もまた、深刻な差別を行ったのでした。

「人権派」も参院選で差別を政治利用した。

許しがたい差別事例が今回発覚しました。

元ツイートは重度障がい者の立候補について「皆を悩ませるために送り込んだの?」と書くなど、障がい者の平等な政治参加の権利を否定する、れっきとした障がい者差別です。

このツイートを上西充子法政大教授がリツイートしていました。証拠の写真はこちらです。

冗談ではありません。
上西充子氏という大学教員=公人が、障がい者の政治参加の平等な権利を否定する差別をリツイートしていいはずがありません。まして上西氏は「ごはん論法」などのネーミングで有名となり、ジャーナリズムやマスコミが左派・リベラル派のコメントをとりにいく有名人でもあります。そういう社会的影響力の大きい人物が差別を煽動することは、極めて大きな差別煽動効果をもたらします。また他方でときに差別に親和的な右翼ではなく、左派・リベラル派が差別ツイートをリツイートすることは、広く左派・リベラル派の信用を失墜させるというだけでなく、左派・リベラル派内部が差別を正当化したり、あるいは対立を恐れて差別をみても左派だからと見て見ぬフリしたり沈黙したりする効果を生むと言う点で、大いに問題だといえます。

さらに酷いツイートを上西氏はリツイートしていました。

これには驚愕しました。予算を理由に差別することは絶対にやってはいけません。これは杉田水脈氏が昨年『新潮45』に寄稿した差別記事で、税金を投入する上でセクシャルマイノリティには「生産性がない」などと発言したものと同類の、非常に悪質な差別です。私は次のように批判しました。

他にも上西氏はこの「ろば」なる人物の一連の差別ツイートをたくさんリツイートしていました。

上西氏の差別煽動は深刻です。私は即、次のように上西氏に提言しました。

上西充子法政大教授への要請を、ここに再掲しておきましょう。

①件のRT撤回
②RT元ツイートは障がい者が平等に立候補する権利を疑う差別扇動効果を有すと声明、謝罪
③障がい者が平等に政治参加する権利が無条件で保障されるべき旨声明
④③は野党共闘以前の基本的人権の問題である旨声明

社会的影響力を考えてのことです。

私は差別したら「人間終わり」などとは思いません(誰にでも再起のチャンスはある)。私は差別した公人がすべきは、形式的な謝罪よりも何よりも、自分がまいた種=差別煽動の影響を、自分で刈り取って潰す=差別煽動の影響を抑制するような社会的影響力を行使する、ことだと思うから、上のようなポジティブな提言を行っているのです。

しかし残念ながら上西充子氏はいまだに上の差別をリツイートし続けています。

私は全く理解ができません。冗談じゃない。上西充子氏が2万を超えるフォロワーに煽動し続けている差別と同じロジックを持つ差別は、たとえば次のような形で頻発しているのです。

これは深刻な差別扇動です。差別はヘイトスピーチはなにも右翼の独占物ではなく、左翼でもリベラルでも無縁ではないのです。差別は人権侵害である以上、右翼だろうが左翼だろうが政治思想や信条を問わず許されない事ですし、差別が起きたら被害者の人権を尊重しなければなりません。しかし日本の左翼・リベラルは、このことの重要性が全く軽視されているように思われます(自分はリベラルだと自認する人物ほどまさか自分が差別するとは思っていないだけに問題は深刻なのです)。

ところで、上西氏はなぜ、酷い差別をリツイートしたのでしょうか。私は上西氏が差別思想の持ち主だ、とまで主張する気はありません。私にはしかし、上西氏が参院選の野党共闘をおしすすめるうえで、山本太郎率いるれいわ新選組を敵視していたように思われます。そして山本太郎氏やれいわへの政治的ネガティブキャンペーンとして、「ろば」氏のツイートを利用したのではないだろうか、という疑いを、正直捨てることができません。私はこの政治の為に差別を利用した、と言う点こそ、極めて重大な、絶対にやってはいけないことだと思うのです。

私は2016年12月に出した『日本型ヘイトスピーチとは何か──社会を破壊するレイシズムの登場』(影書房)にも詳しく書いた通り、差別は「思想」が引き起こすよりも、はるかに利害関係によって引き起こされると考えます。

百田尚樹氏やケントギルバート氏が典型ですが、金儲けになるから差別を利用する輩がたくさんいるように、カネ・利権・得票・人気取りそしてライバルの排除など実利を目的に差別する人物(日本型の極右)の増大に私は警鐘をならしてきました。

しかし差別の利用は右だろうが左だろうがもちろん関係ありません。今回の上西氏の差別煽動は、左派・リベラル派の中で差別の政治利用が発生したことであり、しかも選挙期間中にそれが起きたという民主主義の破壊でもあります。立場を利用したかの広河隆一氏の確信犯的性暴力事件が左派・リベラル派の中でずっとタブー化されいまもタブー視され続けていることとある意味同根だと思われます。

上西充子氏は今からでも遅くない(遅いですが!)ので、即刻リツイートを撤回するとともに、上に提言した事項を履行していただきたいです。
そしてこの問題に関心をもつ者は、今回の舩後・木村両名の当選を機に、上西氏が軽々と障がい者差別を拡散した問題を、けっして流すことなく、戦後日本の左派・リベラル派が抱えて来た問題を真剣に考慮する機会にすべきだと思います。

書くべきことはまだまだあるのですが、長くなったので今度にします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?