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【読書記録】 「重力ピエロ」 伊坂幸太郎

 私は、高校生の頃から、伊坂幸太郎の小説のファンだ。文体が合うのか、読むスピードも他の小説と比べると速い。

 また、出てくる常人離れしたキャラクター、テンポの良い会話、他の小説に登場したであろう人物など、読者を惹きつける要素がたくさんある。しっかりと伏線も回収してくれる。読みながら、これは何の伏線だ?と考えてしまう。一つ一つの情景描写、会話、回想全てが小説を紐解くメンターとして機能している。それが、大事な言葉こそ、何度も何度も登場してくる。登場人物一人一人のこだわりも物語の方向性を左右してくる。

 

 「重力ピエロ」は、泉水の行動や心情が細やかに表現されているところだ。テンポよく話は、進んでいくのだが、泉水の感情表現や泉水の見た情景に関してはとても描写が細かい。

 作中に登場する夏子さんの存在も面白い。彼女は、家族に真実を運んできた。彼女の一言が、泉水が目を背けたい真実へと辿り着かせた。

 お父さんに兄弟2人で会いに行き、事件のことについて尋ねるシーンもとても面白かった。お父さんの厳格でありながらも、お茶目なところがよく表現されていた。

「重力ピエロ」は、なんと言ってもこの一文だ。

春が二階から落ちてきた。

 何と綺麗な書き出し、季節描写かと思い、すぐさま購入してしまった。読み進めると、すぐに違う「春」だとわかるのだが。素敵な一文でした。

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