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(2023/03/23/木)壊された土器

本日の写真
 須恵器 はそう
 出土地:小木原古墳(えびの市)
 年代:古墳時代後期(6世紀前~中葉)
 所蔵:本館 

※こちらの写真は私が現地で撮った物で、施設に許可を得て掲載しております。
※こちらの写真は私が現地で撮った物で、施設に許可を得て掲載しております。

須恵器 はそう
出土地:小木原古墳(えびの市)
年代:古墳時代後期(6世紀前~中葉)
所蔵:本館

宮崎県立西都原考古学博物館B1F展示

こちらの土器は、宮崎県立西都原考古学博物館内の『須恵器』が多く展示されているスペースの一画に『小木原古墳出土』の土器がまとめて展示されています。

※こちらの写真は私が現地で撮った物で、施設に許可を得て掲載しております。

巨大な高坏型器台のすぐ横の一段高い位置に展示された、この壊れた壺に惹かれるモノが有り、いつも見てしまいます。

一見すると、ただの割れた壺の様に見えますが、近くによって見てみると、壺の口や首に綺麗なくびれと細かな櫛描紋が施されていて、非常に美しい壺です。

※こちらの写真は私が現地で撮った物で、施設に許可を得て掲載しております。

この綺麗で美しい土器の他に、多くの壊れた須恵器が展示しているのですが、その展示の手前にこの土器が壊れている理由についての解説パネルが展示されています。

※こちらの写真は私が現地で撮った物で、施設に許可を得て掲載しております。

「あの世」と「この世」の土器
1.小木原古墳出土の須恵器
 小木原古墳は、えびの市小木原に所在する円墳で、その埋葬施設は地下式横穴墓と考えられている。
 須恵器は、地下式横穴墓の立坑(入口部)を完全に埋め戻した土の上から細かい破片で出土した。坏蓋、器台などがある。
これらの須恵器(容器)は意図的に壊された物で、葬儀の終わりに須恵器を破壊し、ばらまく行為(破砕散布)が執り行われた。
2.土器を破砕散布する意味
 市ノ瀬地下式横穴墓のように、墓室(玄室)にある土器は、死者への食器として捧げられたものとすると、土器を破砕散布する行為は何をいみするのであろうか。
 一つには、墓前に捧げた土器や参列者が飲食に用いた土器を死者との告別する意味を込めて破砕したという考え方がある。人為的な破壊によって、容器の機能を失わせる、すなわち「あの世」と「この世」を分け隔てる行為とみられている。
 墓室に土器を納める行為は、横穴式系埋葬施設の導入に伴って広がった儀礼(食物供献儀礼)であり、土器を破砕して散布・集積する行為は、弥生時代以来の在来的な儀礼と考えられている。

宮崎県立西都原考古学博物館B1F展示

なるほど。
これらの壊れた須恵器は、葬送の儀式で使われ、その後破壊された物の様です。

しかし、墓の外の容器は意図的に壊されるのに対し、墓室内の容器は壊さないと言うのは非常に面白いと思います。

いずれにせよ、ここに展示されている壊れた須恵器の数々は、約1400年前葬儀で行われた何らかの儀式の痕跡で、それを1400年後の現在に見れると言う事は面白いと思います。

感想

私はこの博物館が好きで良く観覧するのですが、こちらの博物館は、展示遺物に関してパネルで詳しく説明されているのでかなり勉強になります。

私は古代の祭りや呪い(まじない)、儀礼や習俗に関する遺物のデザインが好きなので、こちらの様な意図的に壊された遺物の様な展示物が大好きです。

今でも葬式の前後に皆で食事をしたり、故人の棺桶の前に高坏に載せた落雁(米粉菓子)や、枕飯(箸を突き刺した山盛りのご飯)等を備える様な行為は、この約1400年前の古墳の前で行われていた儀式・儀礼の残り香の様な気がします。
(考古学について学位を持っていませんので正確な事は判りませんが、私はこの展示遺物を見た時にその様な考えを持ちました。)

この様な過去に使われた遺物のデザインや考え方を知る事が出来るので、私はそれらの情報やデザインを参考にしながら作品を作りたいという思いから、博物館に行き観覧しております。

よく見れば見る程、知れば知る程面白い情報と、作品を作る際のアイデアや技術を貰う事ができるので、私は博物館という場所が好きです。

2023/03/23/1600~1700

最後まで読んでいただきありがとうございます。 作品製作をしているので、サポートいただけたら創作活動に関する費用にしたいと思います。