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polyglots 多言語話者

このあいだ、ジョギングというか、そぞろ歩き散歩中に聞いていた、BBC Radio(World)の特集番組の多言語話者について(この文末にリンク。今のところログインなど必要なしで聞けそう)。おもしろい。

多言語話者、"Polyglots"というのは母国語以外に2つ以上の言語を操る人ということだが、番組の冒頭で登場するひとは面白い定義をしていた。

「必要ないのに、楽しみのために外国語を学ぶ人たちをそう呼ぶ」。たしかに必要に応じてそうなるというよりも、世の中、言葉をいろいろ学ぶのが好きな人達はいる。

そしてそんな多言語話者達が好きな言葉として、ネルソン・マンデラ元大統領の名言が紹介されていた。

彼は、27年にもおよんだ投獄生活中に 権力側の言語であったアフリカーンを学んでいるが、彼の言語に関する名言。

"If you talk to a man in a language he understands, that goes to his head. If you talk to him in his language, that goes to his heart". Nelson Mandela

「相手が理解している言語で話しかければ、それは相手の頭に届く。しかし、相手の母国語で話しかければ、それは相手の心に届く」

番組でも、多言語話者が、ギリシャで掃除のおばさんにアルバニア語を喋ったら感激された話とか、山登りが好きな人がヒマラヤのタマン語やシェルパ語をちょっと話すと現地で歓待された話などが紹介されている。こういうのが言葉を学んで喋る醍醐味。その言葉がマイナーだと、見かけと意外性があると、けっこうウケるし、歓迎される。

ラジオの後半で、ある調査が紹介されている。それもおもしろかった。Polyglotの集いで、640 の多言語話者に調査したところ、彼らの特徴として浮かび上がってきたのが、「男性・ゲイ・自閉症」の3つ。その全部にあたるのは調査した640人のうち1人だけだったらしいが、3つのどれかにあたる人はかなりいたらしい。意外。語学堪能というと女性のイメージだったが。

また、「両利き」の人も多かったらしい。その利き腕や利き足をコントロールする脳の部分が言語能力にも関係しているらしく、右利きの人は左で字を書いたり練習すると言語学習にもいいかもとかいっていた。

あと、たしか、他人の考えを読み取るのがうまい、読心力みたいのが強いひとも外国語学習にはプラスらしい。まあ、対話するにはそうだろうな。両親が違う言語の子供は、小さい時から、言語と話者の感情を想像して対比させながら学習していくのでそういう能力が早くからつくというようなことをいっていた。

こうした言語学習での脳の働きについての研究が、将来、自閉症とかの治療にも使えるんじゃないかと言っていた。これはおもしろい。お医者さんが、はい、あなたのお子さんは、脳機能改善のために、ではとりあえずスペイン語初級とペルシャ語初級を処方しておきますのでそれで様子をみましょう、という時代がくるのだろうか。

私事ながら、外国語学習史など言葉に関するよもやま話を。

自分はごく普通の日本の地方都市育ちの人間だったが、海外を夢見て、幸運にも高校時代に日本語がゼロの米国のど田舎に交換留学で1年お世話になったのが自然に外国語を学べた最初のプロセスだった。当然、外国語学習の苦痛はあった。やはり外国語学習はめんどうはめんどう。いろいろ覚えないといけないし。でも人とのコミュニュケーションを通じての学びだったので、日本の教室で学ぶより、楽しかったと思う。この点はありがたく、幸せだった。現地の家庭にお世話になって、当時はスマホもなかったので日本語が持ってきた本ぐらいしかなかった。その年の日本のヒットした歌謡曲もぽかりと抜けている。昔はそれが普通だった。島流しのような。

その後、スペイン語も基礎はさらっと数ヶ月授業でやったが、あとはなんだかんだ現地で計6ヶ月バックパックしたときに身につけた。あまり知られていないが、おおざっぱにいえば、日本語とスペイン語は母音「あ・い・う・え・お」が共通ともいえるので、日本人はスペイン語の発音はうまい、米国人はスペイン語の発音苦手、スペイン人は英語の発音苦手、日本人も英語の発音苦手、という関係あり。聞いた音で辞書引くと意味もわかった。おしゃべりで親切な現地人といろいろ会話できて練習になった。日本人はもっとスペイン語を勉強したら外国語に自信がもてるのになと思う。

そして、ポルトガル語は、もっと後で、メキシコから日本に戻ってきたときに職場の人事異動でブラジル担当の人が前任となったのでそれを引き継ぎ「あのお、似てるけどちょっと違う言語なんですが」と文句をいいながらも、本心はブラジル音楽が好きだったので苦痛は少なかったが。スペイン、ポルトガル、イタリアあたりは違う言語なんですが、かなり似てます。

じつは上海にも2年住んでいたので、2年分くらいの中国語「処方」治療も受けているはずなのだが、言い訳になるが40代になってからだったこともあり、なかなか頭に残らず、四声は覚えられず(ミュージシャンを自負して相対音階はちゃんとあるのだがこの四声は鬼門だった)、せいぜい食い物を注文したり、四声のないカラオケの持ち歌が10個くらいあるくらい。というわけで、英語に加えてスペイン・ポルトガルという似たようなラテン系の言語、そしてベーシック日常中国語。どうにか多言語話者にはいれるかというところか。好きで学んだか?については、7割くらいでYes。男性・ゲイ・自閉症の全部は該当しないが、少なくとも男性ではある。

つくづく思うのは、外国語は喋るのが苦手という日本人多いが、喋るのはある意味簡単。考えを外国語に置き換えて、発すればいい。やはりいちばん大変なのは、聞いて理解すること、だと思う。聞いた内容を誤解したことから、対話が変な方向にいってしまうというのを多々目撃した。言いたいことを直訳しながら言って、相手がそれを理解しているかどうかを確認しながら話を進めるのが大事か。

うちの子供達はシンガポールで育ったので、学校の学びのベースとなる言語が英語、日本語はごく普通に家でしゃべる。不思議だが、他の家庭であるという海外育ちだと兄弟姉妹同士で英語になってしまう、というのはなぜかうちはまったくない。何故だろう。学校でとか日本語がわからない第三者がいれば英語になるが、2人で話しているのを聞くといつも日本語。この違いがなぜでるかという謎、言語学者に研究してほしいテーマ。

あと、おやじとして子供が羨ましいのは、英語のポップスとか耳で聞いて歌詞を覚えちゃっていること。おやじは、昔、洋楽(死語か)のレコードを買っては歌詞カードの文字を追いながら必死に歌詞をおぼえたんだぞ。羨ましい。けっして全部正確ではないのだろうが、こどもたちは、テイラー・スウィフトとか耳で聞いて鼻歌で唄っている。

最後に、サバイバル外国語ネタ。片言でも、マイナーな言語とかで知っていると役に立つ最小限の表現3つについて。

マレー語とかタガログ語とかで知っていたら役にたったのが、「私・あなた、肯定語・否定語(Yes、Noみたいな)、「同じ」をあらわす言葉」の3つ。あとは動作とかは身振りで通じるのでこの3つでよい。ありがとう、とか、こんにちはとかはThank youとかハローで十分、みんなそれくらいの英語は知っている。なぜか、この「同じ」が大事だったりする。同じというのを身振りで示しにくいからかな?あれと同じの食べたいとか、これと同じじゃないのないの?とか聞くことになるからか?マレー語は、サマサマ、タガログはたしかパレホ(スペイン語のparejo(ペアー)が語源かな?)。セイム、イグアル、イーヤンダ、同じというのが会話で結構やくにたったりする。ぜひ実験してみてください、マイナー言語で。


(タイトル写真が僕がとったシンガポールのバッタ(けっこうでかい))

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