ミクロはマクロより奇なり
「ミクロはマクロより奇なり」
誰かがもう使ってるかもしれないが、「事実は小説よりも奇なり」をもじったこれをふと思いつく。
今年2月に、ドバイで医療機器の展示会をコンサルとして手伝っていたら、隣のブースの白髪の髭長のZZトップみたいなオヤジと目があって挨拶してだべっていたら、アルゼンチン企業だとわかる。
25年くらい前の創業のブエノス・アイレスの企業で、血液ガスと電解質の分析機をアルゼンチンで作ってアフリカや欧州で売っているという。驚き。
アルゼンチンは、学生時代旅行した80年代に、やっと軍政から民政移管したばかりで経済はぐちゃぐちゃで年率何千%の高インフレがあって、仕事でかかわった90年代にも何度か経済危機があってデノミで通貨呼称が2、3度変わったりしていた。その後も、少なくとも現在進行中のもいれて2度は経済危機があったはず。外貨準備は底をつき、対外債務は払えず、老人は年金が受け取れないような辛い時代がずっとあったはず。そんな中で、かなりニッチな製造業でしたたかに輸出を広げて成長してきていたとは。
オヤジは社長だそうで、ラストネームがなんとかスキーなので、たぶんブエノスに多い東欧ユダヤ系移民の家系か。「商売は大変だよ」といいながら、ブースを訪れる顧客(各国の販売代理店)をさばいていた。
1月あたまに国を出て、エジプト、イラク、イスラエルとまわって今週ドバイ。おくさんと営業行脚しているという。マクロ的には疲弊した経済に、こんなしたたかなしぶとい企業が生き残っていたとは。脱帽。ミクロの企業の動きは、マクロだけみてては計り知れない驚きがあるということ。
とある日本の血液検査機のメーカーのお手伝いでドバイの展示会で1週間過ごしたが、客層は、中東とアフリカの代理店。おもしろいのは、彼らはそれぞれの国でドメの人たちで、納入先の病院や医者の先生には営業で食いこんでいるけれど国際的なことはあまりやっていないので英語は苦手。喋る英語はかなりブロークンな人が多い。
自慢ではないが(自慢か)、いろいろな変な発音の英語に長年付き合ってきたせいか、そういう不思議な片言英語のヒヤリングは得意中の得意。たぶん、英語がNativeの普通の英国人やアメリカ人では聞き取れないような、まか不思議なアクセントが聞きとれたり、英語としてはおかしい表現の意味を読み取ったりできるんじゃないかと思う。日本の英語教育も、目指すのはこっちにすべきだとつくづく思う。
客の中には、戦禍にあえぐ地域のディーラーもいて、大変そうだが、空爆されても、市街戦があっても、医療機器は必要。この会社のは、赤ん坊の黄疸関連の測定なので、おっ、という地域のニーズがある。病院とか空爆されると更新需要がでてくるんだろうか、中東の戦禍にあえぐ国から結構ひきあいがある。
綺麗事を言う国際協力がお題目の会議とかと違って、なかなかしたたかな商売人おやじたち。戦禍をくぐりながらも結構な粗利を稼いでいるのだろう。
「きついんでまけてよ」とかいうが、こちらの社長もしたたかで、「数量もう少し増えたら割引ね」とかわす。最後は握手して、また次の展示会でと別れる。商売人の商売を通した交流。ある意味とても健全。
ドバイ 2020.2
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