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2−5 「笑わないアイドル」がついに笑った!Coolでスタイリッシュなダンスナンバー 「風に吹かれても」

 5作目である本楽曲は前作から約半年後、2017年10月25日にリリースされた。2-4にも述べた通り、本楽曲以降MVや楽曲披露時に着用する衣装とリリース活動期間の制服衣装が違うものになる。

そして、本楽曲以降MVや楽曲披露時に着用する衣装のほとんどがパンツスーツやズボンスタイルで、より多くの楽曲の主人公の一人称で使用されている「僕」により近づき表現しているように感じる。また、センターを務める平手友梨奈だが、過去最短の髪の長さにしており、またメガネをかけ雰囲気を変えている。今までより一層、「僕」に近付こうとしているのではないだろうかと考える。また、本楽曲以降MVではダンサーを起用しており、よりダンスの迫力が増して伝わってくる映像となっている。


 本楽曲のMVも前作同様、曲が始まる前に映像が先行して始まる。白い布が風になびき、その先にはスーツを着用し、無造作に置かれた椅子や机に座ったり足をかけ立っていたりするメンバーの姿が見えてくる。
 正面から撮った全員のショットが出て曲が始まる。前奏では同じフレーズが2回繰り返されるが、1回目はカメラをまっすぐ見つめるような、クールな表情をしており、回目後半から体を揺らし、ビートにのっている。2回目では手拍子や太ももを叩いたりしながら腕を動かし、冒頭の状態をキープしたまま踊っている。そして最後には紙を投げ、舞い散る様子でカットが変わる。


 前奏の続きでは、本楽曲で合いの手をはじめ、多くの場面で聞こえてくる「That’s the way」という言葉が2回繰り返されている。これを訳すと「人生そんなものさ!」となり、今までの楽曲とは違い、楽観的な考えを歌っていることがわかる。帽子をかぶったスーツ姿のダンサーの流れに逆行して、スーツにメガネ姿の平手が颯爽と歌いながら歩いている。その表情は心なしか笑っているようにも思える。


 Aメロでは「枯葉がひらひら 空から舞い降りて 舗道に着地するまで時間を持て余してた 思っていたより地球はゆっくりと回っている 胸の奥に浮かぶ言葉を拾い集めよう」と歌っている。最後の「拾い集めよう」に対して最初に出てきた「枯葉」と直前にある「胸の奥に浮かぶ言葉」の2つがかかっている。自分自身が思っているより人生は長く、ゆっくりと時間が進んでいることを、枯葉が落ちるスピードに準えて話している。4つのフレーズに分けられるAだが、そのフレーズの終わりに、前奏で出てきた「That’s the way」が合いの手として使用されている。MVでもそれがわかりやすく、歌割り通りにメンバーが出てきたあと、それ以外のメンバー数人で合いの手を入れているカットが入っている。


 Bメロでは今までとは違い、刻みのビートが4分音符から2分音符の形に変わり、その影響で雰囲気にも変化が見られる。前半の2分音符での刻みの部分では「ずっと前から知り合いだったのに どうして友達なんだろう?」と歌われている。ふとした瞬間に胸の奥に浮かんだ疑問を言葉に出してみたように思えるフレーズだ。ここのフレーズMVは、Aメロでは明るかったのが、Bメロに入ると暗く、いくつもの電球でライトアップされ、ステージで歌うメンバーとそれを側から見る平手に分かれている。後半は前半のゆったりした感じを残しつつ、4分音符刻みに戻り少しずつ明るくなっていく。「お互いがそんな目で 意識するなんてできなかった」と歌っているこのフレーズで、初めて「お互い」と人を表す言葉が出てきている。前半に出てくる「どうして友達なんだろう?」とここの「そんな目で意識する」ということから、友達関係から恋愛等別の関係に発展することを指していることがわかる。MVではBメロ前半に出てきた暗闇のなか光るステージと、明るい、駐車場のような場所で、同じ方向に向かって歩いているメンバーの2つのシーンが使われている。


 サビの最初は「風に吹かれても 何も始まらない ただどこか運ばれるだけ」と歌っている。Aメロの最初に出てきた「枯葉」に自分の感情を準えてここも歌っていると考えられる。続きのフレーズでは「こんな関係も 時にはいいんじゃない? 愛だって移りゆくものでしょ?」と言っており、Bメロで出てきたお互いの関係性に関しても楽観的に考えている。「アレコレと考えても なるようにしかならないし…」と続いており、その先では再び「That’s the way」と2回繰り返している。今まで自分の主張を周りに対して繰り返し訴えてきた主人公だが、このCでは今までなかったような楽観的な・ポジティブな考え方を示している。また、他人に訴えるような言葉を使っていないのも特徴ではないだろうか。MVでは、Bメロでも出てきた駐車場のような場所でフォーメーションを組んでいる。ブログや歌番組で披露する際、メンバー自身が足のステップに注目してほしいと言っていることもあり、MVでもそれがわかるように引きで撮られた映像が多用されている。さらに、1列目と2列目が入れ替わる際にはハイタッチをしたり、隣の人と手を合わせたりする振り付けもあり、今までの曲とは違いメンバー同士で触れ合っている場面が多い。メンバー全員が楽しそうに踊っており、また、平手の表情のアップのソロカットでは笑顔で映っていて、表題曲で初めて笑顔を見せているのも1つの特徴だ。また、ここではA同様フレーズの終わりに「That’s the way」と計5回、合いの手が入っている。4回目で全員が右手で、左胸の前でサイマジョポーズをしている。その後、手拍子をしたり体を揺らしたりして曲にのり、5回目の合いの手と同時に全員がジャンプしている。そしてその後にある、歌詞として表記されている2回の「That’s the way」ではダンボールで作られた壁にメンバーが走って向かっていき、それを壊して突き進んでいる様子がスローモーションで映されている。また、その中に上半身が上を向いている不自然な平手のソロカットが一瞬入っている。


 2番Aメロでは「あの枝で揺れている一枚の葉みたいに 未来の君の気持ちは予想がつかなかった なぜ奇跡的なチャンスを見逃してしまうんだろう? 時が過ぎて振り返ったらため息ばかりさ」と歌っている。ここでもA同様、枯葉と人の気持ちを準えて語っている。そして、主人公の相手が「君」であることがここで初めてわかる。内容を見ていくと、1番Bメロで語っていた関係性に対することを話しているようだ。「君の気持ちは予想が付かなかった」「チャンスを見逃してしまう」「振り返ったらため息ばかり」ということから、主人公と「君」はお互いに思いあっていたが、「お互いがそんな目で意識するなんで思わなかった」ためにチャンスを逃したことがわかる。MVでは前半と後半で場面が変わる。前半ではサビでも使用していた日が差す駐車場で撮影しており、平手以外のメンバーとダンサーが数列に並んで、マーチングのローマークタイムのようなステップを踏みながら、サイマジョポーズの手の形で腕を上げ下げしている。その間を平手はスキップをしながら通り過ぎて行っている。後半は暗闇の中、先ほどとは少し場所がずれ、大きいテーブルと電球ではない、白い照明で照らされている場所で撮られている。平手以外のメンバーはテーブルの両サイドに等間隔に着き、椅子に座り、腕を曲げたり伸ばしたりして踊っている。平手は、そのテーブルに上がり歩いたりターンをしたり照明に触れたりしている。サビでは笑顔だったメンバーだが、ここでは無表情に近い顔で映っている。


 2番Bメロ前半では「ふいにそういうアプローチをすると やっぱり気まずくなるのかな」と歌っており、これまでに述べていたお互いの関係性に関して主人公が感じたことが書かれている。最後に「?」を付け足すとより主人公が話しているようになる。後半では「恋愛の入り口に 気づかない方が僕たちらしい」と歌っており、ここに出てくる二人称「僕たち」から主人公が「僕」であると推測できる。そして、「恋愛の入り口に気づかない」という言葉から、Bメロやサビで提示されたお互いの関係性が友達関係と恋愛関係に関することだということが明確にわかる。MVでは前半はスローモーションで、後半は通常のテンポで再生されている。場面は一貫して、観覧車をバックに、薄暗い照明の中で、キラキラとした紙吹雪が舞い、ダンサーとメンバーが、車の上に乗ったりその車を囲って、歌ったり曲に合わせて体を揺らしている。


 2番サビの最初は、「風が止んだって ハッピーでいられるよ そばにいるだけでいいんだ」と歌っている。関係性に進展がなかったとしても、君のそばに居られるだけでいいんだと、曖昧な関係性を肯定し受け入れている様子がうかがえる。「そんな生き方も 悪くはないんじゃない? 愛おしさがずっと続くだろう」と続きのフレーズで歌っており、曖昧で名前のつかない関係性だからこそ、お互い良い距離感でい続けることができるのではないかという、曖昧な関係性を受け入れた僕の肯定的な考えが述べられている。最後には「ハグでもキスでもない 曖昧なままで So cool!」と歌っている。「曖昧なままで So cool!」と日本語と英語が混ざっているが、「曖昧なままでもいいんじゃない?」という意味で考えると、これまでの歌詞の内容にも合うのではないだろうか。ハグ=友達関係、キス=恋愛関係と行為にたとえ、それでもない、曖昧なままで僕たちはいいんじゃない?とこれまでの内容を集約しているように感じる。この2番サビでは1番サビ同様、フレーズの終わりに「That’s the way」と合いの手が計5回入っている。そして、MVでは、この2番サビは全て同じ場面で撮影されている。1番サビでは昼間の駐車場だったが、2番サビは夜で、コンテナや、物資を運ぶ際に使用するフォークリフトの木製パレットを積み上げたようなものなどが無数に置かれており、その上や近くでメンバーが踊っている。コンテナの上には1列目のメンバーが乗っており、それ以外の場所に2・3列目のメンバーがいる。また、使われている照明は電球のような少しオレンジ掛かっている照明で、バックには大きな観覧車が見える。そして、印象的なのが4回目「That’s the way」で1st singleの「サイレントマジョリティー」の、1番のサビで平手がモーセの十戒をモチーフとした場面で、右手をサイマジョポーズの形にし、その腕を斜め横に上げたポーズを、ここで全員がフレーズの終わりでの4小節間で行なっている。また、1番サビ同様、2番サビでもメンバーは笑顔を見せ踊っている。


 大サビ前Cメロでは曲調が一変し落ち着いた雰囲気になる。前半では「成り行きに流されたらどこへ行くの? あんなに眩しい太陽の日々よ 翳りゆく思い出が消えるまで 僕たちは空中を舞っていよう」と1列目と2列目のメンバーがそれぞれ半分に別れ4組になりそれぞれのフレーズを歌っている。「成り行きに流される」という、先が見えない不安はあるが、僕たちは僕たちらしくいようと最終的にはこの曲で歌われているポジティブなところが出てきている。MVでもスローモーションの映像を多用し、今までスピーディーの展開されていた物語がゆっくりと動いているように見える。興味深いことに、ここではA以外ではあまり使われてこなかったソロでのリップシーン(暗いなか電球を多く用いた場所で撮影されている)が使われている。この点から、Cメロでは他の部分との差別化を図っているように感じる。後半では「人生は(人生は) 風まかせ(風まかせ) さよならまで楽しまなきゃ」と歌っており、この曖昧な関係や自身の人生にはいつか終わりが来るから、全て最後まで楽しまなきゃと言葉が並んでいる。MVは前半同様、ソロカットのリップシーンも使われているが、平手が上を向いて空を飛んでいるシーン、前奏に出てきたダンサーの中を逆行するシーンと類似した、ダンサーが向かう方向とは逆を向いている平手が立ち止まって空を見ているシーン、そして他のメンバー同様、同じ場所で撮られた平手のソロカットのリップシーンが入っており、後半は平手が中心の映像となっているように感じる。「楽しまなきゃ」と歌詞にある通り、平手のソロカットも微笑んでいるように見える。


 次のラスサビ①では、歌詞は1番サビの「風に吹かれても〜移りゆくものでしょ?」まで同じものが使用されている。MV前半は、Bメロに出てきたステージを側で見ている平手が中心のカット→駐車場にいるダンサーと他のメンバーのところへ平手が走って向かい、その中を通り抜けるカットの2つが両方スローモーションで再生されている。後半は、1番サビに出てきたものと同じで、駐車場で、フォーメーションで踊っているメンバーのアップと引きが繰り返されている。
 そして、ラスサビ②では歌詞は2番サビを使っており、最後の「That’s the way」が4回繰り返されている点だけが異なる。これまでの1番サビや2番サビ、ラスサビ①で出てきた、夜にコンテナ等の上で観覧車をバックに踊っているシーンや駐車場にいるダンサーと他のメンバーのところへ平手が走って向かい、その中を通り抜けるカット、駐車場でフォーメーションを組んで踊っているメンバーのカットが繰り返されている。そして、5回目の合いの手の「That’s the way」で全員がジャンプしているのも1番サビと同じである。


 最後の「That’s the way」が4回繰り返されるところでは平手が体を上に向け空を飛び、その平手に対して他のメンバーやダンサーは空へ飛び立つ平手を囲むように円形になり、膝をつき腕を伸ばし平手に向けている。紙吹雪が舞う中空を飛ぶ平手は穏やかに、笑顔でいる。また、それを見上げるメンバーも笑顔である。


 そして、曲が終わると同時に本楽曲のタイトルとグループ名が駐車場の地面をバックに表示され、その下にはメンバーの名前がローマ字で表記されている。その後、無表情の平手のソロカットが一瞬映りMVが終わる。


 本楽曲は今までの4枚とは違い、主人公「僕」が人生を楽観的に見ているような言葉が多く見受けられる。1~4th で様々な経験をし、様々な人と関わった中で、自分が思っていたよりも人生は長いと知り、その長い時間を楽しもうと新たに思い出したのが本楽曲ではないかと感じる。また、2nd・3rd に続いて、新たな人物との恋愛の模様も描いている。1つの形にとらわれない、現代に求められている多様性を「That’s the way」という言葉を連続して使用し、且つ、「ハグでもキスでもない 曖昧なままで So cool!」というフレーズから、他人や世間の持っている価値観に囚われない新たな関係性を打ち出している。1つの形にこだわることなく、自分たちに合ったふさわしい形を探し、貫くという点や、自分の芯を曲げずにまっすぐでいるところはこれまでにも通じるのではないだろうか。


【フォーメーション 一覧】
(1列目 7名、2列目 7名、3列目 7名 計21名)

風吹か

※本楽曲を以って21人全員がフロントを経験する
※欅坂46(漢字欅)とけやき坂46(ひらがなけやき)を兼任し活動していた長濱ねるだが、本楽曲リリース活動から、けやき坂46(ひらがなけやき)との兼任が解除になり欅坂46(漢字欅)専任となる

【参考資料】
https://realsound.jp/2017/10/post-116777.html
https://youtu.be/Xl-iDUt7U24