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パリ留学終わるので「まとめ」に入ろうとしている

昨日正午、意気揚々と家を出た。

目指すはパリ市内から北に40km離れたジャン=ジャック・ルソー公園。行きたい理由はなんとなく。ヨーロッパに来てから、すっかり「森」というものが面白くてたまらねぇ!となっている。こっちの公園は「公園」とは名ばかりでほぼ「森」だったりする。

森は「遭難」や「迷うこと」、「さまよい歩くこと」を象徴するイメージでもある。都心の喧騒や目的思考から離れ、当てもなく感覚に任せてふらふらと歩くのにうってつけの場所だ。ブリュッセルのカンブルの森を歩いた経験は、その旅で最も忘れられないものとなった。一方、パリのとある森の中で、「遭難すること」とは真逆の意味を持つ「線路」を発見する。「敷かれたレールの上を歩く」という言葉があるように、線路は人生の安定を象徴するイメージとして使われたりする。

そんな、真逆のイメージを持つ森の線路の上で、新作のパフォーマンス作品は撮影された。レベッカ・ソルニットの「迷うことについて」、ヘンリー・デイヴィッド・ソローの「ウォールデン 森の生活」などを下敷きに、シングルチャンネルビデオとして仕上げている。

ルソーも自然なしには語れない。「社会契約論」を執筆し、後のフランス革命にも大きな影響を与えたルソーの名が付く公園。とんでもない場所に決まっている。その直感だけを頼りに、ロードバイクで片道3時間かかる道を漕いで進む。

久しぶりの赤信号、どこまで来たのか現在地をスマホで確認する。ギャラリーやアートスペースがあるパンタンの方にいた。面白いContemporary Artは郊外にある。これ世界共通のあるある。軽くチェックしていくかと寄り道すると、気づけば、4時間も展示を観ていた。

Alex Katzの展示
Fondation FIMINCO
名前忘れた

しかも、ルソー公園は18時に閉まることをこのタイミングで知る。「こっちの公園は夜閉門する」という概念(治安が悪いため)を失念していた。というわけでロードバイク旅はパリの少し郊外に出ただけで終わったわけだが、天気がこれだけ良いとどう転んでも全てが最高で、ふらっと寄った展示もドクメンタやデュシャン賞ノミネートレベルの作家を運良く観れたし、青空の下ノートとペンを広げると、アイデアがどばどば出できた。

脳で考えるより先にペンを走らせると、急に感謝の気持ち(え?大丈夫?)が湧いてくる。おそらくこんな最高のロケーションに身を置いていたからだろう。パリでする必要のない仕事(ブルシットジョブなど)をすることなく、24時間全部自分の好きなことに使えているのは、間違いなく周りの人たちのサポートのおかげだ。フランスに来る前から本当に色んな人にお世話になった。

そう考えると、残りの時間すべきことは「制作」の前に「還元」ではないだろうか。プラス1を産み出すことに焦っていたが、いま持ってるものを正しく循環させていく方が大切なような気がしてきた。作品を作ることも広義で還元ではあるが、前提の周りから受けた恩を忘れてはダメだと思った。ここにいられるのは「当たり前」ではない。

これまで「アーティストとして」自分を世界にプレゼンしたことがなかった。コロナで2年半海外行かなくなって、その間に日本でド素人ながら美術をはじめて大学院入り直して、ドクメンタとヴェネツィアビエンナーレきっかけで2年半ぶりに、ホットサンドメーカーこさえて外に出て。そこで色んな出会いと衝撃があり。やっぱり俺も、来年は海外いきたい!外を見たい!どこまで通用するか知りたい!となり。結果、1年後本当に海外(なぜかフランス)に来れて、そして1年いたわけだけど。

留学しようと思ったのはまずその2022年の旅が大きかったし、色んな人たちの大きな支えによって実現することができた。では何を還元・循環させていこう。

とりあえず留学先のボザールでの1年のトレーニングとか生活のリアルはブログにまとめて共有するとして、他にも色々感じた。これが西洋で戦うってことなのかぁという、遠い絶望のようなもの。未だ引きずる植民地・帝国・西洋中心主義的なもの。じゃあその上で、自分はどこで何をどうやるかっていう。将来、自分がどこに流されていくかっていう未来へのピンみたいなのも刺せた、のか分からんけど、確実に前よりはアーティストとしての国境が開かれた感じ。いやぁ、「まとめ」に入るって切ない。全然まとめたくない。それが一番ヤバいことでもあるから。暴力的。でも「まとめる」からその塊を自分の中から捨てることができて、空っぽになるから次に進める。

一方で、還元しよう、与えようってのも相当キモい態度だと思うので、雑に気軽になんか振ってくれれば「応答」していきたい。飲む、喋る、質問に答える、話を聞く、あなたに会いにいく…なんだっていいと思う。日本帰ったら「那須高原来て!」とか「一緒にトークイベントしよう」という謎オファーがとても嬉しく、大体のこれら全てに「応答」していく。

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どうしたらもっと本質的にこの世界を味わえるのか。 圧力やダルいことに従わずも反発もせずすり抜けられる…

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