【レビュー】vs富山|J3 第8節【松本山雅2023】
選手たちが、戦う術を十分に与えてもらえない。
そんな試合を、イングランド・プレミアリーグが好きで全試合観ている、戦術オタクな自分の視点で振り返っていきたい。
2023.4.29
J3 第8節
カターレ富山
×
松本山雅FC
~スタメン~
~はじめに~
ビルドアップがうまくいかない理由について書いていきたい。
~"惜しい"止まり~
チャンスは一応作れる
惜しいシーンは作れていた。
例えば、3:17~のシーン。
住田から山本へパスが出る。
村越がポケットへ走り込むが、山本はそこへパスを出せず、住田へ戻す。
そして住田は小松へ。
小松は村越に繋ごうとするが、CB大畑のプレッシャーを強く受けていたため、うまくパスを出せず、そのままクリアされる。
村越へのパスが繋がっていれば…という惜しいシーンだった。
だが、上手くいかなかったのは必然とも言える。
このとき、富山の選手たちは山雅の左サイドに全員がしっかりスライドし、密な守備ブロックを作っていた。
だからこそ、小松にもしっかりマークにつくことができていた。
その富山の守備に対して、山雅は正面から強引に突破しようとしていた。
でもそれでは厳しい。
仮に村越へのパスが通っていたとしても、すぐに周りの選手が必死で村越を止めに来ていたはず。
そのために相手は密なブロックを組んでいるわけであり、その密なブロックを正面から崩すのは並大抵のことではない。
小松の100点満点のパス、そして村越の100点満点のトラップと100点満点のシュートが全て合わさればゴールを決めていたかもしれない。
ただ、例えば村越のトラップが80点とかになっただけでも、おそらく守り切られていただろう。
得点の可能性を高めるために
相手のブロックを崩すためには、やはり正面突破は避けたい。
相手が片方のサイドに集まっているなら、逆サイドに大きなスペースがある。
そこを使っていきたい。
もし、3-1(3バック+1ボランチ)の形ではなく、3-2(3バック+2ボランチ)の形でビルドアップしていたら、サイドチェンジできていただろう。
パウリーニョがDFラインに下り、住田と菊井でボランチを組んで3-2の形でビルドアップしていた場合、住田から小松ではなく菊井へ繋いでいくことで、逆サイドから一気に崩せていた可能性が高い。
しかし、今回は3-1の形だったので、住田の横には選手がおらず、住田にサイドチェンジの選択肢はなかった。
3-1の形のままでもサイドチェンジしようと思うなら、住田からロングボールで直接サイドチェンジ、という方法になるが、これは非常に難しい。
住田がボールを持ったとき、富山の2トップが急いでプレスバックしていたため、ロングボールを蹴るほどの余裕は住田にはなかった。
山雅のような、2トップが戻って来たり来なかったりするチーム相手ならまだしも、今回の富山のように、FWが相手のボランチを潰すことの重要性を理解しているようなチーム相手なら、住田がロングボールを蹴れるほどの時間は与えてもらえない。
(強いチームなら当たり前のことだが)
だから、3-1のままではサイドチェンジできない。
だから、正面突破を試みるしかない。
だから、”惜しい”止まりの攻撃しかできない。
~仕組み不足~
相手のブロックを崩せない原因は他にもある。
それは、ポケットを狙った攻撃にある。
山雅はビルドアップの際、明らかにポケットを狙っている。
それ自体は問題ない。
しかし、それに続く二の矢・三の矢が用意されていない。
問題のシーン
例えば、21:42のシーン。
下川へパスが入る。
SB(に一時的に入っている)の安藤を釣り出す。
それを見て、菊井が安藤の背後へ走る。
その菊井には、ボランチの末木がついてくる。
下川はパスコースを見つけられず、野々村に下げるしかなかった。
このシーンで問題なのは、ポケットを狙うことしか考えていない、ということ。
そうなると、ポケットを守られたら、もう山雅は前進できなくなってしまう。
このシーンでは、ポケットを狙う菊井には、相手のボランチがついてきていた。
ということは、相手の守備は中央が一時的に手薄になっている。
だからそこを狙わなければいけない。
このシーンでは、榎本または小松、あるいは住田でもいいが、とにかく誰かが素早くそのスペースに入ってこなければいけなかった。
しかし、誰もそのスペースに入ってくることはなかった。
ポケットを狙うことしか考えていないからである。
また、29:56のシーン。
ポケットに走る榎本へパスが入る。
その榎本には、CBの今瀬がついてくる。
このとき、相手CBの間にはものすごく大きなスペースができている。
しかし、ゴール前にいる小松や村越、あるいは他のどの選手も、そのスペースを狙おうとはしなかった。
やはり、ポケットを狙うことしか考えていない。
さらに、58:56のシーン。
藤谷へパスが入る。
SBの柳下を釣り出す。
それを見て、滝が柳下の背後へ走る。
その滝には、CBの今瀬がついてくる。
その分、中央に大きなスペースができる。
そのスペースを小松あるいは鈴木に狙ってほしいところだが、二人はただ遠くで見ているだけである。
ここでも、ポケットを狙うことしか考えていない。
再現性が低い
ポケットの重要性はサッカーの世界では有名である。
しかも山雅は露骨にポケットばかりを狙ってくる。
となれば、当然相手は警戒してくる。
その場合、ポケットに走り込むだけでは攻撃は上手くいかない。
しかし、相手がポケットを守ってきた時にどうするか、という次の手を山雅は持っていない。
だから、山雅は相手の守備を崩せない。
仕組みがあるなら、それを選手たちは毎回実行するはず。
でも山雅の選手たちからはそのような様子は見られない。
厳密に言えば、たまたまできている時もある。
そういう時もあるけれども、
毎回できるわけではない
たまにしかできない
再現性が低い
ということが、ビルドアップの仕組みが足りないことの証明になってしまっている。
~試合結果~
カターレ富山 3
40' 高橋 45+1' 吉平 90+1' 安藤
松本山雅FC 0
~光が見えない~
前半では、相手のSB柳下が出血によりピッチを離れている時間が結構長かった。
計10分間くらいあったのではないかと思う。
その間は、ずっと山雅が一人多い状況で戦っていた。
それにも関わらず満足に崩すことができないというのは、とんでもなくまずいのではないだろうか。
もっと言えば、富山の守備システムは典型的な4-4-2だった。
富山に限らず、今季対戦してきたほとんどのチームは、細かい部分で多少の差はあれど、同じ4-4-2というシステムで守っていた。
その、定番中の定番である4-4-2すら未だに崩す術がないというのは、致命的ではないのか。
(つづく)
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