見出し画像

「ゴールデンカムイ」ダイナミックな映像の中に実写化の意味を感じることと、今後への期待

北海道を舞台にした映画として、ここまでダイナミックに作られた映画もなかっただろう。デジタルで動物が造形できる今、自然との闘いという部分は印象深く描くことができるし、その地の温度感もうまく出せていたと思う。漫画の実写化という観点から見たら、100点に近いと思う。

アニメは見ているので話の流れはわかっていたのだが、予想以上の迫力だった。作り手の熱量も感じたし、大河ドラマの初動作としては上出来だろう。しかし、「ゴジラ−1.0」でもそう思ったが、デジタルで映画を作る時代になって、画面からくる映画的興奮は、ハリウッドに引けを取らないものになってきていることは確かだ。この作品も、ワールドマーケットを狙ってるような気がするが、「北海道」「アイヌ」「新撰組」というようなフラグが外人に理解してもらえるかは微妙なところ。ただ、北海道の歴史、そして北方領土のことまで理解してもらえるなら意味がある。また、日本国内にとっても、アイヌ民族に対する差別みたいなものを理解してもらえるきっかけになってほしい作品であったりもする。

とはいえ、平日のシネコンの大箱は結構スカスカだった。つまり、今週の興行一位になったものの、きている客は、原作やアニメファンの若年層であり、あまり高齢者の客は引き込んでいないということだろう。その辺まで客として引き込んでいかないと世界マーケットは難しいと思われるし、これから何作でまとめ上げる予定なのかは知らないが、その辺りも先が見えにくくなる気もする。

だが、私的にはなかなか映画館で見て興奮したと言っていい。内容は、アニメ一期の半ばまで、つまり金塊を追う者たちがそれなりに登場し、お互いにその存在がわかっていくところまで。そう、ボクシングで言えば、ジャブを出して相手の力を見るような段階。

そこで、しっかりと主人公の「不死身の杉元」と「アシリパ」のキャラクターを明確にし、彼らの時代に生きる熱さみたいなものを紹介した一作目だったと言っていい。

杉元役の山﨑賢人は、原作からすると顔が柔らかすぎるかとも思えたが、思った以上に役を体現している感じだった。この先の出来次第で彼の代表作にはなりうる。そして、アシリパ役の山田杏奈は、それを聞いた時からぴったりだとは思ったが、予想を裏切らない芝居をしていた。彼女、テレビの現代劇では顔の幼さに違和感を感じたりした私だが、この役はその幼さが生きるし、その上でちゃんとアクションシーンのキレが良い彼女は適役だと思う。そして、二人のコンビネーションも悪くない。

あと目立ったのは脱獄王役の矢本悠馬。原作とは違う雰囲気ではあるものの、自分の役として上手く取り込んでいる。玉木宏もその声と共になかなか相手としても不足がない感じだし、他の登場人物たちも、気合が入っていて、見ていて心地よかった。

で、この話の妙は、日露戦争の後に、新撰組、土方歳三、永倉新八がまだ生き残っていることである。この設定が、漫画原作らしく面白いと私は思っている。その役を舘ひろしにしたのもまた良いところである。しかし、石原プロ解散後に思うが、裕次郎はこんな大河ドラマを作りたかったのだろうね。だが、彼はデジタル時代の映画など夢にも想定していなかっただろうが・・。

映画的には、先にも書いたが、CGによる獣の造形と格闘シーンがアニメのそれに比べ数倍迫力があったし、ラスト近くのソリでのアクションシーンも映画的迫力満点で心地よかった。そういう部分を見にいくだけでも価値がある映画になっている。

脚本は、黒岩勉。「キングダム」シリーズの脚本も担当しているところからの白羽の矢というところか?映画にするためにいらない部分は捨てながら、上手くストーリーを繋いでると思う。昨年、今頃公開された「TOKYO MER」でも思ったが、彼、どこまでCG表現ができると思って、これを書いているのだろうか?かなりわかっていて、脚本としてこれが成立するとして提示してると思うのだが、その辺りはかなり気になる。

監督の久保茂昭は、黒岩と同世代の映像作家なわけだが、ミュージックビデオを多く撮ってきた人なのですね。そういう意味ではリズム感のいい映画だったと言っていいし、役者とのコミュニケーションも上手く取れているのではないか、ここから、これがどんな作品に化けていくのかは楽しみ。

ラストクレジットのところで、この先もある程度撮影されていることがわかるが、続きはいつ出るのでしょうか?まあ、今、ちょうど冬だし、撮影も続行中なのでしょうね。さらなる良きシリーズになっていくことを望みます。

本当に、正月なのに興業はハリウッド映画の姿が目立つことなく、日本映画、それも東宝が突っ走ってる感じだが、興業的にもこの作品のように金塊を求める欲望が絡むような抗争が見たいですよね。映画ファン的にはちょっと、物足りない2024年の初動であったりもします。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?