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生活と心と。本との向き合いかた

Kindle端末を購入して、電子書籍でも読書をするようになってから、一年が経ちました。

本は電子書籍ではなく、紙の本で読みたい。
本は本屋さんで買いたい。
というこだわりを持っていたので、電子書籍には長年、抵抗感があったのです。
"それなのにどうして電子書籍を?"という問いに対する答えは…、
"引越しの度に本を減らすのが、辛くなったから"です。

これまでに、7回の引越しを経験しました。
家族構成や経済状況の変化で、次第に暮らす場所の面積がせまくなっていったのが実情です。

もともと気に入ったものは長く使うほうで、そのうえ昔は好きなものをコレクションする傾向にあった(レターセット、色えんぴつ、ブックカバーなど)ので、引越しに不慣れだったころは、荷造りと荷解きに苦労しました。

10代から20代前半にかけては、一番読書量が多い時期でした。漫画が大好き。そしてミステリやファンタジーも好きで、さまざまなシリーズものを買い揃えていたため(京極夏彦さんの『京極堂シリーズ』、森博嗣さんの『S&M及びVシリーズ』、小野不由美さんの『十二国記シリーズ』など)、本だけでダンボール箱が10箱を超える事態に…。
わたしの本だけでその数のダンボール箱を使うわけにもいかず、泣く泣くたくさんの本を手放したのです。

そんな経験を積んだことから、いつしか本棚に並べる本の数の限度を決めて、定期的に整理をするようになりました。

しかし、買う本を厳選して、熟慮を重ねて手元に残す本を絞っても、いつのまにか本が増えていくのが、読書好きの宿命。

物理的に所有できる数に限りがあるとわかってはいるものの、置き場所を考えて買うのをためらったり、好きでも手放さざるをえなかったりすることに、次第に心が曇っていくようになりました。

そこで頭に浮かんだのが、電子書籍の存在です。

紙の本が好きだから、根本的な問題の解決にはならないけれど、物理的な置き場所問題は解消できる。
本が好きだからこそ、抵抗を感じていた電子書籍。
でも、自分の生活環境と、心との折り合いをつけるには、今のところ最善の解決策では?
(図書館で借りる、という方法もあります。でも、わたしの場合、返却期限があると、どうにも気が急いてしまい…。ゆっくりとしたペースで読みたい、という気持ちがつよいのですね)

半年間ぐらい悩んだ末に、Kindle端末を購入しました。今まで置き場所のことを考えて、購入をためらいがちだった単行本や漫画本を手に取りやすくなり、気持ちがとても軽くなりました。
たとえば、ヤマシタトモコさんの『違国日記』は、自分にとって大切な作品となりましたが、気兼ねなく全巻揃えられたのも、電子書籍なればこそ。
想像していたよりも目への負担も少ないですし、外出先に複数冊の本がたずさえられるのも嬉しく、思いきって購入して良かったと思っています。

良かったと、思いつつ。
実はこの頃、noterさんの記事を読んで気になった本を本屋さんで見かけると、手に取ってついついレジに向かってしまいます。
今、わたしの机の上には文庫本が数冊積み重なっている状態で、"あらまぁ"と思いながらも、好きな本が手元にあることの嬉しさに笑顔になってしまい…。
ままならないものですね。

文章を目で追うことだけではなく、本屋さんで本を選ぶこと、好きなブックカバーをかけたりしおりをはさんだりすること、素敵な装丁をながめることも"読書"のなかにはふくまれていて、だからこそやっぱり、紙の本が好きなのだなぁ、と感じるのです。

書きながら思ったのですが、たとえ本が手元から離れても、その本を読んだ時間や経験が消えてなくなるわけではないのですよね。
幼い頃好きだった、『怪談レストラン』『こまったさんわかったさん』『クレヨン王国』だって、今もわたしの心のなかの本棚にはきちんと並んでいる。

必要以上に喪失感を感じる必要もなく、自分の心を律しすぎても苦しくなってしまうので…。
生活環境とのバランスを取りつつ、本との向き合いかたについて、これからも日々考えていきたいなぁと思っています。

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