あのスパイスカレーが食べられる日#okatteスパイス✖️noteユーザーin岡山
冷蔵庫から取り出す野菜は、玉ねぎ1コ、トマト1コ、以上。
あまりにシンプル。だけど、シンプルだからこそ、スパイスカレーは美味いのだと思う。
玉ねぎを粗くみじん切りにする。
涙が出るより手早くざくざく切っていく。「粗くてええんよ」との教えをきっちり守って、不揃いな粗みじん切りができあがる。
お次はトマト。
これも粗みじん。季節によって、種類によって、トマトの水分量が違うことを知ったのはこの料理を作るようになってからだ。そもそも、トマトの水分量なんか考えたこともなかった。でもこのトマトの水分があとで仕上がりのサラサラ加減に大きく影響する。
フライパンにサラダ油(我が家は米油)を多めにひく。
クミンシードを小さじ1、カルダモンを2,3粒、油の中へ。
「ずっと強火でええんよ」
師匠の声が聞こえる。
だから、火力は強く。
油の中のスパイスがパチパチと弾けはじめ、ふんわりと香ばしい香りが立ち上ってきたら、玉ねぎを投入。
「じゅっ、じゅわー」
と、熱い音とスパイスの香りが広がる。
ここで換気扇のスイッチをオンにする。
静かだったキッチンが、途端に騒がしくなる。
「玉ねぎは炒めるんやなくて、焼くようにするねん」
フライパンの玉ねぎをヘラで平らに広げ、まんべんなく火が通るようにする。
冷蔵庫を開け、ドアポケットのスパイスエリアを確認する。
ターメリック、コリアンダー、パプリカ、チリペッパー、しょうがチューブとにんにくチューブ。
全部取り出して、コンロの前に並べてみる。
ターメリックとパプリカは色づけ、香りはクミンとコリアンダーで決まる。チリペッパーで辛みを調節。カルダモンは辛さとコクの中に清涼感をくれる。
塩、こしょうしか知らなかった自分が、スパイスの味の違いを語るなど、数年前には想像もできなかった。
玉ねぎに火が通ってきた。火を通しすぎて茶色く焦げても、端が真っ黒になっても、失敗することはない。
これまで数多くの料理に失敗してきたが、これに関しては、「私、失敗しないので」と言える。
しょうがチューブとにんにくチューブを2センチずつ加える。
本当は、すりおろしたてのしょうがとにんにくがあれば、もっと香りよく仕上がるのだろうが、急いでいるのでショートカット。
スパイスカレーというものは、なぜか突然食べたくなる。
「今夜、食べたい!」
体がスパイスを求める日がある。
調べたら、そういうときは体や心が疲れているんだとか。
1分、1秒でも早く摂取したい。それをチューブがかなえてくれる。
玉ねぎに混ぜ合わせると、温められたしょうがとにんにくが強い香りを放つ。
ここでも強火。決して日和ってはいけない。
トマトを投入する。
十分に熱くなったフライパンの中で、トマトの水分が弾ける。
ここでトマトの水分をしっかり飛ばしておくと、粘り気のあるカレーになる。
トマトが焦げないよう、かき混ぜながら炒める。
水分が飛んで、玉ねぎとトマトが混ざり合い、次第にペースト状になってくる。マヨネーズくらいの固さになれば、一旦、火をとめる。
ついにスパイスの登場。
スパイスの分量は憶えやすい。
コリアンダーとパプリカ、塩を小さじ1ずつ、ターメリックを小さじ1/2、チリペッパーはお好みで。
私は辛いのが苦手なので、チリペッパーは耳かき程度。あとスパイスのメーカーによっても辛さが違うらしいので、味を見ながら加えるのが得策。
パプリカとチリペッパーの赤、ターメリックの黄色、コリアンダーの茶色、塩の白を円グラフみたいに置いてみて、しばし眺める。「おいしい配色だなあ」と悦に入る。
眺めていてもカレーはできないので、再び火をつけて、一気にかき混ぜる。
味見を一口。味が薄かったら塩を足す。
「スパイスカレーの味の決め手は『塩』やねん」
わが師匠の声がリフレインする。
そう、スパイスカレーの味は塩で決まるのだ。
スパイスには香りはついても、味はつかないという衝撃の事実を教えてくれたのも、このスパイスカレーだった。
味が薄いからと、どれだけスパイスを足しても、決して味は濃くならない。
全ては『塩』が決めているのだ。
日本語には、料理の味加減や物事の具合を表す「塩梅」という言葉があるけれど、インドやネパールのスパイスカレーにも「塩梅」があるというのが、とてもおもしろいと、味見するたびに思う。
塩加減がよければ、お肉を加える。
お肉は鶏もも肉、ヨーグルトと塩に3時間ほど漬けておいた。
朝仕込んで、夜作ることが多い。時間がなければ、お肉を小さく切って30分ほど漬けるのでも十分いける。
漬け汁のヨーグルトも一緒にフライパンへ。
鶏肉の表面が白く色が変わるまで炒める。ここでも強火。
色が変わったら、水を加える。
レシピでは400ml(ココナッツミルクを加えない場合は追加で200ml)とあるが、そのとおり加えると水っぽいカレーになる。私はシャバシャバより少し水分量が少ない方が好きだ。ココナッツミルクも加えないので、本来なら水は600ml必要だけれど、400mlに抑える。
こういう加減が自由にできるのが、スパイスカレーのいいところだ。
ここでついに弱火にする。
煮込むこと15分。
その頃にはキッチンはスパイスの香りが充満し、換気扇が吸い出した空気にもスパイスの香りが乗って、遠くへ飛んでいく。
香りは人間の脳にダイレクトに届くのだそうだ。
スパイスの香りも、脳に直接届いているはず。そのせいだろうか。作っているうちに、気持ちが元気になる。
ヨーグルトに漬けた鶏肉は、時間をかけて煮込んでも柔らかい。
ほら、もうできた。所要時間は30分。
師匠は言う。
「スパイスが足りひんかったら、あるもので作ったらええし、足したいスパイスがあるんやったら、足してみたらいい。苦手なもんがあるんやったら、入れんでええんよ」
辛いのとパクチーとココナッツミルクが苦手。だから入れない。
これが私のスパイスカレー。
どんなふうに作っても、結果オーライの味になる、スパイスカレーは懐が深い。
私のスパイスカレーの師匠は、わたなべますみさん。
ますみさんとオンラインでスパイスカレーを作るようになって、はや2年。
最初は、3人で始めたオンラインカレー会が、今では9人。日本の北から南、果ては海外まで、参加者はワールドワイド。全員そろうことはないけれど、月に1回、3~4人で開催している。
スマホ越しに、みんなの顔や鍋の中をのぞきながら、作業したりおしゃべりしたりの2時間弱。
基本のスパイスカレーはもちろん、バターチキンカレー、ほうれん草カレー、ひよこ豆のカレー、エビカレー、パセリキーマカレー、レモンカレーと、数多くのスパイスカレーを作ってきた。
しかし、未だに実現していないことがある。
私は、師匠わたなべますみさんの作ったカレーを、まだ食べたことがない。
毎回、ますみさんの鍋の中をスマホの画面越しに見ている。色、野菜の切り方、炒め方、スパイスの種類、何でも見えるけれど、香りと味は届かない。
ますみさんのスパイスカレーは、どんな味だろう。
私が作るものと、どれくらい違っているのだろう。
もしかしたら、全然違う味かもしれない。逆に、そっくりかもしれない。
2年間、画面の向こうに見えていたますみさんのカレーを、今週末、ついに食べることができる。
わたなべますみさんと、クニトミユキさんがタッグを組んで開催されるイベントが、7月15日(土)、岡山で開催されるのだ。
「#okatteスパイス✖️noteユーザーin岡山」
ありがたくも、私もこのイベントの末席に呼んでいただいた。
「いつまで待ってんねん。自分からいけや! 自分主催でやれや!」
私は、ますみさんに言いたい。
「こないなうれしいこと言わはったん、あんたが初めてや・・・・・・涙」
ますみさんのスパイスカレーも「都会にあるもの」だった。
行けばきっと喜んで迎えてくれると分かっているけれど、やはり遠い。
地方に住んでいると、欲しいものを手に入れるには、こちらから向かっていかねばならない。欲しいものは全て都会にあって、ここにはない。
人もモノも経験も、ここでは簡単には手に入れられない。
そういうものだと、自分に言い聞かせて、仕方ないと諦めていた。
だけど、ますみさんは、来てくれた。
遠路はるばるイベントをしに来てくれたのは、ますみさんが初めてだ。
(イベントを具現化してくれたミユキさんの行動力にも大感謝)
そして、参加者の皆さんも、遠くからここまで足を運んでくれるというではないか。なんとうれしいことだろう。
孔子も言ってた。
「朋有り 遠方より来る、また楽しからずや」と。
地方にわざわざ人が足を運んでくれることは、本当にうれしい。
はっきりいって、都会と比べたら何もないのに、(岡山は徳島からみればかなり都会やけども)、目指してきてくれることは、本当にうれしい。
7月15日(土)、ますみさんを、そして遠くから来る友を、心よりお待ちしています。
※私は受付担当、入り口でお待ちしています。
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