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「鋼のメンタルトレーダー」なぜトレードし、トレードから何を得たいのか。

(タイトル画像は「みんなのフォトギャラリー」より写真を使わせていただきました。いつも美しい作品をありがとうございます)


スティーブ・ワード「鋼のメンタルトレーダー」
2022年初版 パンローリング

相場での勝ち方は人それぞれで、特定の型のトレーダーになる必要はないものの、心が防弾仕様になるよう鍛えることはすべてのトレーダーに有益です。そのための精神状態や生理状態を整えたり訓練したりする実践的かつ具体的方法が書かれている一冊。

筆者スティーブ・ワードによる、防弾仕様の基盤要素は下記の4つ。
・コミットメント
・コントロール
・挑戦
・自信

特にワードが重視しているのは「コミットメント」と「コントロール」。

防弾仕様のための「コミットメント」のために必要なことは、次の3つを常に頭に置くこと。
・なぜトレードし、トレードから何を得たいのか。
・どのようなトレーダーになりたいのか。
・勝率を最大にするためにとるべき具体的なステップを明確に理解する。そのことと自分の目的と価値観と目標はどのように関連しているのか。

「コントロール」について、ワードはセネカやエピクトテスら、ストア哲学を軸に置いています。ストア哲学の中核はアレテ(美徳)に従って生きるということ。高い価値観に沿った行動をすることです。そして、自分の努力や振る舞いだけでは如何ともできないことがあると理解すること。

しかし、ストア派の言葉は株屋にはよく効きますね。

賢者は、自分の予想に反したことが起こりうること、そしてすべてが、自分が望み計画したとおりになることはないと、理解している。彼はむしろ、何かが自分の計画を妨げる可能性があると考えている。

セネカ

人生で最も重要なことは、物事を見極めること、見分けること。そうすれば、どれが自分がコントロールできないことで、どれがコントロールできることかが明確にわかる。それでは、どこで善悪を見分けるのだろうか。それには、自分ではコントロールできないことではなく、自分でコントロールできることを探せばよい。

エピクテトス

監修の長岡半太郎氏の前書きも良い。

日本ではメンタルマネジメントは「逆境の際に精神的苦痛に一人で耐えること」程度にしか認識されていないし、その問題を科学的に取り扱う、あるいはコーチングのような仕組みを導入するといった試みはほとんど聞かれない。将来の経済不安を広く煽り立てる一方で、「投資は自己責任」という言葉に代表されるように当事者を冷たく突き放して、その活動を支援しより良い結果を社会や組織全体で実現するためのエコシステムの構築には何のコミットもしないというのは欺瞞であり、関係する業界は恥ずかしく思うべきだろう。

長岡半太郎


これを書いている現時点での私の問題は「傲慢」「強欲」だと思います。利食いのタイミングを先延ばして、利益を財布にねじ込む好機を結局うまく取れていない。利が乗ってくると、調子も乗ってきてしまって、好都合な妄想が頭を走っていくのが問題。知足でいくほうが結局は利をとれるし、株屋業と矛盾するようだけど、やはり金銭の多寡ではなくて価値観と過程を重視しないと利益を出せないんだってことを、もう何度も思い知らされます。本当に、相場というのは人を謙虚にさせてくれる最高のメカニズムです(汗)。

今年度の決算も出てまいりますが、あらためて傲慢と強欲を克服していきたいと思います。

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