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書評 政府債務 森田長太郎

国の財政をめぐる問題に関しては、国家が破たんする、いや国家が破たんすることはないといった議論に分かれ、国の借金についてもこれ以上の借金はやってはならない、いやいくら借りても大丈夫といった議論になり、収拾がつかなくなるというのが、メディアを通じた経済をめぐる論争を見ていて感じることである。

著者は長年にわたり、国債市場を見てきたエコノミストで、同書ではマクロかつニュートラルな視点から、双方の意見からさまざまな検討を加えて、歴史を振り返りつつこれまでの政策の問題点などを明らかにしているのが特徴である。いわゆる商取引における借金と政府における債務の違いについて、前半部で説明のうえで、政府債務について、市場、貨幣、思想、国家機能、日本政府の各視点から詳細に論じている。後半から最終部にかけてはリスクマネジメントの視点に立って、デフレからインフレへと金融の状況が変わるなかで、今後の動向についても提言している。

国の財政について、安易な破たん論、また債務は大丈夫といった二元論に陥る前に、これを読むべきと感じる必読の1冊。

#書評 #経済学 #債務 #金融 #国の借金