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【読書ノート】『ファミリー・アフエア』

『ファミリー・アフエア』(『パン屋再襲撃』より)
村上春樹著



五年前から主人公(「僕」)と妹が二人暮らしをしていた。ちょうど、「僕」は、就職し妹は、大学に進学したときだった。兄妹は、非常に仲が良かったのだけど、妹が彼氏・渡辺昇との婚約を明かしたときから、「僕」は彼の存在を素直に受け入れることができなくなって、妹との関係が拗れていくという話。

印象的な言葉をいくつか挙げてみる。

①「スパゲッティ」とは?
(スパゲッティを、巡って、兄妹喧嘩をするのだけど、)

人生の複雑さや絡み合いを表現する。また、独特の過程で作られ、多種多様なソースや具材と組み合わせることで無数の料理が生まれる。これは生命や宇宙の多様性、創造性を象徴する。

②ステレオセットの故障

1. 技術の進歩:ステレオセットの故障は、技術の進歩や旧式化に対する象徴。つまり、新しいテクノロジーやデバイスの出現によって、古いテクノロジーが役割を終え、時代遅れになる事が、示される。

2. コミュニケーションの断絶:ステレオセットは人々が音楽や情報を共有し、経験を共有するためのツールであるので、その故障は、コミュニケーションの断絶や情報の交換の困難さを示すメタファーとなる。

3. 変化と適応:また、ステレオセットの故障は生活の変化や適応の必要性を象徴する。物事が期待通りに進まないとき、または新しい環境に合わせて調整が必要なとき、人々は新たな解決策を見つけるために創造性を発揮しなければならないことを示している。

③帰納法
渡辺昇が、ステレオの故障の原因を特定する時とった方法

1. 経験主義と認識論:経験主義は、知識の源泉は経験によって得られると主張する。帰納法は個々の経験事例から一般的な原則や法則を導き出す手法であり、経験から得た知識を体系化するための道具として役立つ。

2. 科学的方法論: 帰納法は科学的な研究においても重要な手法。観察や実験から得られたデータや事実をもとに、一般的な法則や理論を導き出すために帰納法が使用される。このプロセスは、観察されたパターンや傾向を見つけ出し、それらを一般化することで科学的な理解を深める手段となる。

主題は、何か?
兄妹愛ということがベースなのだろう。非常に仲の良かった兄妹だったのだけど、妹が、選んだ男は、自分と違って、真面目な好青年。「僕」は、自分が、否定された気分になって、妹との関係が、壊れて行く。すると、ステレオも壊れる。妹の婚約者が家にやってきて、ステレオを直して、さらに、兄妹関係も修復される。

人生に訪れる、変化を怖がらす、受け入れることが大事なことだということなのだと思った。

「良い面だけを見て、良いことだけを考えるようにするんだ。そうすれば何も怖くない思いことが起きたら、その時点で考えるようにすればいいんだ」

余談ではあるが、婚約者の渡辺昇は、『象の消滅』にも登場する(別人の筈だが)

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