バレンタインのせいにして？

「バレンタインのせいにして。」というロッテガーナチョコレートのcmを知っているだろうか。

そのcmは、バレンタインを口実に「その日ぐらいは周りの目など気にせず自分の好きに過ごそう」という内容のものだ。独特なリズム感のラップに乗せ淡々と訴えかけてくるのがなんとも癖になる。

私はそのcmに感化され「今年は全部バレンタインのせいにしてしまおう！」と決意し、バレンタインの日の朝を迎えた。

朝、なぜだろうか。
いつもよりも30分ほど遅く起きてしまった。
いつもならやってしまった…と嘆くところではあるが、今日はバレンタインだから仕方ないよなと自分に言い聞かせる。

バレンタインの日は決まって手作りのチョコレートを作り、家族に振る舞うことしている。感謝を込めて本来ならこだわって作るべきであるが、今回はネットで適当に見つけた数分で作れるお手軽で簡単なものにした。
よし、楽をしよう。
バレンタインなのだから。

その後、早速買い出しへに向かった。
しかしここでもやらかす。
何を思ったのか、使う分量のチョコレートを業務用の安くて溶けやすいものではなく、丁寧に包装されている板チョコにしてしまったのだ。
そのせいで材料費はぎょっとするほど高くつき、レジにてかなり驚いたのだが、それを悟られぬようにつとめて冷静なふりをして購入した。
…まあ今日はバレンタインなのだから良しとしよう。

肝心のチョコレート作りも、本来はキッチンで行うべき作業を今回はリビングで映画を鑑賞しながら行った。いつもと違う場所での作業は新鮮で思った以上に楽しい。

手順は簡単なので失敗することはないものの、完成したかなり雑な仕上がりとなった。
うーん、正直納得のいく出来栄えとは言えない。
反省癖のある私は、あの時こうしておけば…とすぐにひとり反省会を開きそうになったが、その気持ちをグッと堪えた。
そうだった、今日はバレンタインだった。

そもそも出来上がったチョコレートは家族で食べるだけのものであるし、見栄えなど気にする必要もない。
その上今日はバレンタインなのだ。
それだけでオールオッケーなのである。

バレンタインだからとお昼ご飯にハートの形をしたピザを食べた。
見た目が可愛らしい。
しかし、ピザは切り分けて食べるため、そのハートは一瞬にしてハートブレイクとなった。
これでは失恋になっ、、と言いかけてやめた。縁起でもないことは口にするべきではないからだ。

お昼ご飯を食べながらふとゴミ箱を見ると、先程使った板チョコの包装と銀紙がバラバラと捨てられている。
MEIJI…めいじ、、え、明治？？？
ロッテのチョコレートのcmに感化されたのに、あろうことか私は明治のチョコレートを買ってしまっていたのだ。ええ、そこはロッテの真っ赤なガーナでしょ？なにを明治なんじゃい！なんて思った。けれどバレンタインだから仕方ないか。

ひとまず冷蔵庫に冷やし固めているチョコレートが待ち遠しい。