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異文化交流

10年以上前にケニアを旅しました。

空港からナイロビに向かう道中でも、キリンやシマウマがウロウロしているような国です。観光の中心は、野生動物を見ることで、そのためにサファリに参加します。車に乗りながら野生動物を見て回るのです。夜はテントで寝ますが、ハイエナらしき動物の遠吠えや、大きな足音におびえながら過ごします。まれに野生動物に襲われてしまうケースもあるそうですが、キャンプの中心でマサイ族が焚き火をして見張ってくれるので、ある程度は守られています。

マサイ族には見張り番をする以外に仕事はないようで、基本的には暇そうです。彼らと話すうちに仲良くなりました。ふと、マサイの若者が腰からぶら下げている木の棒のようなものが目につきました。聞くと、その棍棒で動物と戦うのだと言います。人間以外はどんな動物でも倒してきて、ライオンでさえこれで闘う、と誇らしげ。棍棒は先端がドライバーのような形で、長さは孫の手くらいしかないのです。このリーチでどうやって戦うんだろう?と考えていると、「お前は、ライオンが怖いか?」とマサイ族。「怖い」と答えると、「オレは怖くない」と胸を張って主張します。けれど、マサイ族が赤い布を身にまとっている理由を聞いてみると、「赤はライオンが怖がるから」とのこと。結局怖いんじゃないの?と思いつつ、棍棒を振っていると、「この棍棒、欲しい?お前の服と交換しないか?」と持ちかけてきました。マサイ族がライオンを倒したという棍棒、悪くないなぁと思い、ユニクロのTシャツと交換しました。彼はユニクロのTシャツを着てサバンナを駆け回り、僕は日本にいて棍棒で肩を叩いています。

当時、『CASIO』の2千円くらいの時計を身につけていたのですが、マサイの若者はそれにも興味を持ち、交換してくれと言ってきました。ちなみに彼が持っていた時計は、『CASIQ』というもの。時計は旅に必要だからと断っても、なかなかあきらめず「牛1頭と交換でどうだ?」と真顔で言ってきます。「さすがにそれはいらない。持って帰れないし」と断ると、「じゃあ、ヤギでどうだ?」と。

外国というよりは異国といった趣のケニア。異なる文化を持つ人との会話は、自分の中の既成概念が崩れます。それはネガティブな体験ではなく、「普通はこうだ」「こうあるべき」という考えから自分を自由にもしてくれます。

簡単にケニアには行けませんが、日本にいても自分と異なる文化を持つ人はいるはずです。何かに行き詰った時、そういう人と話すと、状況を打破するヒントがもらえるかもしれません。

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