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「マイ・ダディ」ムロツヨシの喜怒哀楽も相まって、爽やかで聖らかな映画に仕上がった佳作

見終わった後の、爽やかと聖らかな空気感は心地よかった。特に珍しい話ではない。このような白血病の話はいままでも多く映画化されてきた。でも、登場人物の笑顔が印象的であり、とても前向きな映画だ。舞台が教会であり、主人公が牧師のせいもあるが、何かそこに神が宿っているような映画でもあった。そう、後味の良い映画は褒めるしか無いのだ。

そして、ムロツヨシ。ここにきてテレビでも映画でも、結構、重宝されるキャラクターとして確固たる地位を得ようとしている。だからこその初主演作品なのだろう。そして、ここでの牧師という役はなかなか似合っている。彼に宗教を感じるわけではないが、何か相談すれば聞いてくれそうな感じがそう思わせるのであろう。

映画は、過去と現在を行き来しながら、話を成立させていく。最初の方、それがわかりにくい感じもする。つなぎの仕方でもう少しわかりやすくできるのでは?でも、この映画の構造は間違っていない。過去に知らなかった事実が主人公を惑わせるという話の本質は、この手法がうまく高めている感じではあった。

愛した妻が事故で亡くなって、娘を一人でアルバイトもしながら育てる主人公。そして、その娘が白血病で倒れ、DNAから娘が自分の娘でないことを知らされる。娘の出産にも立ち会った主人公は動転するが、愛する娘を助けるために、骨髄移植のドナーを探すために、娘の本当の父親を探すという話。

そんな中で、主人公が妻と出会う話はなかなか微笑ましい。男の浮気で家を出て教会に逃げ込んだ妻が、主人公と一緒にイースターの準備をする流れ。とても綺麗だし、ムロツヨシと妻役の奈緒の笑顔に救われる。そして、これを見る限り、ムロに妻への怒りなどないだろうと思わせる。

私は、この映画、予告編をみて、見ようと思ったのだが、そこでは、奈緒は、ムロの娘だと思っていた。歳の差もありますしね。そうしたら、この二人が夫婦。ムロさん、テレビの「大恋愛」での戸田恵梨香とのコンビもそうでしたが、なかなか若い美しいお嫁さんが似合うタイプなのでしょうかね?まあ、優しい感じがいいのでしょうね。そして、意外に彼の声は女性的な感じがします。

映画全体が、なかなか上手いまとまり方をして、ムロツヨシが子供を助けるために必死になる姿はなかなか引き込まれました。そして、本当の父親である毎熊克哉と、彼の食堂で対峙するシーンは、とても良い演技でした。そう、喜怒哀楽の表情が実にわかりやすくていいのでしょうね。

娘役の中田乃愛も印象的。これから、色々使われていく女優さんな気がします。(東宝シンデレラ出身なら最近は間違いない感じですね)そして、妻役の奈緒は、亡くなった妻という大役を、実に笑顔で幸せそうに演じている。この人も、昨年の「みをつくし料理帖」の花魁役から、とても伸び代高くなっている感じがします。彼女の笑顔でこちらもニコッとできる感じがいいですな。

また、探偵役の小栗旬、ホームレス役の光石研も、なかなか良き助演姿で、ムロツヨシを盛り上げている感じがとても良かったです。なんか、脇役のあり方が、説明的でなくさらりと印象的に出てきて、外国映画的なセンスを感じました。

先に書いたように、話としたら凡庸な話なのですが、ムロツヨシの存在感もあり、映画全体が、本当に聖らかにまとまっている感じでしたね。ちょっと、心折れた時に見ると良い、ハートフルな映画に仕上がっておりました。

お客さんもそこそこ入っていたしね。ムロさんの集客力?


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