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自灯明法灯明 Podcast #6 Richard Burnettさん インタビュー 第3回 (全3回)

このPodcastでは、私がスティーブン・バチェラーさんのセキュラーな仏教のプログラムで出会った欧米の方々にインタビューをしていきます。先週に引き続き、イギリスの学校教育にマインドフルネスを導入されてきたRichard Burnettさんにお話を伺います。(全3回)

英語+日本語版(逐次通訳)

英語版

Richardさんは、イギリスのチャリティ団体、Mindfulness in Schools Project(学校教育におけるマインドフルネスプロジェクト)の共同創設者であり、現在は会長をされています。加えて、Tonbridge Schoolでも教鞭を取られ、入学試験のディレクターでもあります。この学校は、2010年初め、イギリスの学校では、初めてカリキュラムにマインドフルネスを取り入れたことで、多くのメディアで取り上げられました。Richardさんは、高く評価されている10週間のコース(.b、ドット・ビー)を共同で作成し、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、フィンランド、オランダ、タイ、メキシコの幅広い教育機関において、これまでに数万人の若者にこのコースが提供されるに至りました。RichardさんのTEDxトークは、教育におけるマインドフルネスという考え方を広めることになりました。メンタルヘルスと教育という、イギリス連邦議会の超党派グループにも専門家として招かれています。

Mindfulness in Schools Project (MiSP)

TEDx talk: Mindfulness in Schools

今回のRichardさんのお話から、印象に残ったところを取り上げてみます。

仏教の歴史を振り返ってみても、ある国に伝わると、その文化に融合していくことが起きていて、それは西洋でも起きるのではないかと思っている。大切なことは、複数のあり方をゆるすこと、オープンであることです。ゴータマがインドで発見したことが、多くの枝分かれをしたり、方向性をもったりするということです。

マインドフルネスを切り離してみるのではなく、その他のすべてのことと共に、包括的にみるということが、人間性の向上のために重要です。テクノロジー、エンジニアリングなどは、気候変動のような課題に対しては、とても大切なものです。例えるならば、マインドフルネスは機械にとってのオイルで、課題に対して、人々がオープンであったり、集中したり、親切であり続けるようにするということです。文化を超えて、人間性を統括する機能となるといってもいいでしょう。

私自身の実践は、ヴィパッサナー瞑想、S. N. ゴエンカさんのものに近いです。呼吸をアンカー(碇)にしていて、あまり変わらずにずっとそこにあったという感じです。一日瞑想ができなかったからといって、ご自身を責めないようにとお伝えしたいです。フルタイムの仕事をしながら、一日の中で二時間とるというのは難しくて、徐々に時間が短くなり、もうこんなことではダメだと自分を責めたこともありました。気がついたのは、それもある種の執着、こうしなくてはならないという決めつけだということでした。ご自身に寛容になっていただきたいと思います。

瞑想以外に大切なことは、スティーブンさんが言われるように、創造性やストーリーテリングだと思います。英文学にはとても美しい文章が残されています。例えばヴァージニア・ウルフは、悲劇的な人生の最期を迎えましたが、彼女の日常の観察は、とても美しいものです。地に足を付けなければいけない時には瞑想が必要ですが、少し余裕がある時には、文学、詩によって、喜びや色彩がもたらされるのです。

スティーブンさんが、懐疑的である、知らないということ、オープンであるということを公言されていることはとても大切なことです。テクノロジーやエンジニアリングなど、やっていることを全て止めるということではなくて、一旦立ち止まって「わからない」と言えることが人間性にとって重要だと思っています。

参考:スティーブン・バチェラー Stephen Bachelor
イギリスの仏教者、瞑想指導者。初期の経典(パーリ仏典)に遡り、仏法(Dharma)を現代に生かすための再解釈を行なってきた。チベット仏教僧、禅僧としての修行・指導を経て、ヨーロッパを拠点とした瞑想指導を行いながら、1980年代から、欧米におけるセキュラーな仏教(宗教性のない、世俗的な、時代にあった仏教)を牽引している。邦訳に、ダルマの実践(四季社、2002年)、藤田一照訳(原著:1998年 Buddhism without Beliefs - a contemporary guide to awakening -)がある。

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