ギュスターヴ・ドレの線は木版!
よく行く近くの図書館には「今月の新刊」というコーナーがあります。公営の図書館なので専門書から小説、新書、文庫さまざまなジャンルの本が並んでいて、いつも楽しみに見ています。
その中に先日見つけた『ギュスターヴ・ドレとの対話』は、とても魅力的な本で早速借りたのですが、やっぱり手元に欲しいと思って、思わずamazonで注文してしまいました。
ドレの絵の中でも、一番好きなのが「長くつをはいた猫」。
この猫のハッタリ感がたまりません。
ドレはたくさん仕事をした人で、いろんな本の挿絵を描いていますが、その中からいくつかをピックアップして、その絵にまつわる「情報」が新鮮な視点で紹介されています。
ギュスターヴ・ドレは1832年生まれ。フランスのアルザス地方の出身。
ここはライン川の流域で、ドイツとスイスの国境に位置しています。
ライン川が国境になっているんですね。
ライン川はスイスから北上して北海へ流れてゆきます。
ストラスブールはアルザス地方の州都で、アルザス語で「街道の街」という名。古来より交通の要衝として栄えていて、ライン川にフランス最大の河川港をもっています。ドレは、このストラスブールのニュエ・ブルー(青い雲)通りに生まれました。
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ドレの絵は、ダンテの『神曲』の挿絵や、『長靴をはいた猫』などのペローの昔話の挿絵などで馴染みがありますが、これが木版で描かれていることを、この本で初めて知りました。
ヨーロッパで誕生した「木口木版」という技法だそうで、凸版の活字と一緒に印刷ができることから、本の挿絵として、ドレの生きた19世紀に大いに発展したそうです。
木に彫った。ということは、この版画の実際のサイズはどれくらいなのでしょう。
1861年に発刊された『神曲 地獄篇』 Dante Alighieri, The Inferno の挿絵が木口木版 235×193mm程度だそうなので、ちょうどA4サイズの本の挿絵にちょうどいいくらいのサイズです。
この『ギュスターヴ・ドレとの対話』の本はそれよりかは少し小さめですが、木口木版の線の緻密さを体感できます。
ドレの挿絵に惹かれて、すでに持っている『ペローの昔ばなし』は新書なので、ちょっとサイズが小さいんですね。
なので、この粉屋の息子の表情がよく見えません。
というか、あまりに猫の自信満々がすごくて、そばに「おぼれているふりをさせられている粉屋の息子」がいることに気がついていませんでした。
この『ギュスターヴ・ドレとの対話』の印刷ではこんな表情をしているんです。
「え」に「”」がつく「えぇーーー!(そんなこと言ってしまって大丈夫???)」というような顔。
この場面は「長靴をはいた猫」が、事前の根回しの後に一気に勝負をかけるところ。この猫のポーズ、そして表情を見るたびに「人生はなんとかなる」と思ってしまいます。
そして、もう一つ気がついたことが、猫の長靴に細かい線が何本も描かれていること。
日本の浮世絵も木版ですが、版画の浮世絵が何枚もの版木を組み合わせてカラー印刷を実現しているところを、ヨーロッパの版画は一色のみ。色の濃淡を線の太さ多さで実現させているのですね。
これは、鉛筆の線でデッサンするように線を彫っていくのでしょうか。
こうしてドレの技法を知ったのですが、さらに、文中にあったこのくだりが「私の買い」を決定づけました。
大きくしても線がぼやけたりしない
だなんて、これって、今の8Kよりも緻密だということですよね。
ああ、おおきくなったネコみてみたいです。
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