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「ヘルドッグス」新時代のハードボイルドアクションの可能性を考える

ネットでの評判もそこそこなので期待して観に行ったが、予想以上にアクションシーンに興奮する。なかなかの秀作。原田眞人監督、昨年公開の「燃えよ剣」と同じ岡田准一主演映画だが、やはり時代劇より、現代劇の方がシャープな感じの仕上がり。あまり考えることなく好き勝手にできるからだろう。映像に岡田の俳優としての主張がすごく感じられた。

深町秋生の原作は大藪春彦賞の候補になったということもあり、読んではいないがその概観はかなり硬質なものだと思う。それを原田眞人監督が見事に映像として昇華させたという感じの作品。昨今の日本のアクション映画としては出色のデキと言っていいだろう。上映時間137分は少し冗長な感じがしないでもないが、映画館でこれだけ男くさいものを観たのは久しぶりの感じがする。

話は、警察官をやっていた岡田が、自分のミスで殺してしまった人の復讐をするために流れていたところを、警察に拾われ、ヤクザの潜入捜査官として雇われるという話。つまり、ヤクザの抗争の中に警官の犬が紛れているという話だ。小林旭なんかがよくやっていたものを現代風に凄惨にバージョンアップした感じだ。女があまり強調されずに男だらけの空気感になっているところは、東映っぽい感じでもある。東映配給ですものね。これをハードボイルドと言っていいのかは色々意見が出るところかもしれないが、ある意味、話はシンプルな中での馬鹿騒ぎ。余計な視点はいらない的な演出は好感が持てた。ただ、アクションを派手にするのに効果音にかなりこだわってる割には、役者のセリフが聞きづらいこと甚だしい。まあ、話の細かいところはどうでもいいという演出なのかもしれないが、音のない部分も聞きづらいとこが多いので、その辺りの編集しなかったのか?この辺りがちゃんとすると傑作という印を押しても良いのですけどもね・・・。

とにかく、まず岡田准一は、今だに進化し続けている感じ。身体の鍛え方も半端ないが、役に入り込む感じ、そしてしっかりアクションを型にはめてくる感じは、男が惚れる俳優になってきている。これで、もう少しタッパがあればいうことないというところだろうが、この動きをコントロールするには、ちょうどいい体型なのかもしれない。バディ役の坂口健太郎も、岡田につられる感じの演技。もう少しイカれた感じが欲しい気もしたが、まあ及第点だろう。

そして、昨今の日本のアクションに足らないのは、悪役である。往年の面々は皆鬼籍に入って言って、もう一つその辺りがピンと来なくなっている日本映画界で、まだあまり手の垢がついていない役者たちも多く取り揃え、なかなか面白かった。ここから、多くの顔が前に出てくるのだろうという感じ。

まず、トップ役のMIYAVI 。このミュージシャンを私は全く知らなかったが、これだけ美形の顔でアクションがしっかりこなせるのはなかなかの映画俳優向きと言ったところ。

そして、その秘書役の吉原光夫。朝ドラ「エール」で注目されるも、やはり舞台の人らしくあまり映像出演はしなかったようだが、ここも、なかなかはまっていた。こういう顔の大人が少なくなってますものね。ちゃんとノドも聴かせてくれてますしね。

あと、女殺し屋で出てきた女優さんは誰?と思ったが、中島亜梨沙という人で、宝塚の娘役だったらしい。こういう役をこなすとは、なかなか有望株?そういえば、彼女がバトルしているバックで「インターナショナル」が歌われてるが、原田監督、古い話ですが「バウンス ko GALS」で役所広司が女子高生と一緒にこれ歌うシーンありましたよね。好きなんですかね?と、考えると原田監督も、もう73歳であり、そういう世代ではあるわけですよね。

そう、こういうエグいアクションをもっと若い監督に撮っていただきたいというのが私の本音なのだ。最近の若手有望株は、なかなかこういうものに手を出さないのと、こういう金のかかるものを若手に任せないというのが日本映画のダメなところなんでしょうな。

全体的な映画のバランスは決してよくないし、松岡茉優の正体が最後に語られるが、あまり生きていない気がしますよね。それよりも大竹しのぶの殺人現場の方が心が躍ったりしました。まあ、観る人により、琴線が鳴る部分は違うでしょう。あと、酒向芳さん、最近使われ過ぎの感じがしますよね。先週観た「沈黙にパレード」にも出てましたよね。こういうのは、日本映画のダメなところ。

とにかくも、こういう映画が年に5本くらい撮られる日本映画であってほしいなと思ったりしました。


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