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『身投げ救助業』

『身投げ救助業』
菊池寛著


川に飛び込んで、自殺を試みる人々を助けて、そのお礼としてお金をもらって生活していた老婆の物語。

人助けのヒーローでいることは、誇り高い仕事でもある。みすぼらしい姿の自殺未遂者を指導者の目線で、憐んでいたのだった。改めて、人を救わなければと思うのだった。

そんな老婆の一人娘が、ロクでもない男ついて、出ていってしまい、その際、老婆が、ヒーロー業で稼いでいた、貯金をすべて持っていかれてしまった。老婆は、生きる気力を失い、自殺する。ところが、どこかの輩が、老婆を助けてしまう。

助かった老婆は、みすぼらしい姿を晒されて、多くの野次馬たちから、指導を受ける。それ以降、川での投身自殺が、防がれたニュースは、無くなってしまった。

主題としては、余計なおせっかいは、人の為にならない的な話とも取れるのだけどね。今の日本の社会で、自殺者が、年間4万人とか、言われている状況からすると、微妙な話では、ある。

究極的には、尊厳死の問題にも繋がるのかもしれないと思った。


職業倫理の問題も内在しているのかもしれない。医者や弁護士、宗教家など、いわゆる、人の不幸の上に成り立つ商売って、プライバシーへの配慮が必要なんだってことをいっているのかなあと思った。今の社会って、医者や弁護士じやなくても、コンサル的な業務が、増えていて、無闇に、個人情報の保護を盾に、例外を設けて、サインさせられてしまうのだけど、気をつけないといけないのだろうと改めて思わされた。


自殺の傾向について、厚生労働省HPより、かいつまんで要約してみた。

"1998年以降、日本の自殺者数は3万人超で高止まり。中高年男性が7割以上で、主要な職業は「無職者」「被雇用者」「自営業者」、原因は「経済・生活問題」。女性は中高年と「主婦・主夫」が多く、「健康問題」が主要原因。自殺実態の詳細な把握が課題。"

経済的な問題で、自殺に追い込まれるというのは、一部には、悪徳業者みたいなのもいるだろうけど、社会から辱めを受けることが、嫌で死を選択しているのだろうと思うと、社会的な制裁というのは、厳しいことなのだなあと理解した。

本書に戻ると、老婆は、決して悪いひとでは、なかっただろうに、報酬の欲しさから、自殺者が現れることを期待するようになると、歯車が崩れていくのかもしれないのだなあと勝手に思ったりした。

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