ポプラ林の中の二人 [短編小説]
風の音がした。下草や枝葉をざわざわと揺すりながら、描かれた風景の中を風が吹き抜けていく。
ゴッホが描いた「ポプラ林の中の二人」という絵だった。心が揺すぶられている。ポプラ林の中に佇む一組の男女が、里美を真っ直ぐに見つめている気がした。
「その絵に魅かれるのは危険ですよ」
急に、左後ろから男の声が響く。里美が驚いてふり返ると、同僚の森博之が立っていた。人の心の奥をうかがい見るようないつもの風情で、ゴッホの絵の前に佇む彼女を見つめている。
見るからに高そうなブランド物のコ