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持ち込み原稿を見てもらえるかは「送付状」で決まる

編集者が読みたくなる送付状とは?

企画提案書も原稿も大切ですが、原稿を見る前に編集者さんが目にとめるのは「送付状」です。ですから、この送付状がうまく書けていると、編集者さんが原稿を読んでくれる、さらには返事をくれる確率が高くなる、といっても過言ではないでしょう。

出版社名、部署名、名前、敬称の使い方などの基本的なビジネス文章のルールがおさえてあれば、わざわざ使い慣れない挨拶文など使って、長々とした送付状を書く必要はありません。簡単な自己紹介、相手となる編集者と連絡を取ろうと考えた理由、その出版社を選んだ理由、送付する企画や原稿のポイントを端的に述べ、「出版の可能性があるなら、お返事をいただきたい」という主旨の文章を最後に添えます。

形式的でぎこちない文章は読むのがつらくなってしまいますが、いきいきとした印象的な文章、要領を得た知性な文章だと、編集者さんは必ずあなたの力量を感じ取ってくれます。逆に、誤字脱字だらけ、見ず知らずなのに妙に馴れ馴れしい文章は、相手をげんなりさせてしまいます。「著者略歴の書き方」でも述べましたが、相手の気を惹くためにエピソードを盛る、お涙ちょうだいのストーリーを混ぜる、出版社や新人賞への恨み言を書き連ねる、といったことはやめましょう。

アメリカのベテラン編集者、文芸エージェントによる『ベストセラーはこうして生まれる 名編集者からのアドバイス』(松栢社)にも、編集者さんにどういう送付状が好まれるか書いてありますので、参考になさってみてください。

相手に成功するイメージを持たせられるかどうかが鍵

小説を持ち込む場合、作品の完成度に自信があることは言うまでもないですが、私の経験上、編集者さんにこの作品が本になったとき、売れていくようすをイメージしてもらえるかどうかが、作品採用の重要な鍵になっていると思います。つまり、なぜその出版社や編集者さんに持ち込んだのか、自分の作品をどう紹介するかといった部分の書き方が重要です。

例えば、その編集者さんが担当しているジャンルやレーベルに合っている、自分が持ち込んだ作品の類書が既に売れているという状況だと、編集者さんも本作りや販促のイメージを持ちやすくなります。

一方、編集者さんが作品を読んで面白いと思っても、「本にするにはちょっと短いし、書きなおしてもらうのは大変そう」「僕はわりと好きだけど、本になったとして、誰が読むのかなあ」など不安に感じてしまえば、商売として世に出すことは難しくなります。

あなたが自信のある作品を売り込みするなら、出しゃばり過ぎない程度に、どんな本になるかのアイデアも一緒に送ってもいいかもしれません。押しつけがましいのはよくありませんが、基本的に編集者さんは作品をもとに「どんな本づくりをしたらいいだろう」「この才能をどうやって世に送り出したらいいだろう」といった戦略をあれこれ練るのが好きな人たちです。「この人のアイデア面白いな」「いや、著者は単行本で出したいみたいだけど、ライトなカバーまわりの文庫で出したほうがいいかも」など考えてもらうことができたら、出版に少し近づいているといっていいでしょう。

ですので、作者も日頃から、書店でもインターネットでもさまざまな本に触れて、いろいろとアイデアを膨らませ、そのアイデアを編集者にどう伝えるのかのイメージトレーニングをしておくとよいと思います。

*文芸作品の持ち込みに関するご質問があれば、コメント欄にて受け付けております。直接お返事をさせていただく場合、note記事にてご質問内容に触れる場合とあると思いますが、あらかじめご了承ください。

お読みいただき、ありがとうございました!