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「サマーフィルムにのって」大好物の文化祭映画であり、映画愛に満ちた佳作

この映画、予告編を見た時に、「見たいようでそうでもないかな?」という印象だった。二の足を踏んでいたが、ネット上の評判がそこそこ良い様なので見に行く。平日の昼間に結構な人。クチコミで入っている感じだ。

まず、私は時代劇というものにそれほど愛着はない。時代劇の好きな人が歴史を語るようなのには付き合いたくないし、基本、そういう輩とは相性が悪い。だから、この映画の主人公のような時代劇愛にはついていけない映画ファンだったりする。とはいえ、勝新太郎、市川雷蔵という役者が輝く大映時代劇は結構見ているし、「十三人の刺客」も三船敏郎の時代劇も普通の人に比べたらかなり観ているし、理解している。そんな世界を、現代に、それを熱愛する少女が主人公とは、なかなかコアすぎるだろうとは思った。

観た人があちこちで言っているように、「映像研には手を出すな」に似ているシチュエーションだったりする。ただ、金儲けは考えていないし、なんだか知らないが「時をかける少女」のようなタイムスリップものだったりする。結構、不思議なシチュエーションを最後には、しっかりとした青春映画に仕上げているのは見事であり、すごいちゃんとまとまっている。最後に未来人が未来に行くところで終わらせる様な事がないのも良いところ。あくまでも、「好き」を解決して終わる感じは良し!

その未来人の金子大地がハイネックのセーターを着ているのは、「時をかける少女」的なイメージなのだろうね。夏なのに、暑くないのか?そんなことは気にならないくらいに、主演の伊藤万理華の熱演が光る。映画が好き!時代劇が好き!作る事が好き!という感じで青春の夏休みを見事に演じている。そして、最後は好きな人と映画のラストシーンを撮るという流れ。よく考えれば青春映画の王道のような作りが気恥ずかしくもあるが気持ち良い。

他の出演者はほぼ無名の人々で固められ、大人が出てこないのがまたいいところ。キャストの締めに出てくる板橋駿谷は、朝ドラ「なつぞら」以来の高校生役。よく見ると、少し童顔なんですよね。彼をはじめとして時代劇スタッフはなかなか個性的なのもいい。

そして、カメラがスマフォなのに、録音はしっかりプロ機材を使っているのは面白いところ。映画部は一眼レフを使っているが、部のカメラは一台という事なのでしょうな。今の高校生はこのくらいの機材は使える環境を持っているところも多いでしょうね。いや、スマフォを使えばすぐ映画部ができてしまうのですよ!この映画や「映像研」などに感化されて映画を作る若者も増えてくると嬉しいですよね。とにかく、私、高校の文化祭が出てくる映画は大好物です。そういう意味では面白かったです。

これから文化祭という夏休みにこの映画が公開される意味は大きいわけですが、実際の高校の文化祭は現状ではこんなこともできないわけで、そう考えると高校生にとっては少し毒なのかもしれませんが、こんな感情の中で映画が撮りたいと思える映画に拍手でした。


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