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エンジニアのためのSES企業選びガイド

昨日、私のXとnoteを閲覧した方から連絡がありました。その方は高還元SES企業から内定を受けていましたが、還元率の詳細とその企業の平均請求単価の低さを知り、入社を辞退したそうです。その後に大手SIerに就職が決まったとのことで、私のXやnoteが少しでも役立ったと聞いて嬉しく思います。

重要なので、もう一度強調しますが、SES企業が示す還元率には、社会保険料の会社負担分や会社経費が含まれていることがあります。例えば、還元率が75%だとしても、そのうち10%〜15%が社会保険料の会社負担や会社経費に使われるため、実際に受け取る給与の割合は60%〜65%程度に過ぎません。

この請求単価に対する給料の割合は、実はSESと類似のサービスを提供する技術派遣で一般的な給与支払い率と同等です。

技術派遣業界においては、この同じ給与支払い率が「中間搾取」として問題視されています。つまり、派遣会社がエンジニアから過剰なマージンを取っていると見なされているのです。一方、SES業界では75%の還元率が高い好条件として肯定的に捉えられています。このような状況は、SES企業が様々な経費を含めた「還元率」という言葉を使って実際に支払われる給料の割合をあいまいにし、この矛盾に気付きにくくしているためです。

特に社会人経験の浅い若手エンジニアの場合、還元率75%と聞くと、請求単価の75%が給料として支払われると誤解し、それを基に入社を決めてしまうことがあります。しかし、入社後にその実態を知ったときには、すでに手遅れで、後悔することになります。そのため、入社前にはしっかりと調査を行い、慎重に判断することが重要です。

また、還元率だけではなく、企業の「平均の請求単価」についても調べることが必要です。請求単価は年収に大きく影響します。

先週、弊社に転職された方の具体例を挙げますと、彼の前職での請求単価は56万円(還元率75%)で、年収は430万円でした。しかし、弊社への転職を経て、請求単価が75万円に上昇し、その結果年収も610万円になりました。この変化は、彼のスキルや経験が一夜にして向上したことではなく、むしろ企業の営業力に大きく依存していることを示しています。

SES企業の中には未経験者やジュニアレベルの方が担当するローエンド案件に集中する企業があります。未経験者やジュニアレベルのエンジニアは比較的採用しやすく、売上利益に直結するために、このような選択を選んでいる企業です。

もし私の息子がSES企業に就職を考えていたら、このようなローエンドSES企業はおすすめしません。その理由は、ローエンド案件は人員の代替が可能であるため、請求単価が低く設定され、結果として給与の基準も全体的に低くなる傾向があるからです。

さらに、IT業界は多重下請け構造が一般的で、下流に行くほど業務が細分化されます。ローエンド案件では、これらの細分化された低複雑度の作業が多く、従業員が長期間勤務してもスキルアップが難しい問題があります。また、この種の仕事を長期間続けると、技術的なスキルの成長が停滞し、年齢を重ねるごとに市場価値が低下するリスクがあります。

ローエンドSES企業は、他のSES企業とビジネスパートナー契約(BP)を積極的に結び、新規市場の開拓を軽視し、主に人材採用に注力しています。これにより、彼らの商流は限定され、提供できる案件の大部分がローエンドのものに留まります。結果として、請求単価や給与は増加せず、スキルアップの機会も限られてしまいます。

話を弊社に転職してきた彼に戻すと、彼が請求単価56万円で年収430万円だったのは、彼の能力や経験によるものではなく前職のSES企業の実力に影響しています。彼の実力を存分に発揮できる案件を紹介できていなかっただけだと思われます。

したがって、SES企業を選ぶ際は、還元率だけでなく、その企業がどのレベルの案件を多く持っているかを確認することが重要です。その判断基準となるのが平均の請求単価です。平均の請求単価が高ければハイエンドSES、低ければローエンドSESと見なすことができます。

追記:平均の請求単価を調べる方法として、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で該当するSES企業の「1日の派遣料金」を調べ、それに月額標準出勤日数(20日)を掛け合わせると、平均の請求単価を算出できます。全国平均の請求単価が64万7880円(厚生労働省の『令和3年度 労働者派遣事業報告書』より筆者計算)であることを踏まえ、これより低い場合は注意が必要です。

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1.1年目からの「通常契約」時の年収
2.4年在籍で適用される「プロ契約」時の年収
3.10年在籍で適用される「さよならマージン」時の年収
弊社では、勤続年数に応じてマージン率を低減し、還元率を高める仕組みを導入しています。

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