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【創作大賞2024】「友人の未寄稿の作品群」17【ホラー小説部門】

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17: 未_レトロ喫茶を訪れる のコピー のコピー


 近鉄**駅から徒歩10分、『喫茶**』の看板を見つけた。すりガラスの嵌められた古びた木の扉を開けて、1組の若いカップルが入っていく。私も、その後に続いて入店することにした。

 一歩足を踏み入れると、ノスタルジックな雰囲気が広がる。店内には電子ペット人形やブロマイド写真がディスプレイされ、色褪せたポスターやおもちゃ、グッズが所狭しと並んでいる。

「ここは……平成初期そのものじゃないか」

 棚にはたまごっちやデジモンなどの電子ペット、その隣にはアイドルのCDやカセットテープ。漫画雑誌やゲームソフト、当時の流行ファッション雑誌のページが並んでいる。テーブルの上には、昔ながらのガラス瓶に入った駄菓子が置かれていた。

「この駄菓子、懐かしいな。小学生の頃、よく買ったっけ」

 カウンターの後ろには人気バンドのポスターが貼られ、カセットプレイヤーから懐かしいメロディが静かに流れている。

 木製のテーブルと椅子、レトロな照明器具が温かみのある雰囲気を演出している。壁にはテレビ番組のポスターやアニメのキャラクターグッズが飾られていた。

「まるでタイムマシンに乗ったみたいだ」

 カウンター席に着き、メニューを眺める。看板商品は、カラメルソースのかかったカスタードプリンと、さくらんぼが添えられたクリームメロンソーダ。そして、違和感に気付く。

「カフェオレはあるのに、コーヒーはないんだ……ちょっと変わってるな」

 カスタードプリンとクリームメロンソーダを一緒に注文した。

「このプリン、懐かしいけど、新しい。甘さとほろ苦さのバランスが絶妙だ。それに、このメロンソーダと一緒に食べると、クリームのまろやかさが加わって、たまらないな」

 一口ずつ交互に味わいながら、ノスタルジックな気分に浸っていた。プリンのしっとりとした食感と、メロンソーダの爽やかな味わいが絶妙にマッチしていた。食べ終わって満足感に浸りながら、ふと周囲に目を向けた。

 店内には子どもしかいないことに気づいた。先に入ったはずのカップルの姿も見当たらない。周りを見渡すと、小さな子どもたちが楽しそうに駄菓子を選んだり、おもちゃで遊んだりしている。

「おかしいな……あのカップルはどこに行ったんだろう?」

 不思議に思いながらも、カウンター越しに店主に話しかける。

「すみません、先ほど入ってきたカップルの姿が見当たらないのですが、どこに行ったかご存知ですか?」

 店主は穏やかな笑みを浮かべながら答えた。

「あのカップルですか?彼らもここで楽しんでいるはずですよ」

「でも、店内を見渡してもいないようですが……」

 店主は優しい笑みを浮かべ、「ここは特別な場所なんです」と静かに言った。

「ここに来ると、訪れた人はそれぞれの思い出の中に引き込まれることがあるんです。彼らもきっと、自分たちの思い出の世界に没入しているのでしょう」

「思い出の世界に……?」

 私は戸惑いながらも、なんとなくその言葉の意味を感じ取った。まるでこの店が、人々の心の奥底にある大切な記憶を呼び起こす場所であるかのようだ。

「そうです。ここでは、皆さんが大切にしている過去の一瞬に戻ることができるんです」

 店主は優しく語り続けた。

「子供の頃の無邪気な気持ち、大好きだったあの時代の音楽や風景、そういったものがここでは生き生きと蘇るのです」

「なるほど、そういうことだったんですね……」

 納得をする。

「もしよければ、あなたももう少しこの場所を楽しんでいってください」

店主の言葉に促され、私は再びプリンを口にする。

 『喫茶**』は、訪れる人々に平成初期の懐かしさを感じさせ、心温まるひとときを提供する。店を出ると、再び現実の喧騒に戻る。しかし、ここでの体験は心の奥深くに刻まれることだろう。



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