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組織がオーバーフローした時に考えてきたこと

様々な事情から組織のオーバーフロー状態が続いてしまって「このままではメンバー全員で共倒れしてしまうんじゃないか」と思うようなピンチの状況になってしまうことって稀にありますね。過去に何度かそのようなことはあるのですが、今年の夏は自分の中でも過去最大のピンチだったので、当時そこから何を考えて行動したかについて振り返ります。苦い思いをする部分も多々あり「次はこれを思い出して迅速に対策を打っていきたい」という振り返りのメモです。今後、同じような思いをする後輩がいると思いますが、たとえ自分に特別な役割がアサインされなかったとしても、「リソースを拠出する側の組織を少人数で回すこと」それ自体に大きな価値があることなので、胸を張って日常業務を回していって頂きたいというメモでもあります。

1.明らかなオーバーフローに直面して、まず自分達の「仕事の目的」を問い直して腹を決めました。

7月、突然の人員不足による組織のキャパオーバーに直面して最初に考えたのは「限られた人員であれもこれもやることはできないので、まず自分達の『仕事の目的』に立ち返ろう」ということでした。具体的には、「自分達の仕事(≒金融)の目的は『地域でスムーズにお金を回すこと』であって、少なくとも毎日お金を回し続けること、これはミニマムタスクだ」ということです。悪事への対処など最低限の対応は必要ですが、その他の「やったほうが良い」施策は優先度の問題なので、目標を立てたまま皆で共倒れするくらいなら大胆に取捨選択していくしかないでしょうと(これは何年も前に当時の職場で休暇者が続出してしまってどうしようかと散々悩んだ末に思い至ったことでした)。そして仕事の目的と取捨選択の優先順位付けについて腹が決まれば上位者の了解を取って(ここで取捨選択の議論を経て)、メンバーに伝えるところですね。続きます。

2.メンバーに対して業務の取捨選択を具体的に伝え、上司相談のFAQを出すなどして権限委譲も進めていきました。

メンバーに対して「今からはここの指標は気にしなくてOK、このような場合はここまで許容してOK」と具体的な取捨選択を伝えて要判断項目のスリム化を図りつつ、管理者としての自分自身がボトルネックにならない為の「権限委譲」も進めていきました。手段としてはよくある上司相談のFAQを作って課内全員に「ここに書いてあることは相談なしで判断してOK、ただし少しでも迷ったらすぐに相談してOK」とシェアすることや、レポートラインに関わらず自分が相談を受けたイレギュラー案件全てにできるだけ長い見通しの指示と許容範囲を記録していくこと(それによって上司への相談回数を減らしていくこと)等です。FAQのメールについては後になって複数のメンバーから「今回みたいに判断基準を文面でもらって『自分で判断して良い』と言われたのは初めてだったので、何度もめっちゃメールを読み返しながら(関係先に)電話をしました」と言われてすごく嬉しかったのを覚えています。

権限委譲は事後のフォローを含めて丁寧に行う必要がありますが、中長期で見てメンバー側の「自己決定感や自己効力感」≒「仕事のやりがいと面白さ」に繋がっていくので大変価値のあるものだと思っています。緊急時をきっかけに権限委譲を進めて全員が「判断」できる組織に一歩近づくことができたことは、自分として思いがけない貴重な機会を得られたような気持ちでした。

3.業務簡素化と権限委譲でもなお解消されないボトルネックをチェックして、仕事のアウトソース・再配分を検討していきました。

全体の負荷を平時より下げた後は、組織のボトルネックがそれで解消するのかどうかを数値の推移でチェックしていきます。例えば在庫量が危険水域を超えているメンバーの在庫がさらに増加していくような状態では、早急な対策が必要ですね。(中長期の業務改善は当然働きかけていくのですが、ここでは緊急の止血というイメージです。)

具体的な対策は①難しいペンディングのアウトソース(管理者自身の引き取りを含む)、②新規業務のストップ、③組織内での仕事の再配分、等です。ただ②③の新規ストップや再配分といった社内調整は非常にナイーブなので、正直かなりハードルが高いです。今回の危機対応でも組織全体がフル回転の中でなかなか組織内の再配分調整まではできず、結果として一部メンバーにアウトソースしきれない業務が溜まってしまう苦しい状況を作ってしまっていました。今後の改善を模索する点としてよく覚えておきたいと思います。

ちなみに今年の台風のニュースで京都の貯水ダム管理者が「ダムの水位があと数センチで溢れる」というギリギリのところで放水量を調整しながらキープしたのが神業だという話があったのですが、「組織内の業務量調整とめちゃ似てるなぁ」と思ったのでした。そんな生きた心地のしない心境だったという話です。

4.最後はメンバーを励ましながら自分自身もプレイヤーとして一緒に実務を行い、徐々に人員が戻ってくるのを待って平常運転に近づけていきました。

上司にチームのボトルネックの変化を定量・定性両面で共有しつつ(必要に応じて手当てを調整できないか相談して)、着手しうる打開策をメンバーと共有しながら管理者自身も日々の業務をサポートしていれば、多くのケースで仕事のリードタイム(自分の場合は1〜2ヶ月)の間にはぎりぎり平常化できるのではと思います。(※ここは根拠が薄いので他業種に関しても言えるのかどうかわかりません。)
今回も実際に3ヶ月間くらいは高繁忙状況が続いていましたが、フルタイムの支援を頂きつつ上記のような業務の絞り込みや業務調整を行ったりOBさんに臨時のヘルプに来て頂く等して、なんとか平常運転に近づけることができていったのでした。
ここからはいかに非常時の良いところを残しながら、適度に平常時に戻していくかですね。まだ現在進行系で模索しているところです。

少し戻って非常時のメンバーとのコミュニケーションについて補足するとすれば、高い繁忙状態が続いた組織には「疲弊感、徒労感」が広がりやすいので「あなた達の頑張りでなんとか会社が回っています!」「今日はここまで進みましたよ!」というメッセージを繰り返し伝えて励ましてメンバーの「日なた感」や手応えを出し続けることも非常に重要と思います。(この夏は暑かったので、何度か17時過ぎにコンビニで冷たいスイーツを買ってきて皆でワイワイ食べたりしましたがそれも楽しい思い出になりました。)

また、管理者側が実務に入りこみ過ぎて本来の管理業務ができないのはNGですが、平時では行わないプレイヤーとしての業務を体感して実務のディティールレベルの改善の種を見つけやすくなるという機会でもあります。これもピンチをチャンスにできるところと言えると思います。

5.まとめ・その他

これまで書いたことは基本的に施策の強弱や仕事の再分配を調整しながら組織のボトルネックを解消していくという一般的には当たり前の話でした。ただ自分の学びとしてシェアしたいポイントは「仕事の目的は何かに立ち返る」「メンバーを鼓舞して組織の『日なた感』を何とか維持する」「ピンチな状況を『人材育成や業務改善』のチャンスとして活かしていく」等の部分です。あとは仕事の社内再配分は調整コストが非常に大きいことを理解しつつ模索するという感じでしょうか。

正直、リアルタイムではかなり四苦八苦していて手応えもあまりわからなかったですし(メンバー側も必死なのでリアクションも僅かですし)、今なおボトルネックは一部解消しきれていなかったりもするので、我ながら本当に「不完全でぎりぎり」の危機対応だったと思います。四苦八苦しながらも何とか危機を乗り越えられた組織メンバーの皆さんのことを本当に尊敬しますし、自分個人としても組織としても、今後に活かす意味で振り返り続けたいと思います。

又、今回はオペレーションの話に終始しましたが、サービス管理の観点ではお客様や取引先の方々とのコンタクトを取り続けて「自分達のサービスが外から見て許容範囲を逸脱してないかどうか」を確認し続けることや、そもそもピンチに陥らない「打たれ強い組織」を平時からいかに作るかを考えること等もめちゃくちゃ大事なことですね。
それぞれに奥の深い話なのでまた別の機会に紹介したいと思います。

この記事も順次ブラッシュアップしていきます。(以上)

※書籍紹介

◆HIGH OUTPUT MANAGEMENT

→組織の生産性やボトルネックを「朝食工場」に例えて説明するなどマネジメント視点でどこを管理していくかが非常にわかりやすく書かれた本。言わずと知れた名著です。緊急時には「平時のオペレーションを最少人数でこなすにはどうすべきか」ということを考えることが多いですが、参考になると思います。

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