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我が家に愛犬がやってきた話

3年前の春、我が家に愛犬がやってきた。

コロナのパンデミック中、イギリスはロックダウンで外出禁止となったが、犬を飼っている人だけ気軽に散歩できる免罪符が与えられたため、みんな一斉に犬を飼い始めた。

子犬の価格が通常の3倍になり、それでもなかなか手に入らないので、一般の住宅から子犬を盗んで転売する窃盗団があらわれ、大問題になるほどだった。

我が家はそんな子犬ブームを横目に見ていたのだけど、パンデミックが少し落ち着いてきた頃、ビーチを散歩する犬連れ家族があまりに楽しそうに見えて、「いいなー」となってしまった。

「犬を飼ってみようか」
夫が一番、乗り気だった。

でも、犬種がなかなか決まらない。私と娘はプードル、夫はジャックラッセルテリア。

「モフモフした子がいいな」
「えー。俺、プードルだけは嫌だよ」

あーだこーだ言いながら夫とふたりでブリーダーのホームページを見ていたら、数分前にアップされたばかりの子犬の情報が目に飛び込んできた。
ジャカプーというミックス犬。

「え!これ俺らの理想じゃん。ジャックラッセルとプードルのミックスだって」

ブリーダーのホームページに掲載されていた子犬の写真

夫が興奮して調べたら、なんとブリーダーは家から車で10分の距離。
メッセージを送ってみたら、とりあえず見にくれば?とのことで、見るだけ見に行ってみようと、翌日みんなで行くことになった。

ブリーダーの家に着くと、両親だと思われる2匹の犬が出迎えてくれ、その奥のケージの中に一匹ポツンと子犬がいた。不安そうな顔をしたその子犬は、ずいぶん前に飼い主が決まっていたのだけど、引き渡す約束の日に、その飼い主は現れなかったという。
2週間ほど待ったけど連絡が取れず、子犬がこれ以上大きくなる前に売ろうとしたところを私たちが見つけたというわけだ。

「この子、寂しいみたい。かわいそうだから飼ってもいい?」

娘がそう言うので、連れて帰ることにした。私もなんだかその子犬が可哀想になってしまって。夫も同じことを思ったに違いない。

生まれてから3ヶ月間、ずっと一緒に遊んで育った兄弟たちが突然みんないなくなって、自分だけが取り残されてしまっただなんて。
どんなに寂しかっただろう。

こうして我が家に子犬がやってきた。

生後半年頃
性格も見た目もジャックラッセルの血が強い


あれから三年。
この愛犬の存在にどれだけ救われたことでしょう。

昨年あんなことがあって(夫が突然死)、喪失感でうつ状態になった日も、

「あぁ、散歩に行かなくちゃ」

のろのろとベッドから起き出し、準備をして散歩に行く。
外に出て歩き始めると、不思議と気が晴れてくる。
1時間も歩くと、悩みも不安もどうでもよくなってくる。

毎日がその繰り返しだった。

お気に入りのカフェ
クリスマスも一緒にお祝い


どうやら犬には癒し効果があるらしい。

愛犬と触れ合ったとき、脳内に「オキシトシン」という幸せホルモンが発生し、精神の安定やストレスを軽減させ、心身をリラックスさせる効果があるそうだ。
同じく幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」は、日光を浴びることで分泌される。朝、太陽の光を浴びながら愛犬と散歩することで、知らず知らずのうちに幸せホルモンがでていたのだろう。

しかし、自分にとって、犬がこんなにもかけがえのない存在になるとは思わなかった。

もしかしたら、夫がこの子を残してくれたのかな。
私が悲しみすぎなくてすむように。悲しみを早く癒せるようにって。




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