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短編小説の森

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私が書いた短編小説たちの倉庫です。カテゴライズしたマガジンにある作品も、全てここに集めています。   ※五十音順に掲載
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#創作

雨の日は相合傘で [短編小説]

 ずっと闇の中を走っていた電車が一気に地上へ出た。いつもならオレンジ色に染まった夕暮れの…

瑠璃
1年前
68

イルカに似ている [短編小説]

 神無月が終わって、街は一気に冬の衣裳をまといはじめていた。わずかに目につく取り残された…

瑠璃
1年前
54

嘘だけはつかないで [短編小説]

 いつも通りの休日の朝が来て、和雄よりも先にベッドを抜け出しシャワーを浴びた。メイクが終…

瑠璃
1年前
61

季節はずれの動物園 [短編小説]

 最後に動物園へ行ったのは、いつ頃のことだったろう。小学生の時だったろうか、それとも中学…

瑠璃
2年前
46

君の名を… [短編小説]

 中学生の頃、隣のクラスに原真紀というとても可愛いらしい女生徒がいた。同じクラスになった…

瑠璃
1年前
43

幸せ・ホルモン・オムライス [短編小説]

 朝が来ていた。タイマーの切れたエアコンからではなく、少し開いている窓から涼しい風が吹き…

瑠璃
1年前
72

白い闇を抜けて[短編小説]

 人生を振り返る時、人類の歴史そのものがそうであるように「もしも」という考えは意味をなさない。もしもあの時、左ではなく右の道を選んでいたら。あの日、約束を破りさえしなければ。そんな「もしも」に続く無数の「たら」、「れば」を抱えて悔やみながら生きている人は案外多いはずだ。  もしもあの人と出会わなければ。坂上千里は高校の教師になってからも、何度となくそう思いながら暮らしてきた。誰にも言えない秘めた関係。まだ若すぎた彼女にとって、その男との関係は、なかったことにするしかない黒歴史

蒼穹のカンパネルラ [短編小説]

 探し物は、ふいに目の前に現れた。懸命に探していた時はどうしても見つからなかったのに、諦…

瑠璃
2年前
46

台風一過 [短編小説]

 嵐が近づいていた。朝方は綺麗に澄み渡っていた空が、今は真っ黒な分厚い雲で覆われている。…

瑠璃
2年前
58

太陽がまぶしくて [短編小説]

 千代さんが死んだ。水曜日の朝に救急車で運び込まれた病院の集中治療室で、結局一度も意識が…

瑠璃
1年前
49

「代理出席」承ります [短編小説]

「ジューンブライドじゃないのがねぇ」  隣のテーブルから、ふいにかん高い女の声が聞こえた…

瑠璃
1年前
51

月から来た恋人たち [短編小説]

 なぜ男は来ないのだろう。子どもの頃にかぐや姫のお話を聞いた時、最初にそう思った。幼いな…

瑠璃
1年前
47

なごり雪 [短編小説]

 雪が降ると、初めて恋人として深くつき合った加藤俊輔のことを思い出してしまう。彼がよく連…

瑠璃
1年前
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七度目の恋、二番目の人 [短編小説]

 猫みたいな女だと言われた。人のタイプを猫や犬に分類するのも、ありきたりすぎる例えで面白くもない。その上、別れ話の意味が分からないのだという。あれだけ丁寧に話しても分からないなら、たぶんこの男には一生理解できないだろうと思った。  そればかりか、アクセントが女という言葉を強調している。なんだか見下されているようだった。だからニャーとだけ答えて電話を切る。それでエンドマーク。スマホの電話着信もブロックした。関係を断ち切るだけなら便利な時代になったものだ。  そもそも時差も考えず