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- IPOでの内部統制の大切さ - Part.02_メリット・リスクの観点から -

前回は法令・制度の面から、IPOでの内部統制の大切さを説明しました。今回は企業のメリット・リスクの面から、内部統制の大切さを説明します。
(約4分ほどでお読みいただけます。)
*本編では規程、マニュアル、ガイドライン、ポリシーなどを総じて、ルールと表しています。

内部統制のルール作り

ルールを作る際に必要な要素は、

  1. 事業に関連する法令

  2. 会社経営に関連する法令

  3. 事業内容、業務の流れの把握、熟知

  4. 事業上必要とされる許可、認証(ISOなど)の有無

  5. 事業を支えるメンバー(社員のほか、業務委託先等外部の関係者など)の把握

などなど・・・
 これらの要素を把握、熟知したうえで、ルール作りに取り掛かります。
・・・いきなり? すでにルールはあるよ、 という皆さん。
「いきなり?」と困惑された皆さんは、上の要素の把握から始めてください。

「すでにあるよ」という皆さんは、上の要素とお手元の規程、マニュアル等ルールを関連付けて、次のことを確認/整理してみてください。

  •  必要なルールが揃っているか?

  • 不足はないか?重複していないか?

  • ルールに定めている帳票類は存在しているか?保管しているか?

  • ルールの所管部門を定めているか?帳票類の所管部門を定めているか?

  • 帳票類の保管期限を定めているか?保管状況は適切か?

  • ルールを制定するうえでの " 決裁権限 " を定めているか?

これらを確認してください。抜け・漏れはありませんか?

  1. ルールに定めている帳票類は存在しているか?保管しているか?

  2. ルールの所管部門を定めているか?帳票類の所管部門を定めているか?

  3. 帳票類の保管期限を定めているか?保管状況は適切か?

  4. ルールを制定するうえでの " 決裁権限 " を定めているか?

ルールがあると・・・/ルールのおかげで・・・

「ルールが多すぎると、業務が滞る」のお悩みがあるかもしれません。内部統制を構築するうえでルールが多くなりますが、逆に、必要なルールを定めておかないと、次のような問題が発生します。

  • 責任の所在が不明/不存在

  • 責任者を都度確認しなければならない

  • 手順を知るメンバーだけで仕事が進んでしまう(人に仕事が貼り付く)

  • 手順を都度確認しなければ、業務が進まない

  • 上場企業として必要な「法令遵守」の理解が、メンバーそれぞれのバラバラな認識で業務遂行されてしまう

このような問題を防ぐためにも、ルール作りの基本的な姿勢は次のとおりです。

  1. ルールは業務の流れと責任の所在(承認者)の明確化をするもの

  2. 法令・規制等に根拠がある業務、責任の所在は、ルールに記載する(*法令の改正に伴って改定する必要があるため)

  3. 法令・規制等に根拠がある業務、責任の所在以外に、不必要な業務、責任の所在を入れない

  4. 紙ではなくデータ保管する。関連しているルールはリンク貼りしていつでも見られるようにする

これらによって、適切・適正な量、抜け・漏れのないルールが策定できます。

また、ルールのおかげで業務の合理化、適正化等がスムーズに行うことができますし、業務の引き継ぎ/分業化の際にも効率的です。 (*昨今は人材の流動化が著しいこともありますが、この内部統制による効果に気付く方は少ないのではないでしょうか。)
実際に、企業で業務改善を検討する際、まずは「業務フロー」を作成して業務内容・流れを検討しますし、業務に存在するリスクを洗い出して検討する場合は、内部統制でも同様の作業を行います。
要は、上場企業に限らず、普段から業務の合理化や効率化などの改善を実施している企業は、部分的・概略的に「内部統制」を行なっているのです。

ルールが無いと・・・/ルールのせいで・・・

  IPO準備時に「内部統制は最低限で・・・」ということを耳にしたお話しをしたかと思います。繰り返しますが「最低限」はありません。内部統制に「ここまでやればOK」という基準はありません。強いて挙げるとすれば、
内部統制は、経営者が、

  • 自らの企業の事業・経営等の状況、周辺のリスクなどを把握し、

  • 経営方針等経営者の考えを明確にして、

  • 自らの企業がどの程度のレベルの統制を必要とするか?

これらを総合判断して、内部統制を計画するものとなります。内部統制の構築も、この計画に基づいてルール作り等構築していくことになります。そのため、経営者が「ちゃんとした企業作り」をお考えであれば、精度の高い企業の成長につながることになります。

 逆に、ルールが無ければ、業務が捗り、業務の負担が減る・・・かもしれません。しかし、ひとたび社内で問題が発生し、それが万一、世間に知れてしまったとき、どうしますか?
上場企業の場合、いわゆる「発生事実」は一定の基準に従って開示する義務があります。(例:訴訟、事故、社内不正に起因する事件・事案など)
そのとき「社内にルールがありませんでした」と言ったらどうなるでしょう。企業価値は下がり、顧客・取引先からの信用を失うなど、企業存続が危ぶまれます。

ルールが " あった " おかげで、企業成長の足掛かり・業績向上の起爆剤になります。
ルールが " 無かった " せいで、企業存続の心配(リスク)が出てきます。

「備えあれば、憂い無し」ですが、
内部統制は「備えることで、リスク減少・メリット増加」を覚えていただけると幸いです。

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