ウィッチャー・魔術師・人間の力関係
はじめに
PS4やSwitchなど、様々なプラットフォームで遊ぶことができるゲーム、『ウィッチャー3』。
洋ゲーならではのプレイのしづらさがありながらも、日本国内からの人気も非常に高い。
広大なマップや、重厚なストーリーもその要因だが、今回注目したいのはウィッチャーらの絶妙な「強さ」についてである。
ウィッチャーを取り巻く世界
各地の戦災孤児などを引き取ってきて、彼らにいくつもの過酷な試練を受けさせる。
その中で生き残れるのは全体の3割程度。
こうしてウィッチャーは生まれる。
「霊薬」と呼ばれる、強力な薬でもあり毒でもあるウィッチャー特有の道具(身体能力などをブーストする)。
さらに「印」というウィッチャーが使う魔法。
そして何よりも怪物を倒すための「銀の剣」である。
これらの道具が、ウィッチャーがウィッチャーたる所以(ゆえん)だ。
そしてウィッチャーが基本的に人間よりも戦闘能力が高い理由となる。
もっと言えば、ウィッチャーは何百年も生きるので、その戦闘技術の経験は人間の比ではない。
いずれにしても、ウィッチャーと人間が1対1で戦えば人間が不利なのだ。
仮面ライダーよりも弱い存在
しかし、ゲームをプレイしていると、それでもウィッチャーは人間の敵に囲まれて命の狙われることが多い。
「怪物狩り」が本職のウィッチャーだが、対怪物と同じくらい対人間の戦いが起きる・・・。
でも、それはどうしてだろうか?
人々はウィッチャーを恐れ、一定の敬意を払いながらも、割合に平気で複数人で囲んでくる。
その人間たちがめちゃくちゃに強いわけではない。
もちろん戦士や賊として生きているから、ある程度は自分の腕に覚えがある人間たちではあるだろう。
それにしても、
「もし約束を破ればそのときはお前を殺すだけだ」
などと言ってくる。
そう、ウィッチャーとは言えども神仏のように手の届かない存在ではないのだ。
せいぜいが「改造人間」という認識。
でも人間は仮面ライダーには勝てないだろうから、ウィッチャーは仮面ライダーよりも弱い存在。
だから3人くらい集まっていると、人間たちは勝てる見込みを感じて、高確率でウィッチャーを倒すために囲んでくるのだ。
魔術師という存在も
このパワーバランスは、ウィッチャー3というゲームの世界観に大きな影響を及ぼしていると思っている。
さらに面白いことに、ウィッチャー3の世界には「魔術師」という存在がいて(ほとんどが女性だが)、彼女らは魔法のプロだ。
ウィッチャーにも「印」と呼ばれる魔法があるが、これはせいぜい対怪物か対人間にしか通用しない。
魔法のプロにウィッチャーの魔法はほとんど効果がない。
魔法の強さだけで言えば、
魔術師>ウィッチャー>>(越えられない壁)>>人間
だが、単に1対1ということであれば、
ウィッチャー>魔術師>>>人間
だろうか。
基本的に、いわゆる「剣と魔法の世界」であるウィッチャー3の世界が面白いのはこういった絶妙なパワーバランス故なのである。
もしもウィッチャーが圧倒的な存在だったら、このゲーム内で起こっているあらゆる事件が、ついに起きていなかっただろうと思う。
人間が、ある一定の水準で
「ウィッチャーに勝てる」
と考えているからこそ面白い世界になるのだ。
また、人間が魔術師には勝てないと思うからこそ、権力者が政治や戦争に利用しようとしたり、ウィッチハント(魔女狩り)しようとするわけだ。
もしも人間が、
「ウィッチャーには絶対に勝てない」
とか、
「魔術師は取るに足らない変態たちだ」
と考えていたら、ウィッチャー3の世界はあり得なかっただろう。
最後に
しかしこれらのことは、誰かのセリフで明らかにされることはない(少なくとも筆者がプレイ済みの段階においては)。
あくまでもそのような「空気感」なのである。
そのことも、この設定の「絶妙さ」に拍車をかけているのではないだろうか?
どこかのテキストにも、このパワーバランスについては明記されていない。
重ねて言うが、あくまでも空気感であり、彼ら・彼女らの「共同幻想」なのである――
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