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忠臣蔵 外伝 『元禄兄弟』

時は江戸、
新六は、父母と兄の四人で暮らすも、その生活は苦しく、
幼き頃、里子に出された。

だが、養父母との折り合いが悪く、喧嘩を重ねては実家へ連れ戻された。
そのため、幾度も里親が変わった。

新六は、生まれながらにして、三日後が予知できる不思議な力を持っていた。
人前では使うなと、父から止められていたので、新六はそれを守った。


成長した新六は、能力を存分に使い、殿様の重臣にまで出世を成し遂げた。
ある時、敵の攻略を予言した新六は、見事に敵を討ち取り、主君より城を与えられた。


新六は、初めて持つ自分の城で、次々と妻を召し取り、15人の妻と35人の子供たちに囲まれて至福の時を過ごしていた。


だが、新六の幸福は長く続かなかった。
災いが起ころうとしていたのだ。


新六が、主君や家族のために、毎日、三日後を予知していたら、
兄の十次郎が訪れる事がわかった。


三日後、新六の元へ十次郎が訪れた。


兄とは疎遠になっていたが、折角来てくれたのだからと、
もてなす新六に、十次郎は、眠り薬の入った酒を飲ませてしまう。


新六は三日三晩眠り続けた。


やがて新六が目覚めた時、
主君の城が敵に攻め落とされ、主君は自害、新六の城も没収された。


敵将の参謀は、十次郎だった。

「命だけは助けてやる」
十次郎は新六に流刑を命じた。


新六の城に入った十次郎は、新六の妻たちを側女とし、
子供たちの殺害を企てた。


全てを予知していた新六は、役人を買収して、身代わりを立てると、
すぐに戻って来て、城へ火を放った。


城は炎上し、焼け落ちた。


ところが、焼け跡からは、妻や子たちの遺体は見つからなかった。
皆は、地下深くの穴道を通り、森の中へと逃げていたのだ。


「万一、城に火を放たれた時には、穴を通って逃げろ」と
新六に命じられていたのだ。


「皆、散り散りになれ!」


新六の言葉通り、皆は四方八方へと逃げて行った。
その後の行方は定かではない。


一方、十次郎は、城が焼け落ちる寸前に脱出していた。
十次郎の動きが手に取るようにわかる新六は、
十次郎を待ち構えていた。


新六に殺されると思った十次郎だったが、
意外にも新六は十次郎を許してくれたのだった。


十次郎が不思議に思っていると、
新六は静かにこう言った。


「帰るぞ、赤穂へ」

「一体何があった」

「これから起こるんだよ」

そう言って新六は、遠く江戸の方角を見つめた。


*この話は、史実に基づいたフィクションです。

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