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美術を愛した創立者、思いは未来へ繋がって。松岡美術館

“好きなものを集めて鑑賞して楽しんで、そして楽しませてもらった美術へのお礼として、その喜びを多くの人にわかち合いたい”

「松岡美術館」創立者・松岡清次郎

港区の中でもひときわ閑静で、通りにもエレガントな気品が溢れる街。白金台、その落ち着いた界隈に建つのが松岡美術館です。

地下鉄「白金台」駅から広がる瀟洒な街並み。外苑西通りと交錯する目黒通り沿いには東京都庭園美術館もあります。

松岡美術館の入り口

松岡美術館は、松岡清次郎による私立の美術館。「松岡商店」を経営していた実業家の清次郎は若い頃から美術に親しんでいましたが、晩年になって本格的な蒐集に励むようになり、80歳のときに一念発起して美術館の創立を目指します。手元に集めたコレクション数は1,800点あまり。個人が一代で築き上げたものとしては膨大です。中でも3分の1以上を占めるのは陶磁器で、実用の器よりも鑑賞芸術としての陶磁器を愛した清次郎が大切にしてきた名品が自慢です。

入り口から中に入れば、受付の先にあるロビーでは大きな彫刻がさっそく出迎えてくれます。

再開記念展 松岡コレクションの真髄

展示室

松岡美術館は、6つの展示室で構成されています。エントランスのある1階には常設展示が3室、ロビー内にも彫刻などの作品が置かれています。2階にある3室は企画展示室です。

常設展示室の内容は次の通り。

  • I:古代オリエント美術

  • II:現代彫刻

  • III:古代東洋彫刻

それぞれ、古代エジプトの木棺や石像、大型ブロンズの彫刻、仏教彫刻やヒンドゥー教の神像など時代や趣向の異なるさまざまな像を楽しめます。

トルコで出土した《馬頭頭部》
優美な姿が印象的な《菩薩半跏思惟像》

ガンダーラとは、現在のパキスタン・ペシャワール地方のこと。くっきりとした顔立ちの菩薩像に異国情緒を覚えます。「弥勒菩薩」と「仏陀」の両方が並べられていて、その違いがわかるのもおもしろいですね。

左が仏陀坐像、右が菩薩坐像。
弥勒とは悟りを求める者のことで、釈迦が悟りを開く前の修行の姿と言われています。

ヒンドゥー教の神々を模したインド彫刻は動きのあるポーズが特徴的で、仏教彫刻の落ち着いた雰囲気とは対照的です。エネルギッシュで躍動感があり、装飾など細部へのこだわりも感じられます。
ほかにもにっこりとした表情がユニークなクメール彫刻など、古代アジアのさまざまな彫刻が一堂に会した空間は圧巻です。

ブロンズ彫刻の《音楽の神シヴァ》

企画展示で特徴的と言えるのは、清次郎が蒐集したものだけを展示していること。これは創立から一貫しているスタンスです。通常、企画展では他館などから作品を借りてくることが多いのに対して、独特なスタイルと言えるでしょう。そこには私設美術館ならではの誇りがあり、清次郎が亡くなったあともその遺志が大切にされていることがわかります。

華やかな陶磁器のコレクション

「ゆったりと鑑賞していただきたい」という思いから、看視スタッフではなくモニターで看視をする工夫も。ほかの鑑賞者に配慮した上であれば、写真撮影やデッサンもOKとしています。

---After---

ショップ

受付横のショップスペースには、所蔵品のポストカードがずらり。一筆箋やマグネットなど文房具も購入できます。

おわりに

陶磁器、日本画、彫刻など豊かなコレクションを有する松岡美術館。
創立者・松岡清次郎が熱心に集め、鑑賞し、親しんだ美術は彼が亡くなったあとも遺族たちによって引き継がれ、美術館設立に込めた思いとともに今へと繋がっています。

入館は高校生以下が無料、25歳以下も一般料金の半額以下で楽しめます。平成元年に95歳で逝去した清次郎を知らない世代も、美術品を通してその喜びを分かち合うのでしょう。

そうして館に訪れる人々を、清次郎は今もどこかで見ているのかもしれません。

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松岡美術館
〒108-0071 東京都港区白金台5丁目12−6
TEL:03-5449-0251
公式ホームページ

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