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「ファイトソング(第3話)」初デート、キスに至る「キュン」の造形化

このドラマ、恋を知らなかった二人が「キュン」という感覚を知り戸惑っていく話なのだろうと、この3回目で理解した。恋愛ドラマ、特に若い恋愛ドラマの出来は、確かに言葉にならない「キュン」をいかに形として具現化できるかという部分にあることは確かだ。

最近、私は世の中の波動論にとても興味がある。「恋愛」など恋人同士の波動がシンクロしない限り発生しないわけで、そこには何か理論的なものがあるのではないかと思ったりする。最近研究が活発な量子力学なら、そう恋愛が起こる波動を数値で表せるのかもしれないとさえ思ったりする。そんなことができたら、AIに恋する日も遠くはないのかもしれない。そう、恋愛とはいまだに言葉に落としきれない心理なのである。古くから哲学者や文学者が「恋愛論」なるものを書いているが、それは哲学的に心の変化を論理的に書いたものである。その本質は、誰もが経験するも言葉として形成できない。そう考えていくと人間とは神秘である。

脚本家岡田惠和は、多くの恋愛ドラマを書いてきた人である。でも、今更ながら恋愛の「キュン」にこだわったりする。そのくらい、人が人を好きになることを書くというのは難しいし面白いのだろう。

今回は、契約恋愛を引き受けての食事からの初デート。あの、場違いな店でそれなりに笑顔が出て、そして中華街のデートはなかなか普通に恋人っぽくなってくる。最後の夕陽のバックのキスに至る感じの時間をなかなかうまく纏めていた。これは、脚本家の思い通りなのか?もはや、ここまででその想定を超えているのか?その辺りは気になる。

そして、清原に恋する菊池風磨は、彼女のデートを追うことになる。そして、菊池に少なからず惚れている感じの藤原さくらが良いアクセントになっている。こういう部分と本題のバランス感みたいなものはとてもうまいと思う。

そして、清原は、再度、聴覚障害を持つ石田ひかりのところに仕事に行き、聞こえた頃の記憶を聞く。ここで、「思い出をしっかり作らなくては」という思いが生まれてくるのだろう。そこから繋がるデートの中に、清原も徐々に自分の心の新しい感覚の解放を感じていくわけである。そこに出てくるオレンジのコートはとても清原の気持ちを表しているようで新鮮だった。そう、ここから本当の恋愛モードみたいなものが始まるわけだ。

「キュン」という感じは、瞬間ではやってこない。ただ、二人の妙な心のシンクロがそこに繋がるものだろうと私は思う。でも、岡田脚本は、それを無理にでも具現化させてやるみたいな感じはありますよね。ラスト、ありがちなキスシーンでしたが、なかなか綺麗な今回のまとめでした。

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