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「おちょやん」ラストは力強い演出で凄みを増す。そして杉咲花は確実に成長した

BK制作の朝ドラ「おちょやん」が今日、最終回を迎えた。最後は、久しぶりに「鶴亀家庭劇」に出演する主人公、千代の舞台が中心。その舞台を観に、ゆかりの人が集まっている風景。そして、亡くなった親族たちも最後に駆けつけ、ここに、私も知っている浪花千栄子が誕生した感じの結末だった。

そう、私が知ってる浪花千栄子は、映画やテレビで関西弁を巧みに操る女優さんだった。そして、「巨人の星」とか観ていると、オロナイン軟膏のCMで出てくるお母さんというイメージ。その私の知っている彼女が、苦労して、女優として名が売れるまでの話が、今回の朝ドラだった。

最初から、貧乏な家で、ダメな父親に振り回され、自分で家を出ていく羽目になり、そのまま、出会った人に恵まれながらも、いろんな苦難を耐えていきた女の半生が、力強く描かれていた。

ただ、ドラマとしての派手さはなく、朝ドラにしたら、地味目な話だったので、途中で脱落した人も結構多いのかもしれない。私も、戦争の前までは、あまり乗り気で観ていなかった感じだ。

だが、戦後の劇団復興、そして離婚の顛末、NHKラジオドラマへの出演という流れは、なかなか見応えがあった。そう、戦前の千代と戦後の千代は、演技もワンランク上がった感じなのに驚かされた。最後の方は、浪花千栄子が蘇った感じの台詞回し。娘役の毎田暖々との会話のほっこり感も、母親役がどうにいっている感じだった。そして、ラジオドラマでの存在感も、副座長的な位置の雰囲気を香りを見事にはなっている感じだった。そう、杉咲花は、多分、思った以上にこのドラマの中で成長していた。

昨今の朝ドラは、ある程度キャリアのある人が主役になるので、初々しさは少なくなったが、キャリアのある人が、もうワンランク上に行くための道程としては、かなり大きな意味合いあるものになってきたのかもしれない。戸田恵梨香などにもそれを感じた。

一昨日の、千代が「鶴亀家庭劇」への出演を受けるシーンは、朝のテレビドラマとは思えない、大きな間をこさえたりして、緊張感が半端なかった。そう、このドラマの中でそういうシーンは多かったし、役者さんたちが脚本へのはいりこんでるような感じもよくわかった。振り返れば、この作品は朝ドラとして傑作の一つとなったと私は思う。ただ、一般の評価はなかなかもらえない題材と思われるだけに、後に語り継がれるような流れになるのか?

後は、杉咲花が、もう一つ上の主役をはれる女優さんになることを期待するばかりだ。

相手役の今、引っ張りだこの成田凌も、一つ違う毛色の役ができた感じではないか?これから、まだまだ伸び盛り。こちらも注目は止まらない。

あと、子役の毎田暖々は、千代の威勢のいい子供役と、どちらかといえば物静かな養女の二役を、見事に演じわけ、その表情の多面的な印象は、今後もドラマで活躍していくんだろうな?と強く思わせた。

あと、印象的だったのは、熊田役の西川忠志。みんなの気持ちを代弁するような、心のこもった演技が印象的だった。これから、もっと役者として活躍していただきたい。

そして、ラストは舞台に向けたみんなの歓声が印象的。今、コロナ禍でこういう舞台ができない時代に、エンタメの未来への希望をつなぐ応援的なものを感じた。そして、千代の笑顔で終わるBK的な演出。楽しませていただきました。半年間ありがとうございました。

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昨年のコロナ対応で、改編がズレているNHKの朝ドラ。今回は23週で終わりである。通常なら正月の一週が休みとなり25週のはずだが、2週分がカットされた感じ。この前の「エール」も同じように2週減だったと思う。しばらくはこの状況で、通常に戻す感じなのだろう。そういう意味では、全体がちょっと薄めになったり早足になってしまうのは、仕方ないところか?

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