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美味しいものを食べたことがない人に、美味しい料理は作れない

行きつけのレストランに行ったとき、『××日~××日まで、研修のためにお休みします』と貼り紙がしてありました。個人でやっている小さなお店なので、研修があるのか?と尋ねると、ただ旅行に行くだけだと言われ、笑ってしまいました。

けれど、この「研修」というのは、あながち間違いでもありません。これまで海外旅行中に何人かの料理人と会いましたが、彼らは世界中のおいしいものを食べて、自分の幅を広げていました。当たり前のことですが、おいしいものを食べたことがない人に、おいしい料理は作れません。

しかし、実際には、この当たり前が崩れている場面によく遭遇します。心理士の世界を振り返ってみても、実践できていないことが多いです。カウンセリングでは、受容や共感的理解といった相手を支持することを大切にしています。しかし、研修会などで症例を発表する際、発表者が支持されることはまれです。あれこれと批判され、終わるころには二度と発表なんかしないと決意を固めています。カウンセリングで相手を支持するように努める人が、支持される体験をしていないのです。支持することが必要と頭で理解していても、どうやったらいいのか?ロールモデルが乏しい状態です。

これは心理士の世界に限らないのではないでしょうか?
誰かを教育する立場の人、指導する立場の人は、自分の場合はどうだろう?と振り返ってみると良いです。「お客さんには、こういう風に接しなさい」、と鬼の形相で指導している人もいます。ずいぶん、遠回りな指導法なのかもしれません。

お客さんに対して「こういう接し方をしてほしい」と思ったら、まずは自分の周囲にいる同僚や部下に実践してみてください。その結果、良い体験をした人が増えると、自然にお客さんへの接し方もより良い方向に変わっていきます。一見、手間がかかるように見えて、このやり方の方がずっと早い変化が期待できるのではないでしょうか。

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