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ぞっと、そっと

ものすごく眠る。起きた後はしばらく夢と現実の境にいる。

夢の内容。
小高い丘の上。私は椿山荘(行ったことない)のような、洋風の応接間にいる。夢なので。何か物を書いているだけの仕事をしているようだった。居心地が良い。誰かが延々と講義をしている。そろそろ川を渡り、墓守りに行かなくてはいけない。亜熱帯の夜中。焚き火が爆ぜる。桃色に近い赤色に包まれる。ここら一帯には独特の文化がある。

夢から覚めてぼんやりしていると、つい先刻までいたあちら側は良かったなとうらやましく思う。しかし残念なことに現実で生きていかなくてはいけない。窓を閉めているのに虫の声が聞こえる。昔近くに住んでいた玉川上水の匂いを思い出す。武蔵野は都心に比べると夜の闇が一段と濃かった。土と住宅街が密集していた。家ひとつひとつに物語があってその事実が信じられない。どんな景色を見ても、例えば新幹線から勢いよく流れていく風景を見ている時も、信じられない気持ちに包まれる。私は今ここにいる。なぜか、ここにいる。つきまとう違和感。たまたま巡り合わせ偶然が重なってここにいる。そして毎日夢を見る。人と話すことで、一気に現実が戻ってくる。そういえば自分には名前があった。マルマルマルマルマル。今月の家賃払ったっけ。とか。

夢を引きずりなら、真夜中の静けさと一緒に怒りを吐き出す文章を綴っている。あまり好きになれないこの世界で生きていくことそのこと自体が違和感の塊で、ひたひたと浸透して飲み込まないといけない針が、喉奥に積み重なっていく。私の頭は全然休まらない。

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