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【山雅】vs長野|J3第10節【レビュー】②

イングランド・プレミアリーグが好きで全試合観ている戦術オタクによる、松本山雅FCのレビュー。



2023.5.13
J3 第10節

AC長野パルセイロ
×
松本山雅FC



※コメントは以下より引用しています。


~スタメン~

長野(橙):5-3-2
山雅(緑):4-2-3-1


~はじめに~

前回のレビューの続きになります。


今回は攻撃面について振り返る。


~想定と違う~

前回のダービーでも今回でも、長野は守備のとき5-1-3-1のような形を取っていた。

その長野のプレスの形について見ていきたい。


想定していた形

前回のダービーでは、長野がプレスをかける際、相手IHが山雅のCBに、相手WBが山雅のSBに寄せてくる形が多かった。

相手IHが山雅CBへ、相手WBが山雅SBへ。

おそらく、山雅側は今回もこのプレスを想定していたのだろう。
そして、相手WBが出てきた時の、その背後のスペースを狙いどころにしていたのではないかと思う。

WBの背後にスペースができる。

実際、この形でプレスをかけてきた時は、スムーズにそのスペースへ縦パスが入っていた。

例えば、0:52のシーン。

IH佐藤がCB常田へ、WB船橋がSB山本へ寄せる。
船橋の背後のスペースで菊井がパスを受ける。

WBの背後で菊井が受ける。

菊井が右CB池ヶ谷を釣り出し、その背後に鈴木が走り込む。

鈴木がCB池ヶ谷の背後へ。
山本も菊井の横で受けようとする。

菊井から鈴木へのパスはずれてしまって通らなかったが、狙い通りにボールを運べたシーンだったのではないか。


これまでの試合を観てきた限りでは、山雅はサイドの裏のスペースを突く攻撃以外はうまくできないのだが、それを相手がやらせてくれる場面ではある程度前進することができていた。


実際の形

しかし、大半の場合において、長野は想定していたプレスをかけてはこなかった。

CB常田・野々村には、FW進と近藤が寄せ、SB山本・橋内に対してはIH佐藤・三田が寄せるという形がほとんどだった。

長野のプレスが想定と違っていた。

相手WBがSBまで出てきてくれる形は非常に少なかった。

「相手のことを分析してやろうとしていたことが、想定したことと違いました」と小松が言っていたのは、このことなのではないかと思う。

それでもなんとか繋ごうとビルドアップを試みるが、効果的に繋げたシーンはほとんどなかった。


~鈴木は良いけど良くない~

試合を観ていてもどかしさを感じたのが、鈴木のプレーだった。

鈴木はこの試合、良いポジショニングでパスを引き出すことが何度もあった。

しかし、パスを受けたからといって、そこから何かを生み出せるほどの技術やアイデアは、残念ながら鈴木にはない。
(周りのサポートもイマイチではあったが)

だから、パスを受けてもすぐ失ったり、あるいは近くの味方にただボールを返すだけになってしまっていた。

例えば、5:40のシーン。

鈴木がスペースでパスを受ける。

鈴木がパスを引き出す。

余裕がある状況でパスを受けたのだから、ターンして運んだり、逆サイドに展開したりといったプレーが見たかったが、実際は近くにいる橋内にボールを渡すだけであった。

ターンできず、橋内にパス。


パスを受けるまでは良いが、パスを受けてからは良くない。
トップ下としてプレーするなら、鈴木のプレーは少し物足りない。

ちなみに、國分はこの試合、榎本との交代でSHとしてプレーしていたが、SHではなくトップ下でプレーしていたら、もう少しチャンスが生まれていたかもしれない。


~前回と変わらず~

前回のダービーのレビューで、相手のボランチの両脇を狙うこと・ロングボールを積極的に蹴ることが有効ではないかという話をした。

前回も、そして今回も、そのような狙いを持っているようには見えなかった。


ボランチ宮阪の両脇

長野は5-1-3-1の形なので、ボランチ宮阪の両脇にはスペースがある。
だから本来ならそこをもっと使っていきたい。

例えば、0:59のシーン。

宮阪の脇にはスペースがある。

宮阪の横にスペースがある。

小松には、下りてきてこのスペースでパスを受けてほしかった。

小松が下りてくれば、スペースでパスを受けることができた。

そうすれば、きっと大きなチャンスになっていたはずだ。

逆サイドに展開して、チャンスになっていたかもしれない。

以前の小松であれば、下りて受ける動きがもう少し見られていたはずだが、最近はほとんど見かけなくなってしまった。

小松には、ハリー・ケイン(トッテナム・ホットスパー)のプレーを見ることを勧めたい。
身体も強いが、下りてきてパスを受けるのも本当に上手なCFである。


ロングボール

後半は、前半と比べると少しロングボールを蹴る回数が増えていたかもしれない。

ただ、セカンドボールを拾おうとする意識は低いように感じられた。
一人しかセカンドボールを狙っていないことが多かった。

例えば、48:21のシーン。

山本が右サイドへロングボールを蹴るが、セカンドボールを狙っているのは國分だけだった。

國分しかセカンドボールを狙っていない。

セカンドボールを狙うという意識があるなら、パウリーニョや橋内がもう少しボールの近くに寄ってきてもいいはずである。

パウリーニョと橋内、最低でもどちらか1人はセカンドボールを狙ってほしい。

ロングボールを蹴るなら、セカンドボールを狙う人が二人以上ほしい。
それができているときは、しっかり回収できていることもあった。

ただ全体としては、ビルドアップをするのかロングボールを蹴るのかというのが中途半端で、結局どちらもそれほど機能していなかった。


~試合結果~

AC長野パルセイロ 2
32' 秋山  79' 山本
松本山雅FC    1
90+3' 小松


~主導権を握れない理由(攻撃編)~

主導権を握るサッカーを志向しているにも関わらず、それができないのは、様々な理由がある。

まず低い位置でのビルドアップが全然うまくいかないというのも大きな問題なのだが、そこではなく、今回はすぐにでも改善できそうなポイントについて紹介したい。

それが、パウリーニョのポジショニングである。

例えば、33:57のシーン。

山雅側が敵陣に押し込んでいる状況である。
このとき、パウリーニョはFW進のすぐ近くに立ち位置を取っている。

パウリーニョの立ち位置

このポジショニングのせいで、チームの攻撃が機能不全になっている。

このシーンでは、中央に大きなスペースが空いており、そこを使うべきなのだが、パウリーニョはそこに立ってくれない。

大きなスペースを使えない。

だから、このシーンでは結局ボールをCBに下げるしか選択肢がなかった。

しかし、もしパウリーニョが良い立ち位置を取っていたら、大きなチャンスになっていたはずだ。

パウリーニョがスペースで受けてくれていれば…


パウリーニョが良い立ち位置を取ることによるメリットがもう一つある。

それが、即時奪回に繋がる、という点である。

同じシーンで、例えば下図のようにボールが奪われたとする。

ボールが奪われた場合。

このとき、パウリーニョが良い立ち位置を取っていれば、すぐに寄せて、ボールを奪い返すことができる。

すぐに奪い返すことができる。

そうすれば、ショートカウンターに繋がり、むしろ大チャンスである。

しかし、パウリーニョが相手FWのそばにポジションを取ってしまっている場合、そうはならない。

遅れて遠くからパウリーニョが突っ込んできても、相手はその勢いを利用して簡単にかわして入れ替わることができる。

遠くからでは寄せが間に合わない。

そのせいで、むしろ大ピンチになってしまう。


一応、パウリーニョとしては、相手FWを常に監視するという仕事をしているつもりなのかもしれない。

しかし、FW1人に対して、パウリーニョ・常田・野々村の3人がかりで見るというのは、流石に人数をかけすぎだ。
CBの2人に任せておけばよい。


パウリーニョの立ち位置が低すぎるせいで、パスを繋いでチャンスを作ることもできないし、即時奪回もできない。

そのせいで、主導権を握れない。

山雅が弱いのは偶然ではなく、確かな理由がある。


~終わりに~

パウリーニョができていないポジショニングを、交代で入った米原は割とできていることもあった。

だが、選手によってポジショニングが大きく変わるということは、チームとしてこだわりを持ってやっている部分ではないのだなと感じるし、それが悲しい。

そして、パウリーニョのポジショニングについては、去年からずっと見られる問題である。

前監督・コーチ陣も、そして現監督・コーチ陣も、それを問題とは捉えていないということなのだろうか。

だから修正されないのだろうか。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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