唱歌の架け橋(第7回)
もう40年前になるが、ドリフターズ時代の志村けんが、「かーらーすー、なぜ鳴くのー、カラスの勝手でしょー」と替え歌を歌って、この歌が注目された。
そう、今日紹介するのは『七つの子』という歌である。
志村けんが、替え歌にした部分は、本当は「カラスの勝手でしょー」ではなく、「カラスはやーまーにー」である。
この歌い出しだけの替え歌は、「8時だョ!全員集合」を見ていた子どもたちの間で流行ったのだが、私もちょうどその子どもたち世代だった。
ドリフの番組では、志村けんがコロナで亡くなる前にも、この替え歌が何度か歌われていたので、平成世代の若い人も聴いたことはあるだろう。
では、この歌の全歌詞をみてみよう。歌い出ししか知らない人のほうが多いと思うので、この機会に紹介する。
カラス なぜなくの
カラスは山に
かわいい 七つの 子があるからよ
かわいいかわいいと カラスはなくの
かわいいかわいいと なくんだよ
山の 古巣(ふるす)へ 行って見てごらん
まーるい 眼をした いーいー子だよ
以上である。
歌詞を見て分かるとおり、子どもの質問に大人が答えるパターンが2回繰り返されて、最後は、歌い出しとまったく同じメロディーで「山の古巣へ行ってみたら分かるよ」と大人が促す感じで終わっている。
歌い出しと最後のメロディーは、
「シーラソラー/シソミソレー」→「ミレシレミソラー」→「シードレシ/レーミレシソ」→「ラーシソミレソー」
となっているが、低音のシから高音のミまで高低差のギャップを生かした伸びやかな旋律が感動的である。
また、中間部分の「かわいいかわいいとカラスは鳴くの?」という子どもの問いかけに対して、同じ言葉を重ねて「かわいいかわいいとなくんだよ」という大人の返しがあるが、ここの区別がメロディーでも引き立っている。
子どもの問いかけの「かわいい、かわいいと」は、「ラララ、ラーララシ」という高音なのだが、大人の場合は「レレレ、ソーソソラ」という低音から上がっていく感じになっている。
ついでに、「カラスはなくの」の部分は「ドシラララシミ」であり、「なくんだよ」の部分は「シドミソラ」である。
この歌詞は、知る人ぞ知る野口雨情が書いたものであるが、「七つの子」がどうして出てくるのかは不明である。
カラスが7才でもなく、7羽の子ガラスでもない。
そして、作曲したのは、本居長世(もとおり・ながよ)である。
もしやと思った人は鋭い。
本居長世の祖父は、本居宣長の義理のひ孫であった。そして、本居宣長と同じく国学者であった。
本居家は代々国学者だったのだが、本居長世はその道を歩まず、東京音楽学校を卒業して作曲家になったのである。
本居長世は、生後1年で母親と死別して祖父に育てられた。
そして、本居長世が36才、野口雨情が39才だった1921年(=大正10年)に、この歌は生まれたのである。
もし本居長世が国学者になっていたら、この曲は生まれなかっただろう。
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