CAMPFIREを退職し、株式会社ライトライトを設立します。
こんにちは。この度自身で立ち上げて運営してきた「地域×クラウドファンディング FAAVO(ファーボ)」を事業譲渡後、転籍して執行役員を務めさせていただいてきた株式会社CAMPFIREを退職して、株式会社ライトライトという会社を宮崎県で設立することに致しました。節目だなーと思うと、つい長文になってしまいました。。自分の回顧録的なところもありますが、よろしければお目通しください。
宮崎にUターンして三年
2019年11月で、宮崎にUターンして3年が経ちました。以前noteでも書いたのですが、なにやら最初は焦っていた気がします。今もふと東京で勝負したほうが良いのでは?と思うこともありますが、それより「地方に住んでいるからこそできること」に目を向けることが多くなりました。
三年働いてみて、業務上は東京でできることが宮崎でできないということはほとんどないなと思います。ただ、人口集積しているほうが展開しやすいサービスはあるので、宮崎から何かを始めるときに東京のマネをしていては勝てないと思うことも事実です。
一方、地方だからこそ見えてくる課題や感じる切迫感もあります。そうしてそれは一見するとビジネスになりづらい根深い領域。投資回収もロングスパンになりそうなもの。でも社会課題や地域課題はとかくそういうもの、そういうテーマに自分のリソースを振っていきたいという気持ちが日に日に大きくなっていきました。
「東京の一極集中」から脱せない要因は?
みなさんの周りにも「いつかは地元に帰りたいけど、今は帰れない」と口にする地方出身者はいませんか?もちろん、仕事がない、給与が安い、などといった満足いく条件がそろっていないという点はあるかと思います。しかし、それがそろえば人はUターンするのでしょうか?私はそれは必要条件であり、十分条件でないと思っています。
なぜか?
コミュニティが分断されるからです。
18歳で地元のコミュニティから卒業し、それが大きくならない(盆と正月に地元に帰っても新しい出会いはない)。いつの間にかコミュニティサイズが逆転することに多くの人が無自覚であり、それがUターンを阻害する一因ではないか。コミュニティが選択できるような状態になれば、地方移住も現実的になるのではないか、という仮説。
私は、「コミュニティが選択できる」ことこそ地方移住の十分条件になると考えています。いつのまにか、地元で培われたコミュニティよりも大きなコミュニティが今の生活にできていて、そこから物理的に離れてしまうことに多くの人が躊躇している結果、東京の一極集中は加速しているのではないでしょうか。じゃあ離れても「出身地と出身者をつなげる」ことで、地元のコミュニティを作り続けられる世の中になったらいい。
FAAVOを企画する中で、この地元との断絶の延長線上にあるのが「東京の一極集中」という社会課題ではないかと思うようになりました。これからFAAVOの次のステップとして、この社会課題に新しい確度でアプローチできるようなサービスをつくりたいと考えています。
2020年1月に起業し事業承継問題に取り組みます
私は、「出身地と出身者をつなげる」ことにより、地方出身者が地元でのキャリアをあきらめないでよくなる社会になればいいなと思い7年間FAAVOを運営してきました。コミュニティが選択できる社会。地方の中小都市へユニークな人材がバラけ、新しい風を吹き込み、まちのプロデューサーが地方に彩りを与えていくと実体験から確信があります。
2019年12月いっぱいで株式会社CAMPFIREは退職し、株式会社ライトライトという名前の会社を立ち上げます。Light-Rightという意味で、地域を「正しく照らす」という意味を持っています。
この会社では年間4万社が廃業し、うち2万社が黒字のまま廃業してしまうという事業承継の分野で新サービスを展開します。同族承継の割合が激減する中、ここから5-10年で経営者の高齢化がさらに進み、第三者による事業承継の可能性を引き上げていかねばならないフェーズに入ってきます。そこに、「出身者が経営者として地元に戻る」という未来を提示していきたいと思っています。
年明けにはコーポレートページ、また早々にサービスサイトの開設を行います。最初の取り扱い案件に関してもすでに決まっており、サービスリリースに向けて急ピッチで仲間たちとサービスづくりを進めています。そして、登記は宮崎で行います。また、宮崎からのスタートです。
FAAVO立ち上げの経緯
さて、長くなりますがここでFAAVOを立ち上げるまでの経緯をお話させてください。創業時から取締役を務めイラスト制作業を生業としていた当時の運営会社サーチフィールドは、どうしても発注元のクライアントの景気に売上が左右されており、"自社事業"をたてて、外部要因に左右されない第二の売上の柱をつくることが急務でした。
ちょうどこの頃私も、「次は自分で事業をやってみたい」と思うようになっており、担当として新規事業を模索し始めました。そして行き着いたテーマが「地域」でした。
きっかけとなったのは、2010年、地元の宮崎県は「口蹄疫・鳥インフルエンザ・新燃岳の噴火」と農業県として大打撃をうける非常に悲しい出来事があったことでした。
天災は人を動かす、でも人は天災でしか動かない
当時、「地元のために」と東京で宮崎のために必死に寄付を募る出身者たちが現れました。さらに翌年2011年東日本大震災が発生。東北への個人寄付なども爆発的に増加していきます。クラウドファンディングも日本ではこの頃勃興し、被災地のプロジェクトがインターネット上で大きなお金を集めていました。このような光景を目にしたときに、尊いなと思いつつ、なんとも言えない無常感をいだいてしまいました。
寄付を募る行動はとても素晴らしい。でも、なぜ「天災」が起こってしまったときしかこのような具体的な行動が起きないのだろう?
平常時でも、困っている人はいる。都市部にいながらでも、気軽に"今の地元"に支援できるサービスがあれば、普段からそういった支援行動は誘発されるのではないか?
様々なサービスを検討し経営会議にはかっていましたが、結果的そのタイミングで強く興味をいだいた「地域」というテーマでチャレンジさせてもらうことに。イラスト制作業とまったくシナジーのない領域でしたが、「自分の踏ん張りが効くテーマで」と当時の役員陣が後押ししてくれました。当時の意思決定をしてくれた役員メンバーは人生を変えてくれたな、と今でも心から感謝しています。
2012年、FAAVOリリース
その結果、ひっそりと産声をあげたのが「地域×クラウドファンディング FAAVO」でした。クラウドファンディングでの資金支援を通じ、"今の地元"に貢献できるというサービスです。あくまでクラウドファンディングは手段。どう「地域」にアプローチしていくか、をとても大切に設計していきました。
リリース後、クラウドファンディングの普及と2013年には「地方創生」という言葉がうまれ、その文脈に沿う形の新しい地域貢献サービスという切り口で、ありがたいことにリリース当初からたくさんのメディアに取り上げていただくことができました。
小さく始めたFAAVOは、一般的な手数料でのビジネス展開を行わず、地方へのフランチャイズ展開を軸とすることで差別化を図り、3年目で通期黒字を達成。なんとかもう一本の事業としての礎ができていきました。
しかし、2015年ごろから「クラウドファンディング」業界の競争が激化し、群雄割拠の時代に突入します。
2016年、宮崎にオフィスを設立、Uターン
オフィスを立ち上げた若草通商店街で初日に全員集合
2016年を迎える頃、FAAVOにはややマンネリ感が漂っていました。事業(売上/利益)は一定程度拡大していくものの、GMV(流通金額)が小さく、競合他社と比べて見劣りするようになっていったのです。さらに、他社の戦略上でも地域進出が見られ、優位性がなくなっていっていました。
一方その頃、地方へのサテライトオフィスブームが始まります(徳島県の神山町、島根県海士町などなど)。サーチフィールドとしても地方拠点を持つことはFAAVOの本質の体現でもある、と捉えて私の出身地である宮崎県にオフィスを進出することにしました。
その頃の記事。新規事業の立ち上げも宮崎から行った
私自身も「地域」を志向して始めたサービスがだんだん「クラウドファンディング」の競争にさらされるようになり、ストレスを抱えるようになっていました。目の前の業務をこなせばこなすほど、なぜか「地域」の発想から遠ざかっていく・・・そのような感覚です。
FAAVOは「出身地と出身者をつなげる」というサービス理念を持っている地域サービスであるのに、その代表者がのうのうと東京で暮らしながら全国各地に指示を出している状況って?という違和感も強くなっているタイミングでした。当時取締役でしたが、私自身が宮崎にUターンしてオフィスの設立を行うことにしました。
「今の地域の現状を知り、体現せねば」という謎の使命感がありました。2016.11に宮崎県にUターンし、オフィスを立ち上げ、ここから東京-宮崎を2週間に1度程度往復する日々が始まります。
Uターンしたことで、伸びる事業
FAAVOはエリアごとに運営者をたてるフランチャイズ制度を導入しています。このころ地域では流通金額の伸び悩みがあり、「そもそももう地方ではこれが限界なのでは・・・?」という一抹の心の不安も同時にありました。なので、オフィス設立からの1年間はその検証期間と捉え、宮崎でもう一度案件の生成に集中しました。
そうすると、2017年は、宮崎県の案件だけで1-2週間に1度程度のペースで新規案件が生まれだしました。流通金額も前年の倍以上に増加することができたのです。
「この成功体験を全国のエリア(当時すでに100以上のエリアが開設済)に広めることでさらに地域社会にインパクトを残したい」
この結果で手応えを感じ、初めて「外部資金を入れてアクセルを踏んでいこう」という意思決定をします。まずは子会社化、事業会社などからの第三者割当増資を軸に検討を進めていきました。
CAMPFIREへの事業譲渡
ご祝儀袋の水引のようにそれぞれのキーカラーが重なり合っていて手を取り合っている
実はサーチフィールド自体、これまで外部からの投資を一切受け入れていませんでした。なので資本市場に関する理解とネットワークがないところからのスタートとなったのですが、それまでの実績もあってか、情報を一部公開していくとありがたいことに数社からお声掛けをいただき、具体的な出資比率や金額の話まで早々に行き着きました。
「そろそろ決めよう」というタイミングで、一通のメッセージが届きました。
競合他社の最大手であるCAMPFIREの代表の家入さんからでした。家入さんのことは当然知っていたものの、登壇イベントなどもニアミスが続き、面識がない状態。ただ、その頃CAMPFIREは「CAMPFIRE x LOCAL」というFAAVOの仕組みと同様に地域ごとに運営者を選定するようなパートナーシップ戦略に打って出ており、地方でもマーケットリーダーとして存在感を示し始めていました。事業的には競合との地方での競争に陥ることになるので危機感があった一方で、「小さな火を灯しつづける」という当時のCAMPFIREの理念には共感していました。
地域に足をつけて生きる方々の、個々の「小さな物語」の集積こそが、地方創生の本質なのではないか。
本当に大事なものは、実はすぐそばにあるのではないか。
「小さな物語」を僕らはたくさん作っていきたい。
CAMPFIRE x LOCAL の始まりです。
(CAMPFIRE x LOCAL 当時のステートメント)
宮崎に拠点をおろして現場を見始めていた私も「地方創生」は表層ばかりで上滑りしていて、今必要なのは大きなビジョンと同時に発生すべき小さな成功体験であるなと感じていました。業界の最大手であるCAMPFIREが、地域に対して同じような捉え方をし、さらに全世界のクラウドファンディングの大きな潮流とは少し異なる道を歩みだしているということは意外でしたが、このステートメントに異様にしっくりとした感情を覚えています。
サーチフィールドの役員陣とも話し合った結果、このタイミングで事業も所属しているメンバーも次の成長を見越せる選択として、CAMPFIREにジョインさせてもらおうということになりました。決定したのは、2017年の年末ごろです。そしてそのタイミングで、私も2008年の創業からつくりあげてきたサーチフィールドを卒業することにし、所属メンバーと一緒にCAMPFIREに籍ごとうつすことにしました。
正式にFAAVOのチームメンバーに通知したのは、2017年の年末のメンバー全員との1DayMTGのこと。それまで拳を振りかざして地方で競ってきたCAMPFIREと一緒になるということを話したとき、メンバーは大きく動揺しました(告知のあとすぐに休憩取らないとどうにもならなかったのを覚えてる・・・)。
現場がざわつく中で、一緒のチームで働いていて今ではCAMPFIREのマネージャーにあたる妻が泣きながら補足説明をしてくれたのを覚えています。妻は、この決断にいたるまでの私の心の不安定さも受け止めてくれていました。私自身がFAAVOという事業にどれだけ想いをこめて身を捧げてきたか理解してくれていました。メンバーも全員もらい泣きしてたようでしたが(ぼくはポカンとしてた)、妻の言葉で動揺が収まってみな冷静に前向きに統合までの議論に入れました。今
直後の忘年会での一枚。この笑顔の裏には衝撃発表があったw
そして、諸々の手続きなどを経て、2018年4月に統合発表、2018年7月にCAMPFIREへ完全移籍となりました。FAAVOのメンバーは全員このタイミングで離脱することなく、CAMPFIREへ移籍してくれ、現在も活躍してくれています。本当にありがとう。心から感謝しています。
統合当日のポスト。多くの方に前向きなコメントを頂きました
2018年7月、CAMPFIRE入社
みんなで入社当日(2018.7.2)
2018年7月、サーチフィールドから当時のFAAVOメンバー全員でCAMPFIREへ転籍しました。CAMPFIREではまず「FAAVO by CAMPFIRE事業部」が新設され、そこの事業部長に就任することとなりました。当時「CAMPFIRE x LOCAL」はFAAVOに吸収合併することになり、同じモデルで展開していた二つのサービスを統合する作業に着手します。
FAAVOもCAMPFIRE x LOCALも全国にパートナーシップを組んでいる事業者や銀行、自治体が存在し、そのすべてに統合の説明を行い、新しいスキームを確立させながら、メンバーとCAMPFIREの文化に触れつつ、月間の流通金額をあげていくというのが私に課せられたミッションでした。
競合同士の合併ということで、FAAVOのエリアオーナーとCAMPFIREのローカルパートナー(二つとも呼び名は異なるけど、同じ運営委託先)への説明をし理解を得る作業は想像以上に大変でした。
当然、地域を盛り上げていくという大きなベクトルは同じものの、戦い合っていた両社がくっつくわけですから、戸惑いが広がりました。事実、このタイミングで離脱されていった相手先もあります。一緒に運営してきた仲間が去っていくのは本当に心が痛みましたが、ほとんどの相手先に理解と今後への期待の言葉をいただくことができたは幸いだったなと思います。
そして、2018年10月、当時のCAMPFIRE事業部長(基幹事業部)が産休に入られることをきっかけに、CAMPFIRE事業部長を兼任することになりました。2019年の初頭からは両事業部を統合し、一つのチームとすることになりました。実は2019年上半期(1-6月)のスローガンを決めていたのですが、それが「ONETEAM」。
証拠(顔丸い・・・)
事業部長になるタイミングでたくさんのセクションをまとめることとなり、これまでのやり方や体制、役割を見直して新しく作り上げるタイミングであったため、最も大切なことを誰もがいつでも思い出せるワンワードが欲しくて打ち上げました(そしたら流行語に)。
1Qで新しい体制とチームをつくりあげ、2QでからGMVのフェーズを変え、3Q、4QでJカーブを描きつつ収益力を高めていく、というプランを描いていました。2QにはテレビCMもひかえていたことと、同時期にCAMPFIREのリリースからの総流通金額が100億円に到達することもあり、キャンペーンの企画実行も行いました。CAMPFIREの理念にのっとり、小さな案件を積極的に取扱う方針を示し、ありがたいことに事業は順調に推移させることができました。単月の流通金額でいうとYoYで200%伸長しました。ひとえにCAMPFIREのために現場で踏ん張ってくれたキュレーター、マーケ、プロダクトチーム、カスタマーサクセス/サポートチームのみなさんのおかげです。とても素晴らしく貴重な経験ができました。
2012年FAAVO立ち上げ時に競合だったCAMPFIREに挨拶に行ったのですが、まさか自分が事業を見ることになるとはつゆとも思ってなかった、、人生何が起こるかわからないものですね。
CAMPFIREからはFAAVO一周年のときのイベントでお花を頂いた。近い思想だなーといつも思っていた。
また次のチャレンジへ
振り返ってみると、ここ数年同じ顔ぶれのメンバーと貴重な体験をしてきたなと思います。馴染みのメンバーと仕事しなくなるのは寂しいけれど、メンバーの成長に負けないよう、もっと前のめりで突き進んで、いきます。
会社の代表になるのは初めてなので、色々と立ち上げを経験してきましたが、今までとは違った心持ちでいます。不安と希望が入り混じっていますし、1万円の固定費をむっちゃ渋っていますwでも、もともとFAAVOで向かっていたビジョンに向けてまた歩き出せると思うと、気持ちが入ります。私のお知り合いのみなさまには、遠慮なく助けを求めに行きますので、助けてください!
地域には照らされるべきコンテンツや事業者がたくさんあります。諦めや焦燥をもって事業を閉じなくていいように、残るべきものを残すお手伝いをしていきたいと思います。
これからもどうぞよろしくお願い致します。
追記:家族に感謝して
気づいたら長々と自分史を書いてしまう結果となってしまいました。。自分で振り返ってみても、結構無鉄砲なことをやってきた気がします。なんとか乗り越えたとき、人は自分の力のように盲信してしまうこともあるかと思いますが、35歳になった今からまた0からのチャレンジを認めてくれた妻、家族には頭があがりません。がんばります。
そしてただでさえ可愛い娘二人に加え、1月には第三子(三姉妹)が生まれてくる・・・がんばるしかない・・・!
お仕事のご相談もお気軽に!
株式会社ライトライトは1月に設立しますが、当初は1人会社です。FAAVOの仕事もありがたいことに業務委託で一部続けさせていただくことになっていますし、私にお手伝いできることがあればお気軽にお声掛けください。
これまでのメインであった地域課題などに関わる業務や事業企画・開発、チームマネジメントなどの分野は一通り経験してきているので多少お力添えできるかもしれません。もちろんクラウドファンディングのご相談もお気軽に!
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