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分散型SNS「マストドン(Mastodon)」について改めて知ってもらうための話
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分散型SNS「マストドン(Mastodon)」について改めて知ってもらうための話

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シンプルにマストドンの使い方を知りたい方は「マストドンの使い方」まで飛ばす事をおすすめする。

はじめに

先日(この記事の執筆段階では大体1週間くらい前)、ガーシーことNHK党所属参議院議員、東谷義和氏が「言論の自由」を掲げた新SNS「GAAC2(ガーシーツー)」を、分散型SNSソフトウェア「Mastodon」を利用して開設した。

ガーシーツーのプラットフォームであるマストドンは2016年にドイツ人によって作られたフリーソフトウェアである。日本では、2017年にマストドンブームが発生し、「マストドン日本鯖」と名乗った「mstdn.jp」や、pixivが運営していた「pawoo.net(パウー)」、ニコニコ動画の運営母体であるドワンゴによる運営であった「friends.nico」などのサーバー(旧称:インスタンス)に新規登録者が殺到していた。当時はTwitterの運営方針が変化し始めた頃でもあり、「脱Twitter」としてTwitterの運営方針に不満を抱くユーザー、アカウントを凍結されTwitterを追われたユーザーや、ただの新しい物好きなどが集った。その様子は各メディアに取り上げられ、「Twitterに代わる新しいSNS!」と見出しが付けられていた。

ところが「Twitterに代わる新しいSNS!」などとマストドンが取り上げられていたのは既に5年近く前の話で、その後は「誹謗中傷対策でmstdn.jpサービス終了」「pixivがpawooを手放す」「ドワンゴがfriends.nico閉鎖」といった記事ばかりが掲載されていた。
mstdn.jpはサーバー管理者を2度変えながら現在も存続している。pawooもpixivの手は離れたものの別会社が運営し、friends.nicoは一度は閉鎖したものの、サーバーを管理していたエンジニアが後継サーバー「best-friends.chat」を立ち上げ、現在に至っているのだが、各メディアの記事を遡ってもサーバー閉鎖の記事が書かれたきりである。
ガーシーツーのサービス開始に伴いマストドンという単語ばかり独り歩きする状況をこのまま放置していては、マストドンないし分散型SNSに対する誤った認識はますます広がるであろうと筆者は考えた。

そこでこの誤解を少しでも解消すると共に、分散型SNSへの理解を深めるため、実際にマストドンを使用しているユーザーの立場で本記事を記すに至った。
当記事は「マストドンというSNSをなんとなく聞いたことはあるけどよく知らない」層を対象とし、解説を行う。

分散型SNSとは何か

分散型SNSを簡単に定義すると、

大小様々なSNSが独自の文化・機能を携え、運営者や規約などが個別に存在し、相互に接続されている形態

と言えるだろう。
Twitterなどの大手SNSはこの逆で、ひとつの巨大なSNSに大勢の人間が集い、企業や法人が定めた利用規約の下に、運営者や運営企業がユーザーを一元的に管理・監視する「中央集権型」と言える形態を取っている。図で表すと以下のようになる。

中央集権型SNSのイメージ
分散型SNSのイメージ

大小様々なSNSが独立し相互接続を行う分散型SNSの集まりは「Fediverse(フェディバース)」とも呼ばれている。勘違いしている人がとても多いのだが、実は「マストドン」という単語は分散型SNS(Fediverse)全体を示す言葉ではない。マストドンはあくまで「フェディバース(Fediverse)」内でサーバーを構築するソフトウェアの一種に過ぎないのだ。この形態は、言わば海原に浮かぶ島々、あるいは国家のようなもので、2ちゃんねる(5ちゃんねる)で言うところの「板」に近い。
これらのサーバーが1つでも残っている限りは、「Fediverse」は永久的に存在し続ける形になる。「マストドンがサービス終了」という表現や解釈は、間違いなのである。

各サーバーによって、「雑談がメイン」「他のサーバーを探す拠点」「絵描きのための集い」「ポケモンの話題を主にする場」「ボカロPが集う場」「艦これプレイヤーが集う場」「言論の自由を尊重したサーバー」など、個別に「テーマ」が設定されており、その上で利用規約が個別に定められ、独自の機能やユーザー文化を有している。そして殆どの場合、それぞれのサーバーは、ActivityPubと呼ばれる技術を用いて、サーバー間でフォローやリプライなど、相互にやり取りが出来る構造になっているため、例えばAというサーバーにいながら、Bというサーバーのユーザーとやり取りを行うことが出来る。またサーバーは専門知識を有した上で、各種の必要手続きを踏めば誰でも開設することが出来る。

分散型SNSはデータのやり取りを行うサーバーがインターネット上に個別に存在する。つまり万が一サーバーが不調、またはサーバー停止に陥った際は、他のサーバーに移って引き続き他のユーザーとやり取りを続けることが出来る(他のサーバーも同じインターネットサーバーを使っているなどの場合はこの限りでない)。そのため「サブ垢」の文化が存在すると共に、他のサーバーへの引っ越し機能も標準的に備えられている。

ところで一部のメディアでは「マストドンでは本当に凍結されないのか?」という見出しが、あるいは「本当に何を言ってもよいのか?」という疑問を抱いている新規ユーザーが見受けられるのだが、それぞれの問いにまとめて答えると、「マストドンないしFediverseでも、法に触れたり、利用規約に反したりするような言動はサーバー管理者などの目に止まればアカウントを凍結される可能性がある」という回答を返すのがよいだろう。分散型SNSは確かにTwitterより居心地はよいが、だからといって無法地帯ではない。これだけは最低限知っていただきたい。

マストドンとミスキー

分散型SNS(Fediverse)は様々な形態や機能を備えたサーバーが集まっていると説明した。このサーバーは分散型SNS用のソフトウェアを使用しており、そのソフトウェアの一つがマストドン(Mastodon)であり、Wikipediaには以下のように記されている。

マストドン (Mastodon) はミニブログサービスを提供するためのフリーソフトウェア、またはこれが提供する連合型のソーシャルネットワークサービスである。開発者はドイツのオイゲン・ロホコ[3](Eugen Rochko)。

Wikipedia

マストドンの主な機能は後述するが、繰り返し記しているように、サーバー間でActivityPubが導入されていれば、マストドン以外のソフトウェアでも相互にやり取りを行うことが出来る。
その具体例が「Misskey(ミスキー)」というソフトウェアである。これは純国産(日本製)のSNSで、しゅいろ氏によって開発された分散型SNSソフトウェアである。ユーザーインターフェイスがマストドンとは大きく異なる他、投稿への絵文字リアクション機能が実装されているなど、マストドンとは意匠や機能、また設計思想を違えているが、前述の通りActivityPubと呼ばれるシステムでマストドンと接続しているため、相互にやり取りすることが可能だ。

分散型SNSの問題点

分散型SNSには当然いくつかの問題点も存在する。

  1. 多数のユーザーに迷惑行為を継続的に行うユーザーなど、問題のあるユーザーを完全排除することが出来ない(アカウントが凍結されても逃げられて別のサーバーで迷惑行為を行ってしまう恐れがある)。

  2. 収益化が難しく、利益が皆無に等しい。

  3. Twitterなどの既存Webサービスに比べ人口が少ない。

現状では以上の問題点がある。1はTwitterなどの集約型SNSであれば、IPアドレスごと登録できないようにしてしまえば対処できるが、分散型の場合はこうもいかない。また2においては、pawoo.netなど一部のサーバーでは広告を挿入し一定の収入を得ている模様だが、基本的には収益化は困難と言ってよく、ユーザーからの寄付や公式グッズ販売などの手段で賄うしかない現状がある。分散型SNSの運営は現状ほぼボランティアといっても過言ではないだろう。
3に関しては必然的というしかない。社会的にはまだまだSNS≒Twitterであり、多くの情報を得たり不特定多数に発信したりするには人が多い場所を選ぶのが当然の流れであろう。

マストドンの使い方

前置きがかなり長くなってしまい恐縮だが、ここで新規ユーザーが必ず抱く「マストドンってどうやって使えばいいんだろう」という疑問に触れることとする。
筆者が主に使っているサーバーは2つあり、1つは「Fedibird(フェディバード)」というサーバーで、のえる氏によって運営されている。マストドンでありながら、ミスキーで使用されている絵文字リアクションを実装、トゥート(投稿)の引用機能や文字サイズの変更機能を有するなど、かなり多機能な汎用サーバーになっているのが大きな特徴だ。記事の執筆時点では約3000アカウントが登録されている。
もう1つは「pawoo(パウー)」というサーバーで、冒頭で示した通り本来はイラストレーター向けのサーバーである。画像が頻繁にアップロードされるため、サーバーの容量に余裕があるのが特徴だ。こちらはサブアカウントとして使用しており、Fedibirdに異常が生じた際などに使用している。

設定画面から「上級者向けUI」を有効にすると画像のようにタイムラインと通知欄を並べて見ることが可能だ。無効にした際はどれか1つのみの表示になる。
(自分以外のアカウントにはモザイクをかけています)

マストドンには独自の機能が多数実装されている。本稿では「公開範囲」「閲覧注意設定」「CW機能」「タイムライン」の4つを紹介したい。まず紹介するのは「公開範囲」の機能だ。

投稿画面の下部。

基本的にマストドンでは投稿のことを「トゥート」と呼び、1トゥートにつき500文字まで(サーバーによってはこの限りではない)入力することが出来る。このトゥートをタイムラインに流す際の設定を細かく変更できるのだ。投稿欄の下部にいくつかボタンがあるが、このうち地球のマークが公開範囲の変更ボタンである。以下にマストドンにおける公開範囲の設定の一覧を示す。

  • 公開(地球マーク):ローカルタイムラインおよび連合タイムライン(後述)に自分のトゥートを流し、ツイッターで言うリツイートである「ブースト」が可能。ハッシュタグ検索はこの公開トゥートのみ表示する。

  • 未収載(錠の外れた南京錠):ローカルタイムラインにも連合タイムラインに自分のトゥートを流さないが、ブーストは可能。

  • フォロワー限定(錠の掛かった南京錠):連合タイムラインに流さず、ブーストも不可能。Twitterでいう鍵垢状態。

  • ダイレクト(手紙のマーク):ダイレクトメッセージ(DM)を送る際は相手のIDを入力した上でこの設定。

Fedibirdなど独自機能を持ったサーバーにおいてはこれら以外にも公開範囲が実装されている。

次に「閲覧注意設定」を紹介する。

画像を添付した際にこのようなダイアログが出現する。これにチェックを入れた状態でトゥートすると、画像にモザイクがかかった状態で「閲覧注意」と表示されて投稿され、画像を一度クリックもしくはタップしないと表示されないように出来る。

「CW機能」は、言わばネタバレ防止機能だ。投稿欄の「CW」を押すと画像の表示になる。上部の欄に注意喚起文を表示し、本文はデフォルトでは隠された状態で投稿される機能だ。アニメや映画のネタバレを防ぐためなどに使用するのがよいだろう。またこの状態で画像を添付すると自動的に閲覧注意がかかる。

マストドンには3種類のタイムライン(TL)がある。「連合タイムライン」と「ローカルタイムライン」「ホームタイムライン」の3つだ。
「連合タイムライン」はFediverse上のサーバーに投稿された全ての公開トゥートが流れてくるため、タイムラインが流れる速度がとても速い。「Fediverse全体での投稿が流れてくる」と解釈するのがよいだろう。「ローカルタイムライン」は自分が所属するサーバーで投稿された公開トゥートが流れ、活発に投稿が行われていれば流れが速くなる。また連合タイムラインとローカルタイムラインは、誰もフォローしていなくても投稿が流れてくるようになっている。「ホームタイムライン」は、自分がフォローしたアカウントの投稿が流れてくるタイムラインである。一般的なSNSのタイムラインとほぼ同機能といっていいだろう。
なお、筆者が使っているFedibirdではローカルタイムラインを無効化しており、連合タイムラインとホームタイムラインのみ表示することが可能となっている。

この他、カスタム絵文字と呼ばれるサーバー独自の絵文字が実装されており、サーバーによってはこれで絵文字リアクションを行える。
以上がマストドン特有の独自機能であるが、これらはサーバーによって仕様が異なる場合があるので留意したい。

ではこれらの機能を前にして、新規ユーザーはどのように使うのがよいのか。投げやりな回答になるが、それは「ユーザーの自由」である。サブ垢感覚でTwitterと同じ使い方をするもよし、Instagram的に画像を上げまくるもよし、ローカルタイムラインをチャット代わりに使うもよしだ。
「誰をフォローしたらいいかわからない」というような悩みも、ローカルタイムラインがあるサーバーでならローカルタイムラインを開いておけば自然に投稿は流れてくる。Fediverseの住民は、「初めての投稿です」という発言をするアカウントを見つけたらすぐに「新規だ!」と反応するくらいには新参に寛容で敏感だ。この記事を読んでも分からないことがあれば、他のユーザーに聞いてみるのも手だ。
肩の力を抜き、自由に発言するのが吉だろう。

あとがき

当記事は、あくまで分散型SNSへの理解者を少しでも増やすきっかけとして記したものである。故に、「今すぐツイッターやフェイスブックをやめて、マストドンやミスキーを始めろ」という趣旨ではないということを喚起する。
この記事がFediverseの住民への誤解を招かないためのテキストとなることを、切に祈るばかりである。

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