ただ、初心に返るのみ

何かに困った時に本にすがる癖は、昔からだ。

失恋したときは、「辛い時をどう乗り切るか」というような本を図書館で大量に借りてきて、むさぼり読んだ。
何にも自信が持てなくなって、自分は何者か、どう生きるのかということに迷った時は、たくさんの自己啓発本を買って読んだ。
上司とうまくいかないときは、上司との付き合い方の指南書を読んだりもした。

本を読んで劇的に何かが変わるわけではないけれど、
「まあ、私もそこそこ、やれてるな。ぼちぼち行こか」
という、答え合せのようなものをして、ホッとしたり、元気になったりしてきた。
読んだ内容はいつの間にか自分に取り込まれて、今の自分の考え方の元になっていると信じている。

最近、本当にうまく書けない。
スッキリと書き切った感のなさ、言葉が出てこないもどかしさ、頭の靄が取れないイライラ、note上に溢れる優しくて素敵な文章や胸に刺さる力強い文章を読むたびに自分の文章の弱さに落ち込む。

もっと上手く書けるようになりたい。

ああ、そうだ。本に頼ろう。

買っていたのに、読むのを中断していたこの本を再び手に取った。

岸本葉子さんの「エッセイの書き方」(中公文庫)

岸本葉子さんは、長年、一線で活躍されているエッセイイスト。
プロのエッセイイストが、その手の内を余すことなく見せてくれるのが、この本。
テーマの見つけ方から、起承転結の付け方、文章の枠組み、頭や感覚に働きかける文の作り方、文章の構成、言葉の選び方、エッセイという作品を制御するマインドまで。
エッセイとは、これほどまでに論理的に作られているのかと、目をみはる。

エッセイは。読みやすさに求められるハードルが、文芸の他のジャンルに比べて高いと思う。
エッセイ(随筆)は筆に随うにあらず。

そして、次の言葉が何度も何度も、繰り返し語られる。

エッセイの基本要件は、「自分の書きたいこと」を「他者が読みたくなるように書く」こと。

私にとって文章は自分と向き合うことだ。書けばお腹の中で消化されて、自分の血となり肉となって、精神的な支えになっている。
でも、noteで書く文章の向こうには読者がいる。
読んでくださって、中には、毎回「スキ」を押してくださる方やコメントをくださる方がいる。
「他者が読みたくなるように書く」
私は、自分のことばかりに目を向けすぎて、noteの向こう側の人たちを楽しませる気持ちを忘れていたかもしれない。

ただ毎日更新すること、書き続けることだけが目標になっていた。
PV数がどうとか、スキの数がどうとか、コメントがもらえたかどうかとか、そんなことじゃない。今、まさにこのページを開いて読んでくれているあなたに、私は「自分の言いたいこと」を言葉を尽くして伝えていなかった。読者が「読んでよかった」と思える文章を提供できていなかった。
かなり痛いところに気づいた。文章を書いて公表することの基本ではないか。
こんなことなら毎日更新なんかやめちまえ。

でもやっぱり、書いて共感してもらいたいし、読んでよかったと思ってもらいたい。
ならば、どうすればいい? 
岸本葉子さんは、他者が読みたくなる要件をこう言う。

他者が読みたくなる要件
①読みやすい文章であること
②興味の持てる題材であること
そして、読者に「ああ、ある」「へぇーっ」「そうなんだ」と思ってもらえること。

「読者へのサービスに徹しなさい」と、ライティング講座でも耳にタコができるほど言われた。同じことだ。
今の状況を抜け出すには、「初心に返る」、ただそれだけのこと。

また本に救われた。
本にはたくさんの文章を書くためのテクニックが公開されている。
たくさんありすぎて、マスターするのはまだまだかかりそうだ。
でも、一番大事なマインドは、持っていたもの。ただ忘れていたものだ。
だからきっと大丈夫。
またここから始めよう。

毎日更新はちょっとしんどいけど、楽しい。続けたいと思う。
でも、私の目標は「読んで面白いと思ってもらうこと」だ。
だから、ちょっと方針を見直そうと思う。

1 どうしても書けない日は、更新しない
2 自分もちゃんと面白いと思ったものだけ公開する
3 インプットする時間をしっかりとる
4 ネットを見る時間を少し減らす

みなさま、気長にお付き合いくださいますよう、お願い申し上げます。

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