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赤裸々でいられる安らぎの場所【ヒロシエリさん&藤谷理子さんインタビュー】

Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『出番を待つふたり』を配信するヒロシエリさんと藤谷理子さんにフォーカスします。

ヒロシエリさんは北海道出身の25歳で、藤谷理子さんは京都出身の26歳。共に舞台や映画の第一線で活躍する、期待の若手女優です。

それぞれが主要キャストに抜擢された2020年公開の映画『ビューティフルドリーマー』での共演をきっかけに意気投合。濃厚に親睦を深めてきた2人は2021年5月、44歳と年齢も芸歴も先輩である俳優・中川晴樹さんを作家に迎え、Radiotalkでのオリジナル番組をスタートさせました。

番組スタートから1年。親友であり、同業のライバルでもある2人が息ぴったりなトークを高い頻度で発信し続けられるコツやその裏に潜む苦労話、そしてこれからの展望について、ヒロさん、藤谷さん、中川さんのオールキャストに尋ねてみました。

(取材/文:鼻毛の森

運命的な、東京での意気投合

――ヒロさんは、北海道時代も含めると役者歴が長いんですよね?

ヒロ:小さい頃から演じることが好きだったのですが、それが演劇であることを認識したのは中学で演劇部に出会ってからでした。高校では地元である北海道の劇団に入り、ローカルタレントとしても活動していたのですが、「女優を突き詰めたいな」と思ったときに、東京に活動拠点を移そうと。

――北海道ではラジオ番組もやるなど、順風満帆だったと聞いています。それでも東京に進出した決定的な理由は?

ヒロ:映画『ビューティフルドリーマー』でお世話になった本広克行監督とは、別現場の北海道ロケをきっかけに交流があって、背中を押されたことが大きかったですね。ちなみに私の今の芸名は上京後に変えたものなのですが、名付け親が本広監督なんですよ。女版「ムロツヨシ」になれ!って。なので本名をもじって、名字を「ヒロ」、名前を「シエリ」に。

藤谷:なので私は本名から、「しえちゃん」と呼んでいますね。

ヒロ:私は相方を藤谷と呼んでます。本当は私が年下なので、呼び捨てはおかしいんですけどね(笑)。私、藤谷の大ファンなんですよ。舞台で目を引く華があるというか……リスペクトがすごいです。

藤谷:呼び方については、同級生の役を通じて一気に仲良くなったので気にならないですね.。私も、タレント経験もあるしえちゃんの、お芝居を越えて「なんでもできる」ところを尊敬しているんです。

 ――一方で藤谷さんは京都出身の上京組、ということで。

藤谷:私は子供の頃はクラシックバレエをしていて、父に今所属する京都の劇団・ヨーロッパ企画の存在を教えてもらって、演劇の道に。上京については、演劇系の大学への進学がきっかけですね。

中川:僕も本職は俳優なので、劇団の拠点である京都にいたのですが、東京で映像系の仕事が増えてきた5~6年前から東京に。ちなみに出身は京都でもなく、名古屋です。

Radiotalkから突然に

――Radiotalkに出会ったきっかけを教えてください。

ヒロ:実はもともとRadiotalkの存在は知らなかったんですよ。ただ、それまでも二人の間で「おしゃべりを発信する場が欲しいよねー!」って話はしていて、ある日突然、Radiotalkの運営さんからお声がけをいただいたんです。で、すぐに藤谷に電話しました。2021年の1月だったかな。

藤谷:突然誘われてびっくりしました。漠然とした願いごとがまさかこんなに早く実現するなんてって。ただただ嬉しかったですね。

中川:僕には、事務所の社長から「藤谷をサポートしてやってくれ!」って突然。当時はまだあまり喋ったことなかったのに……ヒロさんなんて完全に「はじめまして」でしたよ(笑)

ヒロ:で、始める意志は固まっていたんですけど、お互いのスケジュールが合わず、タイミングがなかなか見つからずに……結局春まで伸びました。ただ、やるとなったらタイトルからコンセプト、配信頻度の決定までRadiotalkのスタッフさんが立ち会ってくれて、いろいろ提案してくれました。いやー、本当に親身な会社だなって思いましたね(笑)

――ラジオには思い入れがありましたか?

ヒロ:これといって愛聴していた番組というのはないのですが、北海道のSTVラジオでパーソナリティをしていた経験から、ラジオ番組自体には親しみがありました。Radiotalkの存在を知ってからは「ラジオっていろんなアプリで聴けるんだ」って嬉しくなって、色々な番組を聞くようになりましたね。

藤谷:私は京都に住んでいた頃の話ですが、車から流れてくる谷口キヨコさんの声を聴いて育ちました!

中川:僕はコロナ禍になってからラジオのヘビーリスナーになりました。今では週30時間くらい聞いてますね。なので、ラジオの発信には興味があって、Radiotalkの存在も知っていました。

――コロナ禍、舞台活動も限られる中、ファンは喜んだのでは?

ヒロ:どうなんですかね?(笑)。始めることを発表した時は「待ってました!」とまでは感じませんでしたが、実際始めてみるとTwitterからわざわざ聴きに来てくれるファンがちゃんといて、応援をリアルに感じることができましたね。

藤谷:私としえちゃんがこんなに近しい関係性とまでは知られてなかったと思うので、新鮮な部分はあったんじゃないかなとは思っています。

ヒロ:私は北海道のラジオでも藤谷の話はよくしてましたから、そこまで押さえてくれている熱心なファンは喜んでくれたのかも……。

――第1回の配信の瞬間のことは覚えていますか?

ヒロ:とてつもなく浮足立ってたと思います。たった1年前のことなんですが、聞き直してみたら若いなって(笑)

藤谷:私はルンルンしてました(笑)

中川:僕は、二人のことをよく知らない中で初めての本番を迎えたので、ざっくりとした構成や定型句を固めてはいきましたけど、あとは出たとこ勝負でしたね。「あ、こんなに仲いいんだな」って、そこで知ったくらいで(笑)

ヒロ:生配信は毎週同じ曜日、同じ時間に、と最初から決めていたので、割と早く地に足が付いたような気はします。

 導線を固めて、あとは自由奔放に!

――いつもの収録環境について教えてください。

ヒロ:「機材とかめちゃめちゃこだわってます!」と言いたいのですが、iPhone1台のみです。マイクを繋ぐわけでもなく……。

藤谷:声の大きい方にスマホを傾ける工夫をするぐらいです。私たち、ついつい体を動かしてしまうので(笑)

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――水曜22時からという配信時間は、どんな経緯で決まったのですか?

ヒロ:火曜日の夜に打ち合わせ用のグループラインに「明日の夜はどうですか?」って連絡がマネージャーさんから来て。「じゃあ、明日始めますか!」っていう(笑)。ノリで固まったんですよね。

藤谷:曜日についてはたまたまですが、時間帯については、2人がどんなに仕事が忙しくても「この時間なら体が空くだろう」という落としどころで22時に。収録もそのタイミング、もしくはどこかで会った別の日にって感じですが、なるべく二人がそろっている時の収録、は最低条件にしています。リモートだと、どうしても間が……。

中川:僕は基本、台本をデータで投げたらあとはチャット参加です。なので、リスナー感覚に限りなく近いですね。で、台本上の指示があれば、随時LINEを送るって感じです。ちなみに、二人とも水曜22時に間に合わないときは、僕が喋ってます(笑)

藤谷:リスナーさんの中には、中川さんのファンもいるので、喜んでもらえます(笑)

――ライブ配信と収録配信の使い分けについて教えてください。

ヒロ:ライブ配信は特に中川さんの台本に沿って進行するんですけど、コメントの流れもあって、最近は特にラジオ番組としての形が固まってきたのかなと。みんなでワイワイしながら、みたいな。収録は逆に思ったこと、むかついたこと、悲しかったことなど、日常の垂れ流しですね。

中川:収録については僕は基本、定型句の設定ぐらいしかしてないので、自由にやってもらってます。生配信も企画はしますけど、どう料理するかは二人にお任せですね。

藤谷:中川さんが道筋を作ってくれるので、脱線しても戻れる安心感があるのは大きいですよね。戻れないこともありますけど(笑)

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ヒロ:収録内容については、ネタ集めや記録を自発的にするようになりました。忘れっぽいので、、藤谷には思いついた瞬間に共有するようにしています(笑)

――忙しくなる中、息切れするようなときってありましたか?

ヒロ:繁忙期の調整については中川さんにも相談できますし、しんどいと思ったことはないですね。

藤谷:もう生活の一部ですし。あと、そもそも友達と集まって喋ってるので「やらなきゃ」って義務感などは感じたことがないですね。

舞台も重なる、配信のライブ感

――地上波ラジオも経験している二人ですが、ネットラジオへの率直な思いを聞かせてください。

藤谷:今までやってきた地上波ラジオはほぼ収録だったのですが、Radiotalkでは収録トークだけじゃなくライブ配信もできているので、今は舞台に近い感覚ですね。コメントなどを通してリスナーさんのリアクションが伝わるのが、舞台上の雰囲気に近いと言いますか。

ヒロ:放送というくくりで見ても、フィルター1枚分、地上波メディアに比べても近い感覚があります。コメントだけじゃなく、ギフトもあるじゃないですか。応援がダイレクトに伝わるツールがあるのって大きいですよね。反響の数の可視化が励みになって「頑張ろう」「もっとここでいい報告をできるように」って思えます。ありがたいアプリですね。

――これまでの配信でを通じて、特に印象に残っていることは?

ヒロ:ライブ配信ではスペシャルウィークと称して、「500人集まるまで10時間ライブ配信」企画をやったんですね。そしたら500人はあっさりクリアして、10時間完走する頃には1000人近くまで集まりました。手ごたえを感じた瞬間でした。

藤谷:午後3時から深夜1時まで、ずっと楽しかったですね。

中川:僕は仕事で途中抜けしたりもしたんですが、嬉しいというより、まずは500人超えあたりで安心しましたね。大きな風呂敷を広げたものの、恰好が付いたなと。むしろ、10時間続けても二人がギスギスせず、煮詰まらず、1時間ごとに投げかけるテーマにも対応して楽しくやり切ってくれた……二人の揺るぎない友情みたいなものにシンプルに感動しました(笑)。

ヒロ:収録回のフリートークについては、「#18『ジェネリック伊藤沙莉』について考えるふたり」が2人の役者としての立ち位置、タイトルとのリンクも含め、うまく整ったなと思えました。

藤谷:ライブ配信ではラジオドラマもやったよね。これもスペシャルウィークなんですけど、9月15日22時の回、ヨーロッパ企画の上田誠さんの書いたラジオドラマをやり遂げたとき、それこそ「舞台の上でお芝居した」ようなやりきった感がありました。

中川:あと、僕から「エピソードトークを10分ずつ用意しろ!」と言った無茶ブリなライブ配信回があるんですけど、想像を超えて面白くて、二人のポテンシャルを再確認しました。

仲がいいから、赤裸々な自分を出し切れる

――番組を配信するうえで、決めているルールはありますか?

藤谷:ルールは決めていないですね(笑)

ヒロ:私、全然遅刻しちゃいますし(笑)。それでも喧嘩はしない二人なので、私たちに関しては番組の根幹となる「仲良くやる」ためのルールは必要ないと思っています。

中川:僕も、特に二人にルールは課していません。あえて言うなら声のメディアは感情の動きが大事なので、熱量を持てるようにと。まあ、自然とそうなるような企画を考えるのが、僕の役目だと思っています。

――SNS発信の選択肢が多い中で、Radiotalkの位置づけは?

ヒロ:TwitterもInstagramもやってますが、ダントツでRadiotalkが赤裸々ですね。好きなことを「話せる」のって大きいです。

藤谷:私もそうですね。文字のメディアはどうしても告知がメインになりがちなんです。現状報告と今思ったことを交えて伝えられるツールとして、Radiotalkの存在がダントツです。

――番組を通じて感じる変化や手ごたえはありますか?

藤谷:私は劇団では一番年下なので普段は「ちゃんとしてる」感を出してるんですけど、お友達と喋るような、素の一面を出せる場ができて、少し息をしやすくなったというか、日常がより楽しくなった気がします。

ヒロ:自信が付きましたね。藤谷との仲良しトークを歓迎してくれる人がいることを知れて、公平な評価をしてくれる作家の中川さんがいて、「今の自分、いい!」と思える瞬間が増えた気がします。このRadiotalkをきっかけに、私たちに興味を持ってくれる人がもっと増えたらいいなぁ。

中川:もともと優秀な二人なので、スタートからの成長などは感じていないんですけど、未経験なことをやらせたときに、「あれもできる」「あれが苦手」ってのが見えた気がします。リスナーと同じ感覚。知らない面を見れて、可能性を感じられることが僕の中の手ごたえです。

活動のモチベーションになる、ホームグラウンド

――これからの目標などがあれば教えてください。

藤谷:仕事が増えていけば、番組で話せることがもっと増えるかなと思っていますので、もっとお芝居も頑張っていきたいですね。

ヒロ:もっともっといい報告をしていきたいなと。どんなに忙しくても、親友と素敵な先輩と肩ひじはらず、みんなで集まれるこの場所を守る、これが今のモチベーションですね。あと、オフラインイベント!「エンマ」の皆さんとリアルにワイワイしたい!

藤谷:「エンマ」というのは、「出番を待つふたり」のリスナーの呼称ですね。私たちにライブ配信で愛のある無茶ぶりをしてくれて、「地獄行きの判決を下す」みたいな意味で(笑)。ライブ配信、今度は24時間に挑戦したいかも。

ヒロ:24時間は無理!(笑)

中川:僕はこの楽しいノリが、いつか地上波への進出にも繋がっていったらなと、思っています。

――二人(三人)にとってリスナー、そしてRadiotalkとは何ですか?

藤谷:ありがたい存在、その一言です。1年やってきて、いつも来てくれるエンマ様は覚えてますし、反応も分かりますので、一緒に走ってきた実感があります。コロナの影響で公演が止まったり地方へ行けなかったりする中、ライブ配信の存在は私の中で大きかったんです。稽古してきたことができなくなるのは悲しかったけど、同じ痛みを共有できる、なんでも言える場所ができたことは、よかったなと思っています。

ヒロ:「エンマ」とは呼んでいますが、ファンの皆さんは本当に「神様」のような存在だと思っています。苦行も強いられますけど、みんな優しくて、楽しみにしてくれている、ノリで言ってる「ありがとう」は、本音です。Radiotalkは「安らぎの土地」ですね。

中川:おそらく、他のトーカーさんと違うのは、2人が演劇人であることだと思っていて。そもそも実際にお客さんが存在していて会ったことがある、そしてこれから出会うリスナーさんたちは会おうと思えば舞台でも会えるので、本当に大切にしなきゃいけないし、距離感を間違えてはいけないと思っています。2人の可能性を広げる場所として、Radiotalkがあってよかったなと思っています。

ヒロ:そんな3人が活躍する舞台も観に来てくださいね!

中川:インタビューを受けて、番組について振り返る、考えるいい機会にもなりました。読者さんにも伝わるものがあれば嬉しいです。

■ヒロシエリ(ひろしえり)
1996年12月19日生まれ / 北海道出身
趣味:メダルゲーム・競馬 / 特技:スキー・もんじゃ焼き作り

‘12年、札幌の劇団ELEVEN NINESに所属。以降ほぼ全ての公演に出演しつつ一人芝居での全国ツアーに参加するなど舞台俳優としての経験を積む一方でタレントとしても活動。‘18年に退団し上京。舞台「転校生」や映画「ビューティフルドリーマー」にメインキャストとして出演。犬が好き。

藤谷理子(ふじたに りこ)
1995年8月6日生まれ / 京都府出身
趣味:アコースティックギター練習 / 特技:バレエ(英国ロイヤルバレエスクール、デンマークロイヤルバレエスクール他、短期留学経験有り)

’14年、ヨーロッパ企画・諏訪雅によるミュージカル「夢! 鴨川歌合戦」にオーディションを経て出演。以降、第35回公演「来てけつかるべき新世界」(‘16)では主演を務め、そのほか本公演や舞台・映像作品への出演を経て、’21年、ヨーロッパ企画に入団。外部の舞台やミュージカル、映像作品への出演や、ナレーションも数多い。

中川晴樹(なかがわ はるき)
1977年7月3日生まれ / 愛知県出身
趣味:ラジオ鑑賞・映画鑑賞・アイドルのライブに行くこと / 特技:水泳・楽器演奏

’00年、第5回公演よりヨーロッパ企画に参加。以降、ほぼ全本公演に出演。映像作品や舞台への出演も多数。脚本と監督を務めた短編映画「恋する極道」(‘15)が、「那須国際映画祭・那須アワード2015」でグランプリを獲得。映画イベント「ショートショートムービーフェスティバル」では長年プロデューサーも務める。ラジオ番組の企画構成も手掛ける。​

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