法の下に生きる人間〈第86日〉

今月上旬の本シリーズ第81日から第85日までの間、遺言や相続について解説したが、今週は予告したとおり「親族」について触れることにしよう。

親族の法的定義について、私たちはどれだけ理解できているだろうか。

民法では、親族について、総則(「親族」の編の第1章)で次のように定義し、章の最後には「たすけ合わなければならない」と定めている。

実際のところ、(本心では)そこまでたすけ合っている世帯はほとんどないと思うが、そこは致し方ないだろう。

(親族の範囲) 
【第七百二十五条】
次に掲げる者は、親族とする。 
一    六親等内の血族 
二    配偶者 
三    三親等内の姻族 

(親等の計算) 
【第七百二十六条】
親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。 
2    傍系親族の親等を定めるには、その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による。 

(縁組による親族関係の発生) 
【第七百二十七条】
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。 

(離婚等による姻族関係の終了) 
【第七百二十八条】
姻族関係は、離婚によって終了する。 
2    夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。 

(離縁による親族関係の終了) 
【第七百二十九条】
養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。 

(親族間の扶け合い) 
【第七百三十条】
直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。

以上である。

たす(扶)け合いのことが書かれているところをよく読むと、「直系の血族」と「同居の親族」と書いてある。

「血族」というのは、血がつながっている関係者であるが、配偶者の親兄弟は「姻族」である。

第725条では、3親等以内の姻族が親族であると定められているから、配偶者の祖父母や義理の甥や姪までが親族になる。

ただ、血族ではないわけだから、同居していなければ、義理の父母や祖父母と扶け合う義務は、法律上はないわけである。

一般的に、配偶者は本人と同列なので「0親等」として扱われるが、本人の兄弟姉妹は「2親等」である。本人の親や子どもは「1親等」であるが、いくら仲の良い兄弟姉妹であっても、法律上は親や子どもより遠い存在になる。

兄弟姉妹は、本人の孫や祖父母と同じレベルになるのだが、なんだか寂しいものである。

最後に、姻族関係であるが、第728条のとおり、夫婦のどちらかが先に亡くなった場合、残された配偶者が姻族関係を終了させる意思表示をすれば、その関係終了が認められるのである。

ただ、その時点で子どもや孫がいる場合は、慎重な判断が必要であることは言うまでもないだろう。

明日は、婚姻について考えてみることにしよう。



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