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紅茶詩篇

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2024年1月の記事一覧

紅茶詩篇『死神が通る』

紅茶詩篇『死神が通る』

 私を怖がる皆々
 私を追い払い勝とうとする
 恐ろしいものだと泣く
 或いは汚いものだと嘘を言う
 なのにも拘わらず万策尽きると酷いことを言う
 最も煌びやかで何よりも荊(あざ)やかな私に向かって
 迎えに来い
 どうか苦しみ無いように
 涙も息もなく言うのだ
 あなたはうつくしい
 私に最早言葉はなく
 私を貶す者の終わりに
 彼らの終わりに通りがかったら
 私は誰かの死を迎え送った後に
 そ

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紅茶詩篇『もしも奇跡が消えた夜に』

紅茶詩篇『もしも奇跡が消えた夜に』

 もしも世界から奇跡が消えたら、最初に何がしたいだろうか。
 肌寒い夜の下で、私は妹の顔を見ていた。
 私がそう尋ねると、妹は私の肩に肩を寄せた。
 妹が、奇跡の類いを信じてはいないことを、私はよく知っていた。
 私は漠然と杳(とお)くにいる尊い何かを信じている。この子はそんな私に寛容なだけで、何かを信じてはいなかった。
 私は奇跡なんて、信じていない。
 でも、奇跡は、世界からなくならない、きっ

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紅茶詩篇『酔うべきはうつくしい女』

紅茶詩篇『酔うべきはうつくしい女』

 自分の恋から、恋が分からない女。
 恋ではなくて、異性が好きな女。
 まともに狂ったことがない女。
 何も盗られたことがない女。
 本当に卑しい男から、声を掛けられたことがない女。
 他の誰かを助けるために、手を差し伸べたことがない女。
 いやらしい男から声を掛けられることに悦び、自分は常に手を取ってもらうべき女だと信じてる。
 月の所為にして。月の所為にして。
 一番にはならない女。
 だけれ

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紅茶詩篇『奪われた花だった』

紅茶詩篇『奪われた花だった』

 片思いが痛くて、異常を感じていた。苦しみではなく、痛みだったから。その相手が、私だけが一方的に惨めになる場面でだけ、輝いていたから。
 片思い、一人恋。苦しんだ一人恋だけで学んだ愛だけで、恋の痛みを癒やしていた。痛みに生まれた想いに慰められることを、おかしいと思ったんだ。正しさが私を守っていないことに気づいたんだ。呪いで出来た恋から、誰も私を守らない恐怖を。
 仕組まれていた恋だった。相手は悪魔

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