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BL短編集「悪役令息になった俺は処刑を免れるために主人公の兄を攻略します」試し読み


2000字、3000字以内のエッチでやおいなBLショートショートを10作を収録した短編集です。R18。

日常もの、ホラー、異世界転生転移、ファンタジーなどジャンルはなんでもござれ。



【悪役令息になった俺は処刑を免れるために主人公の兄を攻略します】

俺はゲーム会社に勤めているとあり、どんなジャンルにも精通しているし、たいていクリアができる。

そのことを合コンで自慢をしたら、女子の一人が「じゃあさー」と前のめりに。

「今、やっている乙女ゲームの手強い相手を攻略してみせてよ」

相手は気になっていた女子。
下心ありありでOKをしたものを、相手もしたたか。

スマホゲームとあり、自分のアカウントとパスワードを渡して「できるだけ課金しないでね」とにっこり。

攻略した特典が欲しいだけで、べつにプレイは見たくないという。

もやもやしたが、ゲームを開始すれば熱中。
「俺に攻略できないゲームはない!」と躍起になったもので。

が、思った以上に苦戦。
なにせ攻略する相手は悪役令息だったから。

美人と評判の主人公を敵視する女は多い。
その一人の令嬢に「あの子にいじめられた」とそそのかされて、主人公にいやがらせをするのが悪役令息、ロナード。

【不感症だと噂される武闘家が粘液まみれで勇者に口説かれる】

今まで魔王に敗れてきた歴代の者より、今、旅をしている勇者は強いとされ、期待をされていた。
が、一つだけ難点が。

英雄色を好むとはまさに。

爽やかな美青年とあって「勇者さまあ」と寄ってたかる女たちを食い漁り、遅々として旅が進まず。
武闘家の俺をパーティーに加えたのだって「おまえと3Pしたい」からだし。

天下の勇者さまほどではないが、俺も肉欲に忠実で、肉体美に見惚れる女に手をだしまくり。
仲間になってからは、勇者3Pと三昧。

だったはずが、ある日を境に俺はエッチをしなくなった。
どれだけ勇者に乞われようと、女に誘われようと、頑としてお断り。

そのうち「勇者がハードプレイを強要して、そのせいで不感症になったのでは?」と噂が広まることに。
積極的な女が股間を撫でたところで、俺が虚無の顔をしていたからだろう。

おかげで女は寄りつかなくなったものを、勇者のほうは「3P!3P!」と駄々をこねて諦めず。
「3Pしてくれないなら、もうお前いらない!」と脅してくるも「したいならしろ」とお互い一歩もひかない状況。

【彼に手籠めにされ惑わされても俺は縁を切れない】

人との縁は切れにくい。

どれだけ暴力をふるわれようと、罵られようと、金をむしりとられようと「俺にはお前しかいないんだ」と泣きつかれれば、そのままなし崩しに抱かれてしまう。

「このままではだめだ」と思いつつ、そうしてずるずると彼との荒んだ生活をつづけてしまい。
胃潰瘍になり、睡眠薬と精神安定剤が手放せない状態にまでなって、いよいよ限界。

といって、腹を据えて彼に別れを切りだすことも逃げることもできず「別れ坂」へと向かった。

別れ坂は古道で、いいつたえがある。

若旦那に見せつけるように、妾が首に包丁を突きさし絶命したのだとか。
以降「この坂で別れたくても別れられない人が願うと、相手との縁を切ってくれる」といわれるように。

「いつか本妻に」との若旦那の言葉に騙されて、人生を翻弄された妾だからこそ、似た境遇の人の願いを聞きいれるのだろうと。

ただし、願ったあとに「やっぱり別れられない」「よりをもどしたい」とキャンセルすれば、彼女は許さない。
縁を切るだけでなく、願った人の首も切ってしまうという。

【劣等感と独占欲にまみれた双子は淫らに男と絡みあう】

俺と千弘は一覧双生児だが、見まちがえられることはない。
見た目も性格も趣味も異なったから。

陰気な俺、陽気な千弘。
俺は無難な格好をし、千弘は舌にピアスをつけたり腕にタトゥーをいれたり奇抜なファッション。

生まれつき大きな黒目をして「小動物みたい」ともてやはす女友だちが多い俺。
目つきがわるく柄のわるい連中とつるみ、夜な夜な遊びまわる千弘。

友人関係が重なることがなく、家以外ではあまり交流したなかったものを、一人だけ、俺と千弘の共通の友人がいた。
隣家に住む幼なじみの大河だ。

ふだん千弘と俺は話があわないのが、大河を交えると延延と談笑ができる。
他愛ないことで盛りあがり、笑いあい、うなずきあい、感心しあって。

これから三人が年を重ねても環境や立場が変わっても、絶妙なバランスのこの関係性は崩れないと思っていたのだが。

千弘と町中を歩いていたところ。
工事現場の鉄柱が落下。

俺を突きとばし、鉄柱の下敷きになった千弘は死亡。

千弘が死んでからも大河は俺と会ってくれたが、たまに、ふと目の色を変えて口にした。
俺を見ながら「千弘」と。

【イケメン不信の俺は懲りずにエルフに手籠めにされる】

幼いころから俺はイケメンに弱く、騙されて貶められたり搾取をされてきた。

いい加減、社会人にもなれば懲りてイケメンには近寄らず。
といってイケメンに惹かれるのは相かわらずで、ゲームの世界で求めるように。

今、はまっているのはエルフの国を冒険するゲーム。
エルフといえば美男美女ぞろいのイメージだし、このゲームはとくにイケメン度が高くて好評。

ちなみにプレイヤーは人間であり、旅する商人。
レアアイテムや貴重なお宝を探し、それで商売しながら世界を歩き回っている。

とあって最終目標は、エルフの国に眠るとされている秘宝を見つけること。
遊び方はいろいろで、秘宝まっしぐらもよし、それぞれの町にあるミッションをこなしもよし、町にとどまりエルフとの交流を深めるもよし。

その町を気にいったり、住人のエルフを好きになれば、結婚をして家庭生活を営むのも可能。

このゲームの世界では、エルフの異種婚は珍しくなく、町ではハーフの子供もよく見かける。
子供にしろ神の木に祈れば授かれるので、異種の性交による問題もなし。

もとよりエルフには性欲がなさそうだが、まさか祈ることで木の実に赤ん坊が宿るとは。

生生しい性的なことを排除しているのがこのゲームのよさであり、俺の気にいるところ。
なにせ性的なことでも、イケメンに痛い目にあわされた経験があるから。

【ちょん切ろうとする狂人から逃げ惑うホラーゲームで俺と友人は愛しあう】

ホモの強姦魔で殺人鬼の男がうろつく地下迷宮。
太い枝を切る剪定ばさみを鳴らしながら、逃げ惑う男たちを追いつめる・・・。

パクリとはいえ、鬼側のキャラ、通称「ちょん切り」がホモに改変されたのが受けて、本家に劣らず人気なホラーゲーム。
あえて金を払ってまで恐怖体験したがる特殊なホラーゲーム好きたちの支持がとくに高い。

なにせ本家よりちょん切りは残虐行為をしたから。
まず剪定ばさみで一物を切り、出血死しないよう処置してから強姦。

激痛に絶叫する男を凌辱し、ちょん切りが満足したなら、皮を剥がすなどをして、ゆっくりとじっくりと殺していく。

今のCG技術で、それらのシーンを生生しく再現したら発禁もの。
とあって、ゲームオーバーになると、そのシーンが一気に流れ、断片的にしか見れないのだが、ホラーゲーム好きを舐めてはいけない。

「想像力を掻きたてられて余計こわい!」と狂喜するのやら、鼻息荒くコマ送りで観賞するのやらが続出。

まあ、そこまでの猛者でないにしろ「ゲームオーバーがおぞましいほど緊張感を持ってプレイができる」と月並みにホラーを嗜む俺も、このゲームに夢中。

週末にはホラーゲーム愛好家の友人、立花とカラオケルームを借り、大画面で二人プレイ。
思う存分、怯えて絶叫しまくり、ゲームオーバーの映像が流れると「ひえええ!なんか俺のなくなった気がする!」「やめろ!え?もしかして俺も?」と悲鳴をあげつつ、はしゃいで。

そうして夜通しゲームを堪能するはずだったのが、いつの間にか二人とも寝落ち。
目覚めると、ソファより固いところに寝そべって、あたりは真っ暗

【濡れた彼の胸が艶やかすぎて俺はプールからあがれません!】

デスクワークによる運動不足解消のため、市民プールに週三四回通っている。

そこで見つけたのが胸の美しい人。
膨らみは小さくとも、水着越しのその曲線が、見惚れてプールサイドに顔面をぶつけたほど魅惑的。

ただ、相手は女ではなく男。
胸を覆うタンクスーツを着て、女顔をしているとはいえ、肩幅が広い細マッチョ。

体脂肪率が低そうな鍛えあげた肉体をしているが、胸のあたりだけが丸みを帯び、水着越しでも柔軟に揺れるのが見てとれる。

男でタンクスーツを着る人は珍しいし目を引くものの、颯爽としたイケメンで高嶺の花的存在感があるから、だれも声をかけず、近寄らず。
俺も意気地がなく、遠目に至高の胸を拝んでいるだけだったのが。

プールからあがり、念いりにボディクリームを塗っていたとき。
「あの、すみません」と声をかけられ、ふり向くと、なんと胸の美しい彼が。

「じつは俺、ボディクリーム忘れちゃって・・・。
よろしかったら、すこし分けてもらえませんか?」

一瞬、思考停止してから、頭が爆発しんばかりの衝撃が。
「りりりり理想のおっぱいが目の前に!」とパニックになったものを、理性を総動員して「あ、いいですよ」とにこやかに対応。

【孕んだように丸い腹をしたお前を突きあげたくてたまらない】

友人の下田は華奢ながら大食いで、食べると妊娠したように腹を膨らませる。
生まれつきの体質で、そりゃあ「子供ができた!」と男子に茶化され、トイレからもどって腹が引っこんでいると「おまえ、子供どうしたんだよ!」と囃されたもので。

幼なじみの俺は、膨らんだ腹を見慣れていることもあり、そんな阿呆男子らには混じらず。
まあ、ただ思春期を迎えてからは「下田の丸丸とした腹が俺の性的なツボなのか」と自覚をしてしまったが。

下田の丸い腹にガチで性的魅力を覚えたから、いじったり冷かさなかったのだろう。
幼いころから潜在的に欲情していたわけで、ある意味、阿呆男子より下心が大ありだったのだが「笑わないのはお前だけだよ」と全幅の信頼を寄せられてしまい。

お盛んなお年ごろになって、丸い腹が揺れるのを間近で見せられのは相当、辛かったとはいえ、勃起するのを耐えに耐えて親友の立場をキープ。
そうして大学生になっても、愛しの腹ならぬ下田の隣にいることができて満足していたものを、否応なく変化は訪れるもの。

このごろ下田が「一生、童貞だったらどうしよー!」と彼女を欲しがってしかたない。

顏のいい下田は、女子の関心を引きやすいものの、膨らんだお腹を見て大半が脱落。
近づいてくる子がいたとして、食べたあと半日は引っこまないというお腹事情を知ると、去っていく。

孕んだようなお腹をした男とエッチしたくないからだろう。
下田にしろ「食べないとエッチする活力が湧かない」とほざいているし。

「いつか、お腹の張った下田をぶち犯したい」と思っている俺にしたら、女が寄りつかないのは都合よし。
「死ぬまで童貞やだー」と愚痴るのを、余裕ぶって聞いていたが、その日は深刻な顔をして曰く。

【品行方正な侯爵令息が本性を剥きだしに淫行を迫ってきます】

俺の恋愛と性愛の対象は同性。
とあって、女性向けの恋愛ゲームをよくプレイ。

今のお気にいりは、中世の西洋風の世界を舞台にした乙女ゲーム。
で、一押しのキャラは品行方正で顏も性格もよく剣の腕も立つ侯爵令息のロベリオン。

こういう正統派な王子さまタイプは好きでないのだが、どうも気になることが。
現代でいうと陽キャでリア充なれど、時たま、遠い目をして陰のある表情を見せるのだ。

たまたま、そう見えるのではなく、ゲームの紹介動画でロベリオンには裏の顔があるような匂わせが。
神に祝福されて生まれてきたような彼にして、誰にも明かせない秘密があるらしい。

ミステリアな男が好きな俺は、だから惹かれて、ロベリオンに集中的に猛アタック。
どんどん親密度があがり、その日は主人公の家の近くで乗馬。

馬が暴れたのから守り、負傷したロベリオンは、主人公の家に泊まることに。

これはチャンス!
「眠れない」といって月夜の下、話をすれば、彼が秘密の一部を覗かせてくれるかも!

興奮しつつ、こっそりの彼の部屋にいくも不在。
屋敷を探しまわり、ドアの隙間から明かりが漏れている部屋が。

その部屋は兄の衣裳部屋。
「まさかロベリオンが?」と覗くと、床に燭台を置き、開いたタンスの引きだしをごそごそ。

蝋燭の炎が揺れるなか、果たして彼が取りだしたのは、主人公の兄の下着のパンツ。

【雨の日に折檻するように俺を抱いてくれる男を探している】

雨が降ると俺はおかしくなる。
異常に心臓が早鐘を打ち、放っておけば、息ができず倒れそうに。

不整脈のようなのを抑えるためには、男に痛めつけられながら抱かれるしかない。
幸い、マッチングアプリが溢れる世にあって、そういう類の男を見つけるのに困らず。

ただ、梅雨にはいり、雨つづきになると厄介だ。
いつも新しい人を探さないといけないから。

一回以上会った男は、三ヶ月くらい間を空けないと誘えない。
親しくなることで、プレイを手加減してほしくないから。

そんな条件を踏まえて雨つづきで毎日探すのは困難。
しかたなく妥協してプレイ項目に「お尻叩き」しかない、不慣れそうな男をチョイス。

果たして待ち合わせ場所にきたのは、大柄の優男。
写真より見目がいいとは珍しい。

性格もよさそうで人懐こく、道中ずっと自分の生活ぶりや仕事について話しっぱなし。
性生活についてもすこし。

「いや、俺、まえは男とふつうにエッチしてたんですけど、あるときSMものの動画の広告、誤ってクリックしちゃったんですよ。
それが、お尻をぺんぺんするやつで、今までになく興奮してぬいちゃって。

それまでのエッチに不満はなかったとはいえ、どこかしっくりこなかったから。
これだ!と思って、どきどきしながら初めてマッチングを使ったんですよ」

「思ったより、話しやすそうな人でよかったです!」と屈託なく笑う顔は目に眩しいほど。
「ほんとにマゾか?」と疑うところ、まあ、病的に外面がいいタイプなのかも。

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