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『デルフトの眺望』(『常設展示室』より)

『デルフトの眺望』(『常設展示室』より)
原田マハ著


大手ギヤラーに勤める主人公なづきと弟ナナオの二人姉弟が、父親の最後に遭遇した時の物語。その時、なづきは、デン・ハーグで、フェルメールを見ていた。

物語の中に登場する絵画について、

①フェルメールの『デルフトの眺望』が意味すること。

1. 平穏と静寂:デルフトの眺望は美しい運河や風景が広がっており、穏やかで静寂な雰囲気を醸し出している。

2. 時間と経過:デルフトの眺望は歴史的な建物や風景を通じて、時間の経過と持続性を感じさせる。これは、過去と現在のつながりや人間の存在の一時的さを思い起こさせる。

3. 調和とバランス:デルフトの眺望は建物や風景の配置において調和とバランスを重視している。

4. 深遠な内省:デルフトの眺望は静かで広々とした空間を提供し、思索や内省に適した環境であり、このような眺望は哲学的な考えや哲学的な問いに向き合うための場として捉えられる。

眺望からは美しさや儚さ、自然と人間の関係性、存在の喜びや哀しみなど、人間の感情や存在の根源的な問いに対する洞察が生まれる。

総じて、デルフトの眺望は美と哲学の融合を通じて、人々に深い思索と感情の探求を促す場を提供していると言える。

②フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』の意味すること。

1. 内面と外面の対比: この絵では、少女の内面的な美しさと外見の対比が描かれている。少女の装飾やドレスは控えめでありながら、彼女の落ち着いた表情と眼差しは内面の美を表している。

2. 時間の凍結: 『真珠の耳飾りの少女』は、瞬間を静止させたようなリアリズムのある描写が特徴的。この絵は時間の停止、自由への切望を象徴する。

3. 真実と観察者の関係: 少女は直接に観察者を見つめている。この視線は観察者に対する関与やコミュニケーションを示しており、観察者と被写体の間に親密さや距離感が生まれることを暗示している。真実や存在の本質に触れるためには、観察者と被写体の間の関係性や対話が重要であることを示唆する。

これらを踏まえてまとめると、
なづきは、フェルメールの『真珠耳飾りの少女』を見たいと思っていたのだけど、大変な混雑だった、ふとまわりを見た時、『デルフトの眺望』が目に止まって、デルフトの眺望のハガキを日本に送った。まさにその頃、父親は、息を引き取った。
「真珠の耳飾りの少女」は、自由を求める自分の視点、見られる一方の少女は、観察者との対話を求めていたのだと思った。自分が、中心の考えの中には、今しか存在しない。そして、「デルフトの眺望」を見て、視界が広がる。過去と現在が、繋がって、家族の関係性に気付かされる。

親の死を通して、自分が、長く続く時間の中の一部であることに気づくということなのだと思った。。

私の場合、ちょうど7年前に父親が亡くなって、その時、父親が、主体の人生を改めて認識したことを思い出した。私が見ていた父親の姿というものは、父親の全体像の一部であることを感じたのだと思う。客観的に、一人の人間が、消えていくという現象から、過去から現在、そして、未来へのつながりを意識したように思った。人生の喜びであり、儚さでもある。

本書に戻ると、物語の主題というのは、親が亡くなってはじめて、親という目線の存在があったということを認識するということなのかなあと思った。そして、その歴史の中に自分も存在しているということ。

線香花火

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